結論から言うと
IE(Industrial Engineering:経営工学)は、ムダのない最適な作業方法と標準時間を設計するための工学的手法です。「仕事の流れ(方法)」を分析する方法研究と、「仕事にかかる時間」を測る作業測定の2本柱で構成されます。試験では標準時間の計算式と工程分析の4記号が頻出です。
IEの体系
graph TD
A["IE\nIndustrial Engineering"] --> B["方法研究\n作業方法のムダを排除する"]
A --> C["作業測定\n作業時間を定量化する"]
B --> D["工程分析\n工程の流れを4記号で分析"]
B --> E["動作研究\nサーブリッグ分析・動作経済原則"]
C --> F["時間研究\nストップウォッチ法・PTS法"]
C --> G["稼働分析\nワークサンプリング"]
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style B fill:#cceeff
style C fill:#d4edda
①工程分析
工程分析の4記号
JIS(日本産業規格)で定められた4種類の記号で、製造プロセスの各ステップを分類します。
graph LR
subgraph "工程分析の4記号"
A["○ 加工\n素材・製品に変化を与える\n(切削・組立・塗装など)"]
B["→ 運搬\nモノの場所が変わる\n(フォークリフト・コンベア)"]
C["□ 検査\n品質または数量を確認する\n(寸法測定・外観検査)"]
D["▽ 停滞\n意図的・非意図的に止まる\n(待ち・保管・仕掛在庫)"]
end
| 記号 | 名称 | 内容 | 付加価値 |
|---|---|---|---|
| ○ | 加工 | 形状・性質を変える | あり(唯一) |
| → | 運搬 | 場所を移動する | なし |
| □ | 検査 | 品質/数量を確認 | なし |
| ▽ | 停滞 | 待ち・保管 | なし(最大のムダ) |
改善の原則:加工を増やし、停滞を排除する。運搬・検査は最小化する。
工程図表の種類
- 工程図表(フロープロセスチャート):4記号を縦に並べて流れを可視化
- 流れ線図(フローダイアグラム):工場レイアウト図上に物の流れを重ねた図
②動作研究
サーブリッグ分析
ギルブレス(F.B. Gilbreth)が考案した微動作分析手法。人間の作業を18種類の基本動作(サーブリッグ)に分解します。
サーブリッグの主要例:
| 記号 | 動素名 | 内容 |
|---|---|---|
| TE | 空手移動 | 手が物を持たずに移動 |
| G | つかむ | 物をつかむ動作 |
| TL | 運ぶ | 物を持って移動 |
| P | 位置決め | 物を正確な位置に置く |
| RL | 放す | 物を手放す |
| I | 調べる | 品質・数量を確認 |
| UD | 避けられない遅れ | 機械待ちなど |
改善方針:TE(空手移動)・UD(避けられない遅れ)などの非付加価値動素を削減する。
動作経済の原則
最小の疲労で最大の成果を上げる動作設計の原則。主要なものを以下に示します。
mindmap
root((動作経済の原則))
身体の使用に関する原則
両手は同時に動作開始・終了
手の動作は対称的に
最小の動作区分で達成
作業場の配置に関する原則
材料・工具は定位置に
動作の距離を最小に
適正な作業高さ
工具・設備の設計に関する原則
2つ以上の工具を組み合わせる
治具・クランプで固定
③時間研究
標準時間の定義と計算式
標準時間(ST:Standard Time) = 「適性を持つ熟練作業者が、正常ペースで、必要な余裕を持って作業を完了するのに必要な時間」
または
- 正味時間(基本時間):純粋な作業に要する時間。観測時間×レイティング係数で求める
- 余裕時間:疲労・生理的欲求・機械待ち・段取り等のための時間
- 余裕率:正味時間に対する余裕時間の割合
graph LR
A["観測時間\n(ストップウォッチで測定)"] --> B["× レイティング係数\n(100%=標準ペース)"]
B --> C["正味時間(基本時間)"]
C --> D["× (1 + 余裕率)"]
D --> E["標準時間"]
