結論から言うと
会社法は経営法務の中で最大の出題ウェイトを占めます。特に「機関設計の選択肢と制約条件」「株主総会の決議要件」「設立手続きのフロー」の3点が頻出です。機関設計の組み合わせルールを整理すれば、問題文を読んだだけで解ける問題が増えます。
1. 会社の種類
会社法が定める会社は4種類あります。中小企業診断士試験では株式会社が中心ですが、他の会社との比較問題も出ます。
graph TD
A[会社法上の会社] --> B[物的会社\n出資者の有限責任]
A --> C[人的会社\n社員の無限責任あり]
B --> D[株式会社\n最も一般的]
B --> E[合同会社LLC\n近年増加]
C --> F[合名会社\n全員無限責任]
C --> G[合資会社\n無限+有限混在]
| 会社種類 | 出資者の責任 | 持分の譲渡 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 有限責任(出資額まで) | 原則自由 | 最も普及。機関設計が詳細に規定 |
| 合同会社(LLC) | 有限責任 | 社員全員の同意が必要 | 設立コスト低い。内部自治が自由 |
| 合名会社 | 無限責任 | 原則全員同意 | 少数の信頼できるパートナー向け |
| 合資会社 | 無限+有限の混在 | 原則全員同意 | 実務ではほぼ使われない |
試験のポイント:「合同会社の社員は全員有限責任」「株式会社は株主有限責任」を混同しないこと。合名会社は全員無限責任です。
2. 株式会社の設立手続き
発起設立(発起人全員で株式を引き受ける方法)の基本フローです。
flowchart TD
A[1. 発起人の決定] --> B[2. 定款の作成\n絶対的記載事項を必ず記載]
B --> C[3. 定款の認証\n公証人役場で公証人が認証]
C --> D[4. 出資の履行\n発起人が金銭を払込む]
D --> E[5. 設立時役員等の選任]
E --> F[6. 設立時取締役の調査]
F --> G[7. 設立登記\n法務局への申請]
G --> H[8. 会社成立\n登記申請日が成立日]
定款の絶対的記載事項(これがないと無効)
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
ポイント: 発行可能株式総数は、設立時定款に記載しなくてもよい(成立前に定めればよい)。
公証人認証が必要な会社
- 株式会社:定款の公証人認証が必要
- 合同会社・合名会社・合資会社:公証人認証は不要
これは試験でよく問われる比較です。
3. 株式の種類
株式は財産的価値と議決権をセットにした「単位」ですが、様々な種類があります。
| 株式の種類 | 内容 |
|---|---|
| 普通株式 | 標準的な株式。配当・議決権あり |
| 優先株式 | 配当・残余財産分配で普通株より優先。議決権なしが多い |
| 劣後(後配)株式 | 配当・残余財産で普通株より後回し |
| 議決権制限株式 | 議決権が制限された株式。公開会社では発行上限あり(総数の2分の1未満) |
| 譲渡制限株式 | 会社の承認がないと譲渡できない株式 |
| 取得条項付株式 | 会社が一定条件で強制取得できる株式 |
| 取得請求権付株式 | 株主が会社に取得を請求できる株式 |
| 拒否権付株式(黄金株) | 株主総会決議に拒否権を持つ株式。敵対的買収防衛に使用 |
公開会社と非公開会社の違い:
- 公開会社:発行する全株式が譲渡制限のない会社
- 非公開会社(閉鎖会社):全株式に譲渡制限がある会社
取締役会設置の義務などの規制は、公開会社の方が厳しくなります。
4. 機関設計
会社の意思決定と監督を担う「機関」の組み合わせです。会社の規模・公開性によって選択できる組み合わせが決まります。
必須の機関
- 株主総会:すべての株式会社に必須
- 取締役:すべての株式会社に必須(1人以上)
機関設計の組み合わせ(主要なもの)
graph TD
A[非公開会社\n小規模向け] --> B[取締役のみ\n最もシンプル]
A --> C[取締役+監査役]
A --> D[取締役会+監査役]
E[公開会社] --> F[取締役会+監査役\n必須]
E --> G[取締役会+監査役会]
E --> H[取締役会+三委員会\n指名・監査・報酬]
