🎓 レベル:発展 | 重要度:B(重要) 📎 前提:リンクステート型(OSPF)
要点(BLUF)
- 同じ宛先を複数の情報源が教えたら、ルータはAD(信頼度)が小さい方を採用します(直結0 < 静的1 < EIGRP90 < OSPF110 < RIP120)。
- 同じプロトコル内で複数経路があれば、メトリックで選びます。AD→メトリックの順は第3章の復習。
- 異なるプロトコル間で経路情報を橋渡しするのが再配布(redistribution)。便利ですが、ループや最適でない経路を生む危険があり慎重に扱います。
AD比較表
| 情報源 | AD | メトリックの指標 | 標準 |
|---|---|---|---|
| 直結 | 0 | — | — |
| 静的 | 1 | 管理者指定 | — |
| EIGRP(内部) | 90 | 帯域+遅延 | Cisco独自 |
| OSPF | 110 | コスト(帯域) | 標準 |
| RIP | 120 | ホップ数 | 標準 |
「EIGRPとOSPFが同じ宛先を教えたら、AD90のEIGRPが勝つ」——同じプレフィックス長同士の比較ではADが効きます(プレフィックス長が違えばロンゲストマッチが先)。
選択の優先順位(復習)
graph TD A["宛先に一致する経路を収集"] B["最長プレフィックス一致(ロンゲストマッチ)"] C["複数情報源ならAD最小を採用"] D["同一プロトコル内はメトリック最小"] A --> B --> C --> D
順序が重要:ロンゲストマッチ → AD → メトリック。ADやメトリックの前に、まず最も具体的な経路が選ばれます。
プロトコルの使い分け
- 静的:単純・固定・末端拠点。軽く予測可能。
- OSPF:標準・大規模・マルチベンダー。エリアで拡張。
- EIGRP:Cisco統一環境で高速収束を狙うとき。
- RIP:学習用・ごく小規模のレガシー。新規採用は基本しない。
# 同じ宛先・同じプレフィックス長を複数プロトコルが学んだとき、ADで採用が決まる
AD = {"connected": 0, "static": 1, "eigrp": 90, "ospf": 110, "rip": 120}
learned = ["ospf", "eigrp", "rip"] # 同じ 10.5.0.0/16 を学んだ情報源
winner = min(learned, key=lambda p: AD[p])
print("learned from:", learned)
print("installed in table:", winner, "(AD", AD[winner], ")")
実行結果:
learned from: ['ospf', 'eigrp', 'rip']
installed in table: eigrp (AD 90 )
再配布:プロトコルの壁を越える
拠点AはOSPF、拠点BはEIGRP——この境界ルータで、片方の経路をもう片方へ翻訳して流すのが再配布です。
! OSPFの経路をEIGRPへ再配布(メトリックを明示)
Router(config)# router eigrp 100
Router(config-router)# redistribute ospf 1 metric 1000000 100 255 1 1500
注意点:
- メトリックは翻訳が必要。プロトコルごとに尺度が違うため、再配布時に初期メトリック(シードメトリック)を与えます。
- 双方向再配布はループの温床。経路が行って戻って増殖しないよう、ルートタグやフィルタで制御します。
- ADの差で意図しない経路が選ばれることがあり、設計時に検証が要ります。
なぜ再配布は危険なのか(設計の直観)
各プロトコルは自分の世界の中ではループを防ぐ仕組みを持ちますが、別プロトコルから来た経路にはその文脈が無いため、保証が効きません。境界で双方向に翻訳すると、A→B→Aと経路が一周して「自分が教えた経路を他人経由で学び直す」事故が起きえます。だから再配布は「必要最小限・一方向・タグでフィルタ」が鉄則で、可能なら単一プロトコルに寄せるのが安全です。
⚠️ よくある誤解
- 「ADが小さい=経路が速い」ではない。ADは情報源の信頼度で速度ではありません。速さの比較はメトリックの仕事。
- 「再配布すれば自動でメトリックも引き継がれる」ではない。尺度が違うためシードメトリックの指定が要ります(EIGRPは未指定だと再配布されないことも)。
- 「複数プロトコルを動かせば冗長で安心」ではない。再配布の設計を誤るとループや経路振動を招きます。冗長は同一プロトコル内で組むのが基本。
対応 lab
[[networking-study/labs/06-04_ad_select.py]]— AD比較による採用経路の決定
関連
- 前:
[[06-03_リンクステート型]]/次:[[06-05_FHRP]] - 選択の基礎:
[[03-03_ルーティングの基礎]]