減価償却(定額法・定率法)の計算を完全理解する
結論から
減価償却とは、長期間使う固定資産の取得コストを耐用年数にわたって費用配分する会計処理です。定額法は「毎年同じ金額を費用にする」、定率法は「残存価値に一定率をかけるため初期ほど費用が大きい」という違いがあります。
試験では計算問題が頻出です。定額法・定率法それぞれの計算式と、償却後の帳簿価額(未償却残高)の求め方を確実に習得してください。
1. 減価償却とは何か
企業が建物・機械・車両などを購入した場合、購入時に全額費用計上すると実態を反映しません。これらの資産は複数年にわたって価値を生み出すため、使用年数(耐用年数)に比例して少しずつ費用計上します。これが減価償却です。
flowchart LR
BUY["機械 1,000万円 購入\n(取得原価)"]
USE["10年間使用\n毎年少しずつ費用計上"]
END["10年後\n帳簿価額ゼロ(または残存価額)"]
BUY --> USE --> END
重要な4つの概念
| 概念 | 定義 |
|---|---|
| 取得原価 | 資産の購入価格+付随費用(運搬費・設置費など) |
| 耐用年数 | 資産を業務に使用できる見込み年数(法定耐用年数がある) |
| 残存価額 | 耐用年数終了後に残る価値(現行税法では基本ゼロまたは1円) |
| 帳簿価額(未償却残高) | 取得原価 − 減価償却累計額 |
現行税法のポイント:2007年4月1日以後取得の資産は、耐用年数経過後に**残存価額ゼロ(1円まで償却)**が原則です。試験問題で「残存価額ゼロ」と明記される場合は注意。
2. 定額法(Straight-line Method)
計算式
年間償却費 = 取得原価 × 定額法償却率
= 取得原価 ÷ 耐用年数
(残存価額ゼロの場合)
毎年同じ金額を計上するため、計画が立てやすい。
計算例
取得原価:1,000万円、耐用年数:5年、残存価額:0円
年間償却費 = 1,000 × (1/5) = 200万円/年
| 年度 | 期首帳簿価額 | 減価償却費 | 期末帳簿価額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,000万円 | 200万円 | 800万円 |
| 2年目 | 800万円 | 200万円 | 600万円 |
| 3年目 | 600万円 | 200万円 | 400万円 |
| 4年目 | 400万円 | 200万円 | 200万円 |
| 5年目 | 200万円 | 200万円 | 0万円 |
3. 定率法(Declining Balance Method)
計算式
当年度償却費 = 期首帳簿価額(未償却残高)× 定率法償却率
定率法の償却率は税法で定められており、定額法の償却率の2倍程度(200%定率法)が一般的です。
200%定率法(2012年4月1日以後取得):
定率法償却率 = 定額法償却率 × 2.0
例)耐用年数5年 → 定額法率 0.200 → 定率法率 0.400
償却保証額と改定償却率
定率法では、残高が少なくなると年々の償却額が小さくなり、耐用年数内に償却しきれない問題が生じます。そのため「償却保証額」を下回ったタイミングで「改定償却率」に切り替えます。
償却保証額 = 取得原価 × 保証率(税法で規定)
当年度償却費 < 償却保証額 になった年から:
当年度償却費 = 改定後帳簿価額 × 改定償却率
試験での扱い:改定償却率の詳細計算は難度が高く、問題文に与えられる場合がほとんどです。「定率法は初期ほど多く償却される」という方向性を理解しておくことが優先です。
計算例(定率法・償却率0.4)
取得原価:1,000万円、耐用年数:5年、定率法償却率:0.4
| 年度 | 期首帳簿価額 | 償却費(×0.4) | 期末帳簿価額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,000万円 | 400万円 | 600万円 |
| 2年目 | 600万円 | 240万円 | 360万円 |
| 3年目 | 360万円 | 144万円 | 216万円 |
| 4年目 | 216万円 | 86.4万円 | 129.6万円 |
| 5年目 | 129.6万円 | ※改定償却率適用 | ≒0万円 |
4. 定額法 vs 定率法の比較
xychart-beta
title "減価償却費の推移比較(取得原価1,000万円・耐用年数5年)"
