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結論から言うと

需要と供給の分析は、ミクロ経済学の根幹です。試験では「グラフのシフト方向を問う問題」と「余剰分析(面積の読み取り)」が毎年出題されます。この2パターンを制覇すれば得点源になります。


1. 需要曲線と供給曲線の基本

需要曲線

需要曲線は「ある財の価格が上がると、買いたい量は減る」という関係を表します。グラフ上では右下がりの曲線です。

供給曲線

供給曲線は「価格が上がると、作って売りたい量が増える」という関係です。グラフ上では右上がりの曲線です。

graph LR
    subgraph 需要曲線と供給曲線
        A[価格が高い] -->|需要量は少ない| B[需要曲線:右下がり]
        A -->|供給量は多い| C[供給曲線:右上がり]
    end

2. 市場均衡

需要曲線と供給曲線が交わる点が均衡点です。このときの価格を均衡価格(P*)、数量を**均衡数量(Q*)**といいます。

Q P D S 均衡点

Q* P*

消費者余剰 生産者余剰

読み方: 需要曲線D(青)と供給曲線S(赤)の交点が均衡点。均衡価格P*と均衡数量Q*が決まる。青い三角形が消費者余剰(支払い意欲と実際の価格の差)、赤い三角形が生産者余剰(受取額と最低売却可能額の差)。

均衡点では「売りたい量 = 買いたい量」が成立し、市場が安定します。

均衡の変化

需要曲線・供給曲線がシフトすると均衡点が変わります。

シフトの原因曲線シフト方向均衡への影響
消費者の所得増加(正常財)需要曲線右シフトP↑、Q↑
代替財の価格上昇需要曲線右シフトP↑、Q↑
技術革新でコスト低下供給曲線右シフトP↓、Q↑
原材料費の上昇供給曲線左シフトP↑、Q↓
流行の終焉(需要消滅)需要曲線左シフトP↓、Q↓

シフト方向の見分け方:

需要曲線のシフト(需要増加)

Q P S D D' Q* P* Q' P'

P↑ Q↑

読み方: 需要が増加するとD曲線が右にシフト(D→D’)。供給曲線Sは不変のまま、新均衡点は右上に移動し、均衡価格P’(P↑)・均衡数量Q’(Q↑)ともに上昇する。


3. 需要の価格弾力性

定義

需要の価格弾力性(ε)は「価格が1%変わったとき、需要量が何%変わるか」を表す指標です。

ε=需要量の変化率価格の変化率=ΔQ/QΔP/P\varepsilon = \frac{\text{需要量の変化率}}{\text{価格の変化率}} = \frac{\Delta Q / Q}{\Delta P / P}

需要曲線は通常右下がりなので、ε は負の値になります。絶対値で議論することが多く、|ε| > 1 を「弾力的」、|ε| < 1 を「非弾力的」といいます。

弾力性と総収入(売上)の関係

総収入 TR = P × Q の変化は、弾力性によって決まります。

弾力性価格を上げると価格を下げると
ε> 1(弾力的)
ε< 1(非弾力的)
ε= 1(単位弾力的)

直感的な理解:

グラフ上の弾力性

同じ傾きの直線需要曲線でも、見ている点によって弾力性は変わります。直線需要曲線では:


4. 余剰分析

余剰分析は「市場が社会全体にとってどれだけ便益をもたらしているか」を測る分析です。

消費者余剰

消費者が「この価格なら払えた」と思っていた金額と、実際に払った価格の差の合計。グラフ上では**需要曲線と価格線に囲まれた三角形(上の領域)**の面積です。

生産者余剰

生産者が「この価格なら売れた」と思っていた最低価格と、実際に受け取った価格の差の合計。グラフ上では**価格線と供給曲線に囲まれた三角形(下の領域)**の面積です。

総余剰(社会的余剰)

総余剰=消費者余剰+生産者余剰\text{総余剰} = \text{消費者余剰} + \text{生産者余剰}

完全競争市場の均衡点では、総余剰が最大化されます(資源配分が効率的)。

graph TD
    subgraph 余剰分析の構造
        A[需要曲線と価格線の間\n= 消費者余剰]
        B[価格線と供給曲線の間\n= 生産者余剰]
        C[A + B = 総余剰\n均衡点で最大]
    end

価格規制の図(最高価格規制)

Q P D S Q* P* Pmax Pm Qs Qd 超過需要 (Qd − Qs)

読み方: 政府が均衡価格P*より低い価格上限Pmaxを設定すると、供給量QsはPmax上のS曲線の点、需要量QdはD曲線の点になる。Qd > Qsとなり超過需要(品不足)が恒常的に発生する。

課税の影響(死荷重)

政府が消費税などを課すと:

  1. 価格が上昇し、需要量が減少
  2. 消費者余剰・生産者余剰ともに減少
  3. 政府は税収を得るが、失われた余剰の一部は誰にも帰属しない
  4. この「誰にも帰属しない余剰の損失」を**死荷重(厚生損失)**という
graph LR
    A[課税なしの総余剰] --> B[課税後の消費者余剰]
    A --> C[課税後の生産者余剰]
    A --> D[政府の税収]
    A --> E[死荷重:市場の非効率性による損失]

5. 試験での出題パターン

パターン1:シフト方向の判断

「○○が起きた場合、均衡価格と均衡数量はどう変化するか」

解き方:

  1. 需要・供給のどちらに影響するかを特定
  2. 右シフト(増加)か左シフト(減少)かを判断
  3. 交点の移動方向から P と Q の変化を読む

パターン2:余剰の面積読み取り

グラフが与えられ、「AからBに変化したとき、消費者余剰はどう変わるか」を問う形式。

解き方:

パターン3:弾力性と総収入

「価格を○%下げたとき、弾力性が△の場合、総収入はどうなるか」


よくある疑問

Q. 需要曲線のシフトと需要量の変化の違いは?

A. 「需要量の変化」は同じ需要曲線上の点の移動(価格変化によるもの)。「需要の変化」は需要曲線そのものの移動(価格以外の要因による)。試験では「シフト」という言葉が使われます。

Q. 価格弾力性の計算で符号はどうする?

A. 通常は絶対値で扱います。試験では「弾力的・非弾力的」の判断を問われることが多く、符号よりも大小関係が重要です。

Q. 余剰が「最大化」される理由は?

A. 均衡点では、それ以上取引しても「買い手の評価 < 価格」か「売り手のコスト > 価格」になるため、追加取引で生まれる純便益がゼロになります。これが効率的な資源配分の意味です。

Q. 死荷重が生じる理由を直感的に教えて

A. 課税によって「本来は成立したはずの取引」が成立しなくなります。その取引で得られたはずの利益(消費者余剰+生産者余剰)が丸ごと消滅するのが死荷重です。


まとめ

概念ポイント
需要曲線右下がり。価格以外の要因でシフト
供給曲線右上がり。コスト・技術でシフト
均衡需要量 = 供給量 となる点
需要の価格弾力性ε > 1 で弾力的。値上げは総収入を減らす
消費者余剰需要曲線と価格線の間の面積
生産者余剰供給曲線と価格線の間の面積
死荷重課税・規制で失われる社会的損失

試験ではグラフのシフト方向と余剰の面積変化が繰り返し問われます。図を手で描いて練習することが最短経路です。