E --> I[取締役会+監査等委員会]
機関設計の重要ルール
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 公開会社は取締役会が必須 | 取締役は3名以上必要 |
| 取締役会設置会社は監査役(または委員会)が必須 | 取締役の相互監視だけでは不十分 |
| 大会社(資本金5億円以上 or 負債200億円以上)は監査役会か委員会が必要 | かつ会計監査人も必須 |
| 会計参与は任意設置 | 税理士・公認会計士が担当。計算書類の共同作成 |
各機関の役割
| 機関 | 役割 | 選任方法 |
|---|---|---|
| 株主総会 | 最高意思決定機関 | - |
| 取締役(会) | 業務執行の決定と監督 | 株主総会で選任 |
| 代表取締役 | 会社の対外的代表 | 取締役会(または定款)で選定 |
| 監査役(会) | 取締役の職務執行を監査 | 株主総会で選任 |
| 会計監査人 | 計算書類の監査(公認会計士・監査法人) | 株主総会で選任 |
| 会計参与 | 計算書類の共同作成 | 株主総会で選任 |
5. 株主総会の権限と決議要件
株主総会の権限
株主総会は「株主が会社の重要事項を決める場」です。決められる事項は:
- 役員の選任・解任
- 定款の変更
- 会社の合併・解散
- 剰余金の配当(定款または取締役会への委任がない限り)
取締役会設置会社では、日常の業務執行は取締役会が担うため、株主総会の権限は法令・定款で定めた事項に限定されます。
決議要件
| 決議種類 | 定足数(出席要件) | 可決要件 | 主な事項 |
|---|---|---|---|
| 普通決議 | 議決権の過半数(定款で排除可) | 出席議決権の過半数 | 役員選任・解任、剰余金配当など |
| 特別決議 | 議決権の過半数(定款で引上げ可) | 出席議決権の3分の2以上 | 定款変更、合併・会社分割、解散、株式の譲渡制限設定など |
| 特殊決議 | 議決権の半数以上かつ総株主の半数以上 | 議決権の3分の2以上 | 非公開会社での属人的定め |
試験のポイント:
- 「定款変更 → 特別決議(3分の2以上)」は確実に覚える
- 「役員選任 → 普通決議(過半数)」も頻出
- 「累積投票」:取締役選任時に少数株主が代表を送り込める制度(定款で排除可)
6. よくある疑問
Q. 合同会社と株式会社、どちらが設立しやすいか?
A. 合同会社は公証人認証が不要で設立コストが低い(登録免許税も最低6万円 vs 株式会社の15万円)。ただし、株式会社の方が社会的信用度が高いため、資金調達・取引先との関係では株式会社が有利。近年は合同会社を選ぶスタートアップも増加(要最新確認)。
Q. 監査役と監査等委員会の違いは?
A. 監査役は取締役とは別の独立した機関。監査等委員会は取締役の中に監査機能を組み込んだ形(取締役会内に設置)。監査等委員会設置会社では、監査等委員も取締役なので、株主総会で取締役として選任されます。
Q. 株主総会の「特別決議」の定足数は?
A. 特別決議の定足数は「議決権の過半数を持つ株主の出席」ですが、定款でこれを排除することが可能です(定款で「定足数なし」と定められる)。ただし可決要件の「3分の2以上」は排除・引き下げできません。
Q. 取締役は何人必要か?
A. 取締役会設置会社では3名以上が必要。取締役会を置かない非公開会社では1名でよい。
まとめ
graph LR
A[会社の種類] --> B[株式会社が中心\n株主有限責任]
C[設立手続き] --> D[定款作成→公証認証\n→出資→登記]
E[機関設計] --> F[公開会社は取締役会必須\n取締役会設置→監査役必須]
G[株主総会] --> H[普通決議:過半数\n特別決議:3分の2以上]
| 試験頻出論点 | 内容 |
|---|---|
| 公証人認証が必要な会社 | 株式会社のみ(合同会社・合名会社・合資会社は不要) |
| 公開会社の必須機関 | 取締役会(取締役3名以上)+監査役(または委員会) |
| 特別決議の要件 | 出席議決権の3分の2以上 |
| 議決権制限株式の上限 | 公開会社では発行済総数の2分の1未満 |
| 大会社の要件 | 資本金5億円以上 OR 負債200億円以上 |