結論から言うと
デリバティブとは「原資産(株式・債券・通貨など)の価格から派生した金融商品」です。主に価格変動リスクをヘッジするために使われます。試験では先物・オプション・スワップの定義と、オプションの損益構造(特にコール・プット)が問われます。
デリバティブとは
「デリバティブ(derivative)」は「派生した」という意味で、原資産の価格変動によって価値が決まる金融商品です。
graph TD
A[デリバティブ] --> B[先物取引<br>Futures]
A --> C[オプション取引<br>Options]
A --> D[スワップ取引<br>Swaps]
B --> E[将来の売買価格を<br>今日決める]
C --> F[将来の売買の<br>「権利」を売買する]
D --> G[将来のキャッシュフローを<br>交換する]
先物取引(Futures / Forward)
定義
将来の特定日に、特定の数量・価格で原資産を売買することを、今日の時点で約束する契約です。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 先物(Futures) | 取引所で標準化された契約 |
| 先渡(Forward) | 相対(OTC)取引、条件を自由に設定 |
仕組み
- 買い手(ロング):今日決めた価格で将来「買う」義務
- 売り手(ショート):今日決めた価格で将来「売る」義務
graph LR
A[現時点<br>価格100円で約束] --> B[将来の決済日]
B --> C{実際の価格}
C --> D[120円<br>買い手が得]
C --> E[80円<br>売り手が得]
ヘッジの例
輸出企業が3ヶ月後に1万ドルを受け取る予定:
- 今日「1ドル=150円で売る先物」を締結
- 実際のレートがどうなっても、150円/ドルで換算できる
オプション取引(Options)
定義
「将来の特定日に、特定の価格で売買する”権利”」を売買する取引です。先物と異なり、権利であり義務ではありません。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| コールオプション | 買う権利 |
| プットオプション | 売る権利 |
キーワード整理
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 行使価格(Strike Price) | オプションを行使する際の売買価格 |
| プレミアム | オプションの購入代金(権利料) |
| 満期日(Expiry) | 権利を行使できる期日 |
| 原資産 | 株式・通貨・債券など |
コールオプション(買う権利)の損益
行使価格100円のコールオプションを、プレミアム10円で購入した場合。
| 満期時の原資産価格 | オプションの行使 | 損益 |
|---|---|---|
| 80円 | 行使しない | −10円(プレミアム損) |
| 100円 | 行使しない(損益ゼロ) | −10円 |
| 110円 | 行使する | 0円(ブレークイーブン) |
| 130円 | 行使する | +20円 |
graph LR
A[原資産価格↑] --> B{行使価格を上回るか}
B -->|はい| C[コール行使<br>差額が利益]
B -->|いいえ| D[権利放棄<br>プレミアム分が損失]
損益図(ロングコール)
- 価格が低い領域:損失はプレミアムに限定(最大損失 = プレミアム)
- 価格が行使価格+プレミアムを超えた領域:利益が無限に増加
プットオプション(売る権利)の損益
行使価格100円のプットオプションを、プレミアム10円で購入した場合。
| 満期時の原資産価格 | オプションの行使 | 損益 |
|---|---|---|
| 120円 | 行使しない | −10円 |
| 100円 | 行使しない | −10円 |
| 90円 | 行使する | 0円(ブレークイーブン) |
| 70円 | 行使する | +20円 |
ポイント:プットは原資産価格が下がるほど利益が増える。価格下落リスクのヘッジに使われる。
graph TD
A[ロングコール<br>買う権利の購入] --> B[原資産↑で利益<br>↓でも損失はプレミアムのみ]
C[ロングプット<br>売る権利の購入] --> D[原資産↓で利益<br>↑でも損失はプレミアムのみ]
E[ショートコール<br>買う権利の売却] --> F[最大利益=プレミアム<br>損失は無限大]
G[ショートプット<br>売る権利の売却] --> H[最大利益=プレミアム<br>損失は大きい]
スワップ取引(Swaps)
定義
将来の一定期間にわたって、2者間でキャッシュフローを交換する取引です。
金利スワップ
固定金利と変動金利を交換します。
graph LR
A[企業A<br>変動金利で借入] -->|変動金利を支払い| C[スワップ取引]
C -->|固定金利を受取| A
B[カウンターパーティ] -->|固定金利を支払い| C
C -->|変動金利を受取| B
A --> D[実質的に固定金利負担<br>金利変動リスクをヘッジ]
通貨スワップ
異なる通貨のキャッシュフローを交換します。
- 例:日本企業がドル建て債券を発行し、円建てを希望する場合
- 円→ドル、ドル→円のキャッシュフローを相互交換
ヘッジ目的と投機目的
| 目的 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ヘッジ | リスク回避・損失の限定 | 輸出企業が為替リスクをカバー |
| 投機 | 価格変動で利益を狙う | 価格上昇を予測して先物を買う |
| 裁定 | 価格差を利用した無リスク利益 | 同一商品の市場間価格差を利用 |
試験での出題傾向
診断士試験でのデリバティブ出題は主に:
- 用語の定義:「コールオプションとは何か」「スワップとは何か」
- 損益の方向性:「原資産価格が上昇したとき、ロングコールの損益はどうなるか」
- ヘッジ手段の選択:「価格下落リスクをヘッジするために購入すべきオプションはどれか」→プットオプションの買い
- オプションと先物の違い:先物は義務、オプションは権利
毎年1問程度出題されます。特にオプションの損益方向性は確実に取れるようにしてください。
よくある疑問
Q. 先物とオプションの最大の違いは?
先物は「権利と義務」で、どちらの当事者も必ず決済しなければなりません。オプションは「権利のみ」で、買い手は不利な場合に権利を放棄できます。この「権利放棄できる」分だけプレミアム(権利料)を支払います。
Q. プレミアムとは何に対する対価か?
「不利な場合に権利を放棄できる」という選択肢の価値です。コールオプションの買い手は「株価がどれだけ下がっても損失はプレミアムのみ」という保護を買っています。
Q. 中小企業はデリバティブをどう使うか?
主にヘッジ目的です。原材料価格の上昇リスクには先物・コールオプション、為替リスクには先物予約・通貨オプション、変動金利の上昇リスクには金利スワップを活用します。
まとめ
| 種類 | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|
| 先物 | 将来の売買価格を今日決める | 義務、損益は対称的 |
| コールオプション | 将来「買う権利」を今日買う | 権利放棄可、損失はプレミアムに限定 |
| プットオプション | 将来「売る権利」を今日買う | 権利放棄可、損失はプレミアムに限定 |
| スワップ | キャッシュフローを交換する | 金利スワップ・通貨スワップ |
関連:為替リスクヘッジ