x-axis ["1年目", "2年目", "3年目", "4年目", "5年目"]
y-axis "減価償却費(万円)" 0 --> 450
bar [200, 200, 200, 200, 200]
line [400, 240, 144, 86, 52]
棒グラフ:定額法(毎年200万円一定)
折れ線:定率法(初年度大、以降逓減)
図1:定額法 vs 定率法の減価償却費推移(棒グラフ)
読み方: 青バーが定額法(毎年一定200万円)、オレンジバーが定率法(初年度400万円→以降逓減)。初年度は定率法の方が費用が大きく、利益が圧縮される。裏を返せば初年度の節税効果が大きい。
図2:帳簿価額の推移(残存価値の変化)
読み方: 青の直線が定額法(毎年同額ずつ帳簿価額が下がる)、オレンジの曲線が定率法(最初の数年で急激に下がり、後半は緩やか)。定率法は「初年度に多く費用計上→帳簿価額が急速に下がる」という特徴を視覚的に示している。両方とも5年後に帳簿価額がゼロに到達する(残存価額ゼロの前提)。
定額法と定率法の特徴比較
| 比較項目 | 定額法 | 定率法 |
|---|---|---|
| 毎年の償却費 | 一定 | 初期ほど大きい |
| 計算の簡単さ | 簡単 | やや複雑 |
| 利益への影響 | 毎年安定 | 初期は利益が圧縮される |
| 初期の節税効果 | 小さい | 大きい |
| 主な適用資産 | 建物・ソフトウェア | 機械・車両 |
5. 法定耐用年数の考え方
資産の種類ごとに税法(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で定められています。
| 資産の種類 | 法定耐用年数の目安 |
|---|---|
| 建物(鉄骨造) | 34〜51年 |
| 建物(木造) | 15〜24年 |
| 工場用機械(一般) | 10〜12年 |
| 車両(乗用車) | 6年 |
| コンピュータ | 4年 |
| ソフトウェア(市販品) | 3年 |
試験では具体的な年数よりも「耐用年数が与えられた場合の計算手順」が問われます。数値は問題文から読み取る姿勢で。
6. 試験での出題パターン
パターン1:n年後の帳簿価額を求める
【問】取得原価300万円、耐用年数10年、定額法(残存価額ゼロ)。3年後の帳簿価額は?
年間償却費 = 300 × 1/10 = 30万円
3年間の累計 = 30 × 3 = 90万円
帳簿価額 = 300 − 90 = 210万円
パターン2:ある年の減価償却費を求める
【問】取得原価200万円、定率法(償却率0.5)。2年目の償却費は?
1年目帳簿価額 = 200 × (1−0.5) = 100万円
2年目償却費 = 100 × 0.5 = 50万円
パターン3:固定資産売却損益の計算
【問】取得原価500万円、累計償却200万円の機械を350万円で売却。売却損益は?
帳簿価額 = 500 − 200 = 300万円
売却益 = 350 − 300 = 50万円(固定資産売却益)
よくある疑問
Q. 減価償却費を計上しても現金は出ていかないのですか? A. その通りです。現金の支出は資産を購入したときに発生しています。減価償却費は「購入代金を分割して費用計上する帳簿上の操作」です。だからC/F計算書(間接法)では減価償却費を加算して戻します。
Q. 土地は減価償却しないのですか? A. 土地は使用しても価値が減らない(と会計上みなす)ため、減価償却の対象外です。同様に美術品・骨董品なども原則対象外です。
Q. 定額法と定率法、どちらを選べばいいですか? A. 税務上は資産の種類によって選択できます(届出が必要)。建物・無形資産は定額法のみ。機械・車両は定率法がデフォルト(定額法への変更も可)。試験では問題文の指定に従えば問題ありません。
Q. 「残存価額10%」という問題が出てきたら? A. 旧税法(2007年以前)の問題では残存価額が取得原価の10%でした。現行法はゼロですが、試験問題では旧基準が出ることもあります。問題文の指示を確認してください。
まとめ
- 減価償却 = 固定資産の取得原価を耐用年数に分散して費用計上
- 定額法:取得原価 × 1/耐用年数 → 毎年一定額
- 定率法:期首帳簿価額 × 償却率 → 初期ほど大きく逓減
- 残存価額ゼロが現行の原則(2007年4月以降取得)
- 減価償却費はキャッシュアウトなし → C/F計算書(間接法)で加算
- 試験では「n年後の帳簿価額」「ある年の償却費」「売却損益」の計算が頻出