🎓 レベル:発展 | 重要度:A(必須)
要点(BLUF)
- ガウス通信路 ( は加法ガウスノイズ)。入力に電力制約 を課したときの容量は
- 容量を達成する最適入力はガウス分布(微分エントロピー の「分散固定でガウスが最大」が効く)。
- 帯域 Hz を含めると シャノン・ハートレーの定理 bit/秒。Wi-Fi も携帯も光通信も、この式が速度の上限を決めます。
1. 導出:容量は微分エントロピーの差
容量は相互情報量の最大化 。連続なので
( で を固定すると のばらつきはノイズ そのものなので )。 は固定。残るは の最大化です。 の分散は で、分散が固定なら はガウスで最大(微分エントロピー)。 がガウスになるのは がガウスのとき。よって
「信号パワー をノイズパワー で割った比(SNR)」だけで決まります。
2. シャノン・ハートレーの定理
帯域 Hz の連続時間通信路は、標本化定理により毎秒 回の独立な使用に相当します。1回あたり容量 なので、毎秒では
ここで は信号対雑音電力比。帯域を広げるか SNR を上げれば速度が上がる——ただし SNR は対数で効くので、SNR を10倍にしても容量は bit/使用しか増えません。帯域の方が線形に効くので、広帯域化(5G のミリ波など)が速度向上の主役になります。
3. コード:ガウス容量と SNR(底2, bit)
SNR を変えて容量 を計算し、帯域込みのビット毎秒も求めます。
import numpy as np
# ガウス通信路 Y=X+Z, Z~N(0,N), 電力制約 E[X^2]<=P
# 容量 C=0.5 log2(1+P/N) bit/使用 (SNR=P/N)
print("ガウス通信路の容量 C=0.5 log2(1+SNR) bit/通信路使用")
for snr_db in [0,3,10,20]:
snr=10**(snr_db/10)
C=0.5*np.log2(1+snr)
print(f" SNR={snr_db:>3} dB (={snr:7.3f}): C={C:.4f} bit/使用")
print("-"*56)
# シャノン・ハートレー:帯域 B Hz では C=B log2(1+SNR) bit/秒
B=1e6 # 1 MHz
for snr_db in [10,20,30]:
snr=10**(snr_db/10)
C=B*np.log2(1+snr)
print(f" B={B:.0e}Hz, SNR={snr_db}dB: C={C/1e6:.3f} Mbit/s")
出力:
ガウス通信路の容量 C=0.5 log2(1+SNR) bit/通信路使用
SNR= 0 dB (= 1.000): C=0.5000 bit/使用
SNR= 3 dB (= 1.995): C=0.7913 bit/使用
SNR= 10 dB (= 10.000): C=1.7297 bit/使用
SNR= 20 dB (=100.000): C=3.3291 bit/使用
--------------------------------------------------------
B=1e+06Hz, SNR=10dB: C=3.459 Mbit/s
B=1e+06Hz, SNR=20dB: C=6.658 Mbit/s
B=1e+06Hz, SNR=30dB: C=9.967 Mbit/s
出力の意味:SNR が dB(信号とノイズが等しい)でも容量 bit/使用は残り、SNR を上げると容量が増えますが伸びは緩やか—— dB(10倍)で 、 dB(100倍)で bit/使用と、SNR を10倍にするごとに約 1.66 bit しか増えない()。これが「電力を10倍注いでも速度は1.6倍少々」という対数の壁です。一方、帯域 は線形に効くので、 MHz・SNR dB で Mbit/s。速度を稼ぐには電力より帯域、という現代無線設計の指針がそのまま出ています。
4. 数式の直観的意味
ガウス容量は「ノイズの球にどれだけ信号の球を詰められるか」の連続版です。受信信号 は分散 の球に収まり、各送信点はノイズで半径 の球にぼやける。区別できる送信点の数は体積比 で、対数を取って で割ると 。離散の球充填(誤り検出と訂正の基礎)とまったく同じ発想です。SNR が対数で効くのは「区別可能な振幅レベルの数」が に比例し、その対数が bit 数になるから。この式は、通信路符号化定理(シャノンの通信路符号化定理)の連続版として、実在する通信システムの速度限界を直接与えます。
⚠️ よくある誤解
- 「電力を上げれば速度は比例して上がる」ではない:SNR は対数で効きます。電力10倍でも容量は bit/使用しか増えません。帯域は線形。
- 「最適入力は何でもよい」ではない:容量達成には入力をガウス分布にする必要があります(分散固定で 最大)。
- 「ノイズがガウスでなくても同じ式」ではない:この式は加法ガウスノイズの場合。同じ分散ならガウスノイズが最悪(容量最小)なので、 は他のノイズに対する下界になります。
- 「帯域を無限に広げれば容量も無限」ではない: では ( は雑音電力密度)に飽和します。広帯域では SNR が下がるため。
対応シミュレーション
- 本文のコードでガウス容量と SNR・帯域の効き方を実証済み。
関連ノート
- 微分エントロピー(前提・分散固定でガウスが最大)
- 通信路容量(前提・離散の容量の連続版)
- シャノンの通信路符号化定理(容量の達成可能性)
- レート歪み理論入門(次のトピック・歪み圧縮)
- 第6章 連続情報量とレート歪み 目次
- 情報理論 全体目次