プロジェクトマネジメント基礎|WBS・PERT・クリティカルパスを図解で理解する
結論から
プロジェクトマネジメントで試験に必ず出るのはクリティカルパスの計算です。アローダイアグラムを使って「最も時間がかかる経路」を求め、余裕時間(フロート)を計算できるようにしておけば得点源になります。WBSとリスク対応の4分類も頻出です。
1. プロジェクトマネジメントの知識エリア(PMBOK)
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクトマネジメントの知識体系をまとめた標準ガイドです。第6版では10の知識エリアが定義されています。
| 知識エリア | 主な内容 |
|---|---|
| スコープ | プロジェクトの範囲を定義・管理する |
| スケジュール | 作業の順序・期間・日程を管理する |
| コスト | 予算・費用を見積もり・管理する |
| 品質 | 成果物の品質基準を定め管理する |
| リスク | リスクの識別・分析・対応・監視を行う |
| 資源 | 人的・物的リソースを管理する |
| コミュニケーション | 情報共有の計画・実行を管理する |
| 調達 | 外部からの購買・委託を管理する |
| ステークホルダー | 関係者の期待・影響を管理する |
| 統合 | 全知識エリアを統合して管理する |
2. WBS(作業分解構造)
WBSとは
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト全体の作業を階層的に分解してツリー構造で表したものです。「何をやるか」を漏れなく・ダブりなく整理します。
graph TD
A[Webシステム開発プロジェクト] --> B[要件定義]
A --> C[設計]
A --> D[開発]
A --> E[テスト]
A --> F[リリース]
B --> B1[ヒアリング]
B --> B2[要件書作成]
C --> C1[外部設計]
C --> C2[内部設計]
D --> D1[フロントエンド実装]
D --> D2[バックエンド実装]
D --> D3[DB構築]
E --> E1[単体テスト]
E --> E2[結合テスト]
E --> E3[受入テスト]
WBSとガントチャートの違い
| 比較項目 | WBS | ガントチャート |
|---|---|---|
| 目的 | 作業の洗い出し・構造化 | スケジュールの可視化・進捗管理 |
| 表現形式 | ツリー構造(階層図) | 横棒グラフ(時間軸あり) |
| 時間要素 | なし | あり(開始・終了・期間) |
| 依存関係 | 表現しない | 前後関係を矢印で示せる |
ポイント:WBSで「何をやるか」を整理してから、ガントチャートで「いつやるか」を決める、という順番です。
3. PERT/CPM(アローダイアグラム)
PERTとCPMとは
- PERT(Program Evaluation and Review Technique):プロジェクトのスケジュールを図で表し、完了までの時間を管理する手法
- CPM(Critical Path Method):クリティカルパスを特定して、プロジェクト全体の短縮可能性を分析する手法
- 両者は現在ほぼ同じ意味で使われ、試験でも「PERT図」「アローダイアグラム」は同義として扱います
アローダイアグラムの基本ルール
- 丸(ノード):作業の開始点・終了点(イベント)
- 矢印(アロー):作業とその所要日数
- ダミー作業(点線矢印):実際の作業はないが先行制約を表す(所要日数 = 0)
クリティカルパスの計算例
以下のプロジェクトを例に計算します。
graph LR
A((1)) -->|A: 3日| B((2))
A((1)) -->|B: 5日| C((3))
B((2)) -->|C: 4日| D((4))
B((2)) -->|D: 2日| C((3))
C((3)) -->|E: 3日| D((4))
D((4)) -->|F: 2日| E((5))
各経路の所要日数を計算
| 経路 | 所要日数の合計 |
|---|---|
| A→C→F(1→2→4→5) | 3+4+2 = 9日 |
| A→D→E→F(1→2→3→4→5) | 3+2+3+2 = 10日 |
| B→E→F(1→3→4→5) | 5+3+2 = 10日 |
クリティカルパス:A→D→E→F と B→E→F の2経路(どちらも10日)
プロジェクトの最短完了日数 = 10日
最早開始時刻・最遅開始時刻・フロート
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 最早開始時刻(ES) | その作業を最も早く始められる時刻 |
| 最遅開始時刻(LS) | プロジェクト全体を遅らせずに着手できる最遅の時刻 |
| 余裕時間(フロート) | LS - ES で計算。クリティカルパス上の作業はフロート = 0 |
計算方法
- 前向き計算(ES):最初のノードから順に「前の作業のES+所要日数」の最大値を取る
- 後ろ向き計算(LS):最後のノードから逆算して「後の作業のLS-所要日数」の最小値を取る
上記例のノード①〜⑤のES・LSを求めると:
