結論から言うと
設備管理の目標は「設備を最高の状態で使い続けること」です。保全方式には「壊れてから直す(事後保全)」から「壊れる前に対策(予防保全)」さらには「劣化を状態監視して予測(予知保全)」まで段階があります。TPMはこれらを組織全体で実践するフレームワークで、設備総合効率(OEE)で定量評価します。試験では「保全の種類の区別」「OEEの計算」「TPMの8本柱」が頻出です。
設備保全の種類
graph TD
A["設備保全の体系"] --> B["事後保全\nBreakdown Maintenance"]
A --> C["予防保全\nPreventive Maintenance"]
A --> D["改良保全\nCorrective Maintenance"]
C --> E["時間基準保全\nTBM: Time-Based Maintenance"]
C --> F["状態基準保全\nCBM: Condition-Based Maintenance\n(予知保全)"]
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style E fill:#ffffcc
style F fill:#d4edda
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| 保全方式 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 事後保全(BM) | 故障してから修理 | 計画不要・コスト低 | 突発停止・機会損失大 |
| 予防保全(PM) | 故障前に定期交換・点検 | 突発停止を防ぐ | 過剰メンテのムダが出る |
| 予知保全(CBM) | 状態を監視して劣化予測 | 最適タイミングで保全 | センサー・AI投資が必要 |
| 改良保全(CM) | 故障しにくい設備に改造 | 根本的な信頼性向上 | 改造コスト・時間が必要 |
試験の引っかけ:「予防保全」と「予知保全」は別物。 予防保全は「時間(カレンダー)で交換」、予知保全は「状態(データ)で判断」です。
TPM(全員参加の生産保全)
TPMとは
Total Productive Maintenance。「全員参加(Total)」「生産性(Productive)」「保全(Maintenance)」の略。
目標:設備の6大ロスをゼロにして、設備総合効率を最大化する。
1950年代に日本で発展した考え方で、「保全部門だけが設備を管理する」から「オペレーター自身が自分の設備を守る(自主保全)」への転換が核心です。
6大ロス(故障ロス・段取りロス・空転・速度低下・不良・立上り)
mindmap
root((6大ロス))
停止ロス
故障ロス\n突発停止による時間損失
段取り・調整ロス\nチョコ停・刃具交換
速度ロス
空転・チョコ停ロス\n瞬間停止・空転
速度低下ロス\n設計速度より遅い
不良ロス
工程不良ロス\n不良品の発生
立上りロス\n起動直後の歩留まり低下
TPMの8本柱
graph TD
TPM["TPM\n(全員参加の生産保全)"] --> P1["①個別改善\n6大ロス排除の個別改善活動"]
TPM --> P2["②自主保全\nオペレーターによる設備の自主管理"]
TPM --> P3["③計画保全\n保全部門による計画的メンテナンス"]
TPM --> P4["④教育・訓練\nスキルアップ・多能工化"]
TPM --> P5["⑤品質保全\n不良ゼロを設備・工程で保証"]
TPM --> P6["⑥開発管理\n設備設計段階からの保全性考慮"]
TPM --> P7["⑦管理間接部門\n営業・調達等の効率化"]
TPM --> P8["⑧安全・環境\n労災ゼロ・環境問題ゼロ"]
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試験頻出:8本柱の中で最重要は「①個別改善」「②自主保全」「③計画保全」の3つ。
自主保全の7ステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①初期清掃 | 清掃しながら設備の異常を発見する |
| ②発生源・困難箇所対策 | 汚れの原因除去・清掃しにくい箇所の改善 |
| ③清掃・給油基準書の作成 | 点検・給油の標準を文書化 |
| ④総点検 | 設備の構造・機能を体系的に点検 |
| ⑤自主点検 | 自分でチェックシートに基づき点検 |