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余裕の種類
| 余裕の種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 個人余裕 | 生理的欲求・休憩 | トイレ・水分補給 |
| 疲労余裕 | 疲労回復のための時間 | 体力的な作業後の休息 |
| 職場余裕 | 機械調整・段取り等 | 加工前の刃具交換 |
| 管理余裕 | 作業指示・報告 | ミーティング参加 |
計算例:
観測時間=2.0分、レイティング係数=90%、余裕率=10% の場合
正味時間 = 2.0 × 0.9 = 1.8分
標準時間 = 1.8 × (1 + 0.1) = 1.98分
ストップウォッチ法(タイムスタディ)
実際の作業をストップウォッチで複数回計測し、代表値(平均値等)を正味時間とする手法。
PTS法(既定時間標準法)
Predetermined Time Standard。基本動作ごとに事前に標準時間値を定めておき、作業を分解して積み上げる手法。
代表例:MTM法(Methods-Time Measurement)、WF法(Work Factor)
- 実際に作業を行わなくても設計段階で標準時間を算出できる
- 新製品・新ラインの立ち上げ前の工程設計に有効
④稼働分析(ワークサンプリング)
定義
作業者や設備をランダムな時刻に瞬間観測し、そのスナップショットの統計的集計から稼働状態の割合(稼働率・非稼働率)を推定する手法。
ストップウォッチ法との比較
| 項目 | ストップウォッチ法 | ワークサンプリング |
|---|---|---|
| 観測対象 | 特定作業の時間 | 複数作業者・設備の状態 |
| 手法 | 連続観測 | 瞬間観測(ランダム) |
| 適した場面 | サイクル作業 | 不規則作業・稼働率調査 |
| 精度 | 高い | 観測数が多いほど高くなる |
メリット: 観測者の負担が少ない、多数の作業者・設備を同時調査できる
デメリット: 統計的な誤差がある、観測数が少ないと精度が低い
工程分析とIEの全体像
flowchart TD
A["現状把握\n(工程分析・4記号で可視化)"] --> B["問題発見\n(停滞・運搬の多さ・ムダな動作)"]
B --> C["方法改善\n(動作経済原則・レイアウト変更)"]
C --> D["時間設定\n(ストップウォッチ法・PTS法で標準時間設定)"]
D --> E["稼働率確認\n(ワークサンプリングで実態把握)"]
E --> F["標準化・定着\n(標準作業書・手順書作成)"]
F -->|"継続改善"| A
よくある疑問
Q. 工程分析の記号で「検査」と「加工」を同時に行う場合は?
A. 同時(兼用)の場合は記号を組み合わせます(例:○の中に□を入れた「兼用記号」)。試験では基本の4記号の意味を押さえれば十分です。
Q. レイティング係数(評価係数)とは?
A. 観測した作業者のペースを「標準ペース(100%)」と比較した比率です。速く作業していれば100%超、ゆっくりなら100%未満になります。観測時間×レイティング係数=正味時間(標準ペースに換算した時間)です。
Q. 余裕率の計算式が2種類あると聞いた。
A. 外掛け法と内掛け法があります。試験では「標準時間=正味時間×(1+余裕率)」の外掛け法が基本です。余裕率が与えられたら外掛けで計算してください。
Q. サーブリッグは全部覚える必要ある?
A. 診断士試験では18種類すべての暗記は不要です。「ギルブレスが提唱した」「微動作18要素に分解する」「改善の観点:非付加価値動素を減らす」という概念を押さえてください。
まとめ
- IEは「方法研究(工程分析・動作研究)」+「作業測定(時間研究・稼働分析)」の2本柱
- 工程分析4記号:○加工・→運搬・□検査・▽停滞。付加価値は加工のみ
- 標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率)
- ワークサンプリング:ランダム瞬間観測で稼働率を統計的に推定
試験での頻出パターン:
- 標準時間の計算(正味時間×(1+余裕率))
- 工程分析4記号の意味と改善方針
- ストップウォッチ法とワークサンプリングの使い分け
- サーブリッグ・動作経済原則の概念問題