| ノード | ES | LS | フロート |
|---|---|---|---|
| ①(開始) | 0 | 0 | 0 |
| ② | 3 | 3 | 0 |
| ③ | 5 | 5 | 0 |
| ④ | 8 | 8 | 0 |
| ⑤(終了) | 10 | 10 | 0 |
クリティカルパス上の全ノードのフロートが0になっていることを確認します。
試験頻出の典型問題
Q. 上記ネットワークで、作業Aが1日延長した場合、プロジェクト全体への影響は?
A. 作業AはA→D→E→Fのクリティカルパス上にあるためフロート=0。1日延長するとプロジェクト全体が1日遅延する。
Q. 作業Bのフロートは何日か?
A. 経路B→E→F = 10日(クリティカルパスと同じ)なのでフロート = 0日。
4. リスクマネジメント
リスクマネジメントのプロセス
flowchart LR
A[リスクの識別\n何が起きうるか洗い出す] --> B[リスクの分析\n発生確率と影響度を評価]
B --> C[リスクへの対応\n対策を決定する]
C --> D[リスクの監視\n状況を継続的に確認]
D --> A
リスク対応の4種類
| 対応策 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 回避 | リスクの原因そのものを取り除く | 海外調達リスク→国内調達に変更 |
| 低減(軽減) | リスクの発生確率または影響度を下げる | テストを強化してバグ流出を減らす |
| 移転(転嫁) | リスクを第三者に移す | 保険に加入する・外部に委託する |
| 保有(受容) | リスクを許容してそのまま受け入れる | 影響が軽微なリスクは対策コストより許容が合理的 |
覚え方:「回・低・移・保」(かい・てい・い・ほ)
試験での問われ方
「地震によるデータセンター損壊リスクに対し、遠隔地にバックアップサイトを設置した。これはリスクの何か?」 → 低減(リスクの影響度を下げる対応)
「外部委託先に損害賠償責任を契約で負わせた。これはリスクの何か?」 → 移転
よくある疑問
Q. クリティカルパスが複数ある場合はどうなりますか?
A. 複数のクリティカルパスがある場合、それぞれの経路上の作業すべてがフロート=0になります。どの経路の作業が遅延してもプロジェクト全体が遅れるため、管理対象が増えます。
Q. ダミー作業(点線)はなぜ必要ですか?
A. アローダイアグラムでは「同じ開始ノードと終了ノードを持つ作業」を区別できないというルールがあるため、論理的な依存関係だけを表す所要時間ゼロのダミー作業が必要になります。
Q. WBSとPERTはどう使い分けますか?
A. WBSは「何をやるか(作業の洗い出し)」のツール、PERTは「いつまでにできるか(スケジュール分析)」のツールです。実際のプロジェクト管理では、まずWBSで作業を分解し、それをもとにPERTでスケジュールを組みます。
Q. PMBOKの第7版では知識エリアが変わったと聞きましたが?
A. 第7版(2021年)ではパフォーマンス領域という概念に変わりました。ただし診断士試験では引き続き第6版の10知識エリアが出題の基礎となっています(要最新確認)。
まとめ
- WBS:作業をツリー構造で分解。「何をやるか」を漏れなく整理するツール
- ガントチャート:WBSを時間軸に落とし込んだスケジュール管理ツール
- アローダイアグラム(PERT):プロジェクトのネットワーク図。クリティカルパスを特定する
- クリティカルパス:最も時間がかかる経路。フロート=0の作業が並ぶ。ここが遅れると全体が遅れる
- フロート:余裕時間。LS - ES で計算
- リスク対応の4分類:回避・低減・移転・保有
クリティカルパスの計算は必ず数値例で練習しておくことが重要です。過去問では5〜6個のノードを持つネットワーク図が出題されます。