| ⑥標準化 | 清掃・点検・給油の標準化 |
| ⑦自主管理の徹底 | PDCA定着・継続的改善 |
設備総合効率(OEE)
OEEの計算式
各指標の定義:
graph LR
A["負荷時間\n(操業時間-計画停止)"] -->|"故障・段取り損失を除く"| B["稼働時間"]
B -->|"速度低下・空転損失を除く"| C["正味稼働時間"]
C -->|"不良・手直し損失を除く"| D["価値稼働時間\n(良品生産時間)"]
E["時間稼働率\n=稼働時間÷負荷時間"]
F["性能稼働率\n=正味稼働÷稼働時間"]
G["良品率\n=良品数÷生産数"]
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OEE計算例
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 負荷時間 | 480分/日 |
| 停止時間(故障・段取り) | 60分 |
| 稼働時間 | 480-60 = 420分 |
| 基準サイクルタイム | 1分/個 |
| 生産数量 | 400個 |
| 不良数 | 20個 |
計算:
- 時間稼働率 = 420 ÷ 480 = 87.5%
- 性能稼働率 = (400個 × 1分) ÷ 420分 = 95.2%
- 良品率 = (400-20) ÷ 400 = 95.0%
- OEE = 0.875 × 0.952 × 0.950 ≒ 79%
世界標準のOEE目標値は 85%以上 とされています。
予知保全(状態基準保全・CBM)
概念
設備の「劣化状態」をセンサーや計測で連続監視し、故障する前の最適なタイミングで保全する手法。
flowchart LR
A["センサー設置\n(振動・温度・音・電流)"] --> B["データ収集\nIoT/クラウド"]
B --> C["異常検知・劣化予測\n機械学習・統計モデル"]
C --> D{閾値を超えたか?}
D -->|"Yes"| E["保全指示\n(最適タイミングで)"]
D -->|"No"| A
E --> F["部品交換・修理"]
F --> A
従来の予防保全(TBM)との違い
| 項目 | 時間基準保全(TBM) | 状態基準保全(CBM)予知保全 |
|---|---|---|
| 交換タイミング | カレンダー(◯時間毎) | 劣化状態が閾値を超えたとき |
| 問題点 | まだ使える部品を交換(過剰保全) | センサー・分析の初期投資が必要 |
| メリット | 計画が立てやすい | 部品寿命を最大活用できる |
| 技術要件 | 低い | 高い(IoT・AI・統計) |
よくある疑問
Q. 予防保全と予知保全を混同しやすい。
A. 英語で整理すると明確です。予防保全=Preventive(防ぐ)、予知保全=Predictive(予測する)。前者は「時間(カレンダー)で動く」、後者は「データ(状態)で動く」です。
Q. 改良保全は「改良するから良いもの」という印象だが、TPMの中での位置づけは?
A. 改良保全は設備を「故障しにくい設備に変えること(信頼性向上)」「保全しやすい設備に変えること(保全性向上)」を目指す活動です。事後保全・予防保全と組み合わせて使います。
Q. OEEで「性能稼働率」の計算が複雑に感じる。
A. 直感的に言うと「設備が動いている間に、本来の速度で作れていたか」の比率です。稼働していても速度が遅ければ(空転や軽微な停止が多ければ)性能稼働率は下がります。
Q. TPMとTQC(全社品質管理)の違いは?
A. TPMは「設備・生産効率」にフォーカス、TQCは「品質」にフォーカスしています。TPMの8本柱に「品質保全」が含まれており、品質と設備管理を統合しようとする考え方です。
まとめ
- 保全の種類:事後保全 → 予防保全(TBM)→ 予知保全(CBM)→ 改良保全
- TPMは「全員参加」で6大ロスをゼロにするフレームワーク。8本柱の中核は①個別改善・②自主保全・③計画保全
- OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
- 予知保全=センサー・AI活用で「劣化状態が閾値を超えたとき」に保全
試験での頻出パターン:
- 事後保全・予防保全・予知保全・改良保全の区別
- OEEの計算(3指標の計算式と積)
- TPMの8本柱の名称と概要
- 自主保全と計画保全の役割分担(オペレーター vs 保全部門)