結論から言うと
生産計画は「大日程(年〜月)→ 中日程(月〜週)→ 小日程(週〜日)」の3階層で構成されます。上位の計画が下位を拘束する階層構造です。大日程計画の中核が MPS(基準生産計画) であり、MPSを受けて MRP(資材所要量計画) が部品・資材の調達量と時期を算出します。
生産計画の3階層
graph TD
A["大日程計画\n期間:年〜月単位\n対象:製品群の生産量・生産時期"] --> B
B["中日程計画\n期間:月〜週単位\n対象:工程別の生産量・人員・設備負荷"] --> C
C["小日程計画\n期間:週〜日単位\n対象:個別作業の順序・割り付け"]
D["需要予測\n(移動平均・指数平滑法)"] --> A
E["受注情報"] --> A
A --> F["MPS(基準生産計画)"]
F --> G["MRP(資材所要量計画)"]
G --> H["発注・手配"]
style A fill:#ffcccc
style B fill:#ffeecc
style C fill:#ffffcc
style F fill:#cceeff
style G fill:#ccffcc
各階層の詳細
大日程計画(長期計画)
- 期間:3ヶ月〜1年
- 内容:製品群ごとの生産量・生産時期の大枠を決める
- インプット:需要予測、受注残、在庫量、設備能力
- アウトプット:月次の生産量計画、必要な設備投資・人員計画の方針
大日程計画の出発点は需要予測です。
中日程計画(中期計画)
- 期間:1ヶ月〜3ヶ月(週単位で詳細化)
- 内容:製品ごとにどの工程でいつ何個作るかを決める
- インプット:大日程計画、工程能力、手配リードタイム
- アウトプット:工程別の生産指示、資材・部品の発注計画
小日程計画(短期計画)
- 期間:1日〜1週間
- 内容:個々の作業の順序・機械への割り付けを決める(スケジューリング)
- インプット:中日程計画、実際の在庫・設備状況、仕掛状況
- アウトプット:日次の作業指示票、作業順序(ジョブスケジュール)
timeline
title 生産計画の時間軸と役割
section 大日程(年〜月)
年初 : 年間生産計画策定
四半期 : 四半期計画修正
section 中日程(月〜週)
月初 : 月次生産計画・MRP展開
週初 : 週次計画調整
section 小日程(週〜日)
週初 : 週間作業スケジュール
日次 : 日次作業指示・進捗確認
需要予測の手法
移動平均法
直近N期間の実績値の平均を次期の予測値とする手法。
- メリット:シンプル、季節変動を均す効果
- デメリット:トレンド変化への反応が遅い
計算例:直近4ヶ月の販売実績が [100, 110, 120, 130] の場合、
4期移動平均 = (100+110+120+130)÷4 = 115
指数平滑法
直近の実績に大きいウェイト(平滑化係数α)を置く加重平均法。
- α(平滑化係数):0〜1の値。大きいほど直近のデータを重視
- α→1:直近実績ほぼそのまま(変動への反応が速い)
- α→0:過去データを均等に参照(安定的だが変化への反応が遅い)
計算例:α=0.3、前期予測値=100、今期実績=120 の場合、
次期予測値 = 0.3×120 + 0.7×100 = 36+70 = 106
MPS(基準生産計画)とMRP
MPS(Master Production Schedule:基準生産計画)
「どの製品を、いつ、いくつ生産するか」を決める大日程レベルの計画。
受注・需要予測・在庫の状況を統合した生産の起点になります。
MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)
MPSを受けて「何の部品・資材が、いつ、いくつ必要か」を計算する仕組み。
flowchart LR
A["MPS\n製品Aを来月100個生産"] --> B["BOM展開\n(部品構成表)"]
B --> C["部品B: 200個必要\n部品C: 100個必要"]
C --> D["在庫確認"]
D --> E["正味必要量計算\n(必要量 - 手持在庫)"]
E --> F["リードタイム逆算\n発注時期の決定"]
F --> G["発注指示・製造指示"]
style A fill:#cceeff
style G fill:#ccffcc
BOM(Bill of Materials:部品構成表) が不可欠。BOMに基づいてMPSから部品展開します。
MPSとMRPの違い
| 項目 | MPS | MRP |
|---|---|---|
| 対象 | 完成品(製品) | 部品・原材料 |
| 視点 | 何をいつ作るか | 何をいつ買う/作るか |
| インプット | 需要予測・受注・在庫 | MPS・BOM・在庫 |
| アウトプット | 製品別生産スケジュール | 資材発注計画・製造指示 |
能力計画(生産能力の把握と照合)
生産計画を立てても、設備・人員が対応できなければ意味がありません。
能力計画とは「計画した生産量を実現できる能力があるか」を確認するプロセスです。
flowchart TD
A["生産計画(負荷)"] --> C["照合"]
B["設備・人員能力(能力)"] --> C
C --> D{負荷 vs 能力}
D -->|"負荷 > 能力\n(オーバーロード)"| E["対策\n・残業/休日出勤\n・外注\n・計画修正"]
D -->|"負荷 < 能力\n(余力あり)"| F["対策\n・前倒し生産\n・段取り改善\n・人員配置変更"]
D -->|"負荷 ≈ 能力"| G["計画実行"]
よくある疑問
Q. 大日程・中日程・小日程の期間の境界線が曖昧に感じる。
A. 業種・製品によって異なるので「絶対的な境界」はありません。試験では「大=長期・方針レベル」「中=月次・工程レベル」「小=日次・作業レベル」という役割の違いで覚えてください。
Q. MPSとMRPは別システムなのか?
A. 概念上は別ですが、ERPシステム(SAPなど)ではMPS機能とMRP機能が統合されています。試験では「MPSは製品レベル、MRPは部品レベル」という入出力の違いを問われます。
Q. 指数平滑法のαはどう決めるのか?
A. 需要の変動パターンによります。急激な変化が多い場合はαを大きく(最近の実績を重視)、安定した需要ならαを小さく(過去実績も参照)します。試験では「αが大きいほど直近の実績を重視する」という性質を押さえれば十分です。
Q. BOMって何?
A. Bill of Materials(部品構成表)の略。製品1個を作るために必要な部品・原材料の種類と数量を階層的に定義したリストです。MRPはこのBOMなしには機能しません。製品Aが部品B×2個と部品C×1個で構成される、という情報がBOMに入っています。
まとめ
- 生産計画は 大日程→中日程→小日程 の3階層。上位が下位を拘束する
- 大日程の起点は需要予測(移動平均法・指数平滑法)
- MPS(基準生産計画):製品レベルで「いつ何個作るか」
- MRP(資材所要量計画):部品レベルで「いつ何個手配するか」(MPSとBOMが入力)
- 能力計画で「負荷 vs 能力」を照合し、オーバーロードなら計画修正
試験での頻出パターン:
- 移動平均・指数平滑法の計算問題
- MPSとMRPの違い(対象・インプット・アウトプット)
- 3階層の役割と時間軸の対応