結論から言うと
生産統制とは、生産計画を計画通りに実行するための管理活動です。「計画 vs 実績」のギャップを早期に発見し、是正するPDCAの「C(Check)→A(Act)」にあたります。構成要素は「進捗管理・現品管理・余力管理」の3つです。
生産統制の全体像
graph TD
A["生産計画\n(大日程・中日程・小日程)"] --> B["生産実行"]
B --> C["生産統制"]
C --> D["進捗管理\n日程計画 vs 実績"]
C --> E["現品管理\n物の場所・数量・状態"]
C --> F["余力管理\n能力 vs 負荷のバランス"]
D --> G{差異あり?}
E --> G
F --> G
G -->|"Yes(差異・問題)"| H["計画修正・是正処置"]
G -->|"No(計画通り)"| I["計画継続"]
H --> A
I --> B
style A fill:#cceeff
style C fill:#ffe4b5
style D fill:#d4edda
style E fill:#d4edda
style F fill:#d4edda
①進捗管理
定義
日程計画に対して、実際の生産がどれだけ進んでいるかを把握・管理する活動。
目的は納期遵守。遅れを早期に検知して挽回策を講じます。
ガントチャート
最も基本的な進捗管理ツール。横軸が時間、縦軸が作業・工程・設備を表すバーチャートです。
gantt
title ガントチャートの例(製品Aの生産工程)
dateFormat MM-DD
section 加工工程
部品A加工 :done, a1, 06-01, 2d
部品B加工 :done, a2, 06-01, 3d
section 組立工程
サブアセンブリ :done, b1, 06-03, 2d
本体組立 :active, b2, 06-05, 3d
section 検査工程
品質検査 : c1, 06-08, 1d
出荷 : c2, 06-09, 1d
ガントチャートで読み取れること:
- 各作業の予定開始日・終了日
- 作業間の前後関係(ただし詳細な依存関係はアローダイアグラムが適切)
- 計画vs実績の差異(実線と破線で表現)
アローダイアグラム(PERT図)
工程間の依存関係(先行関係)を矢印で表した図。クリティカルパス(全体のリードタイムを決める最長経路)の特定に使います。
graph LR
S["開始"] --> A["作業A\n2日"]
S --> B["作業B\n3日"]
A --> C["作業C\n2日"]
B --> C
B --> D["作業D\n1日"]
C --> E["終了"]
D --> E
style C fill:#ffcccc
style B fill:#ffcccc
style E fill:#ccffcc
クリティカルパス = S → B(3日) → C(2日) → 終了 = 合計5日
差異管理
計画進捗率と実績進捗率を比較し、差異の原因(設備トラブル・欠品・工数超過)を特定します。
②現品管理
定義
材料・仕掛品・完成品について、その所在・数量・状態を正確に把握する活動。
モノが「どこに」「いくつ」「どんな状態で」あるかを常に管理します。
なぜ必要か
工場内では多数の部品・製品が同時進行で流れています。現品管理が不十分だと:
- 部品を探す時間が発生(非付加価値作業の増大)
- 欠品による計画外の停止
- 過剰在庫(スペース・資金の浪費)
- 品質問題(ロット混入・期限切れ)
主な手段
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 現品票(識別票) | 部品・仕掛品に取り付けるタグ。品番・数量・工程ステータスを記載 |
| 棚番管理 | 保管場所に番号を振り、品目と場所を1対1で対応 |
| バーコード/RFID | 電子的な現品追跡。リアルタイムで所在・数量を把握 |
| 定置管理 | 「何をどこに置くか」を定める5S活動の一環 |
③余力管理
定義
作業者・設備の「能力」と、割り当てられた「負荷(仕事量)」のバランスを管理する活動。
能力過不足を早期に検知し、作業の再配分や外注活用で対応します。
余力の計算
- 能力:設備稼働時間 × 工数能率 = 実際に処理できる工数
- 負荷:計画された作業の工数合計
- 余力 > 0:余裕あり(前倒し生産や多能工化の機会)
- 余力 < 0(負荷超過):残業・外注・計画修正が必要
graph LR
subgraph "余力管理の判断"
A["能力(設備稼働時間)"] --> C{余力 = 能力 - 負荷}
B["負荷(計画工数)"] --> C
C -->|"余力 > 0"| D["余裕\n前倒し生産・休暇取得"]
C -->|"余力 ≈ 0"| E["適正\n計画通り実行"]
C -->|"余力 < 0"| F["負荷超過\n残業/外注/計画修正"]
end
追番管理
製品ごとに追番(生産番号) を振り、その番号で現品・進捗・余力を横断的に管理する手法。受注生産(個別受注品)で特に有効です。
生産統制の3要素まとめ
mindmap
root((生産統制))
進捗管理
ガントチャート
アローダイアグラム
クリティカルパス
差異管理
現品管理
現品票
棚番管理
RFID/バーコード
定置管理
余力管理
能力 vs 負荷
余力計算
追番管理
外注活用
よくある疑問
Q. 生産計画と生産統制は何が違うのか?
A. 生産計画は「将来の生産をどうするか(P:Plan)」を決める活動、生産統制は「計画通りに進んでいるかを確認し(C:Check)、ずれを修正する(A:Act)」活動です。PDCAの役割で区別できます。
Q. ガントチャートとアローダイアグラム、どちらを使えばいい?
A. ガントチャートは「各作業の時間軸と担当者・設備の見える化」に向いています。アローダイアグラム(PERT)は「工程間の依存関係の把握とクリティカルパスの特定」に向いています。試験ではそれぞれの用途の違いを問われます。
Q. 余力管理で「負荷超過」になったらどうする?
A. 優先度順に:①残業・休日出勤で能力を増やす、②他ラインや外注に振り分けて負荷を減らす、③計画そのものを修正する(納期交渉含む)。
Q. 現品管理はなぜ独立した管理要素なのか?進捗管理に含まれないのか?
A. 進捗管理は「時間軸(スケジュール)」の管理、現品管理は「物(マテリアル)の場所・数量・状態」の管理です。進捗が遅れていなくても現品が行方不明になることがあります。物の流れとスケジュールを分けて管理するのが生産管理の原則です。
まとめ
- 生産統制=計画と実績のギャップを管理し是正する活動(PDCAのC+A)
- 進捗管理:日程vs実績。ガントチャートでバー表示、アローダイアグラムでCP把握
- 現品管理:物の所在・数量・状態の正確な把握
- 余力管理:能力-負荷=余力。余力<0なら残業・外注・計画修正
試験での頻出パターン:
- 3要素の定義と目的の区別
- ガントチャートの読み取り問題
- アローダイアグラムのクリティカルパス計算
- 余力=能力-負荷の計算