🎓 レベル:発展 | 重要度:A(必須)
📎 前提:グラフの表現・次数中心性と次数分布 | 関連:ランダムウォークと拡散の数理・グラフラプラシアンとスペクトル
要点(BLUF)
- 固有ベクトル中心性:自分の重要度=隣人の重要度の和、という再帰を解く。答えは隣接行列の主固有ベクトル。
- べき乗法: を繰り返して正規化すると主固有ベクトルに収束する。Google の PageRank の原型。
- PageRank:有向グラフ+ランダムジャンプ(減衰因子 )で、行き止まりや孤立を回避した安定版。
概念:重要さは伝播する
次数中心性は「友達の数」でした。でも、フォロワー1万人のうち全員が無名アカウントの人と、影響力者10人にフォローされる人 — どちらが重要でしょう。固有ベクトル中心性は「重要な相手とつながるほど自分も重要」という再帰でこれを捉えます。この自己言及をきれいに解くと、線形代数(固有値問題)が現れます。土台は統計の固有値分解(グラフラプラシアンとスペクトル 経由で統計へリンク)。
数式による定義
固有ベクトル中心性 は「隣人の中心性の和に比例する」と定義します。
全ノードまとめると、これは固有値方程式そのものです。
すべての成分が非負である解は、ペロン・フロベニウスの定理により最大固有値 に対応する固有ベクトル(主固有ベクトル)だけ。これを各ノードの中心性とします。
PageRank は有向グラフ向けの改良で、確率 (≈0.85)でリンクをたどり、確率 でランダムに別ページへジャンプします。
ランダムジャンプ項のおかげで、行き止まり(出次数0)や孤立部分があっても破綻せず、必ず一意の定常分布に収束します。これはマルコフ連鎖の定常分布で、ランダムウォークと拡散の数理 と地続きです。
べき乗法(power iteration)
主固有ベクトルは、適当な初期ベクトルに を繰り返し掛けて正規化するだけで求まります。
これは「重要度を1ホップずつ伝播させる」操作の反復で、 の固有ベクトル方向に収束します。
コードで確認
import networkx as nx
import numpy as np
G = nx.karate_club_graph()
ev = nx.eigenvector_centrality(G, max_iter=1000)
pr = nx.pagerank(G, alpha=0.85)
te = max(ev, key=ev.get)
tp = max(pr, key=pr.get)
print("固有ベクトル中心性 最大:", te, "=", round(ev[te],3))
print("PageRank 最大:", tp, "=", round(pr[tp],3))
print("PageRank の総和(=1):", round(sum(pr.values()), 6))
# べき乗法を手で回して主固有ベクトルを再現
A = nx.to_numpy_array(G)
x = np.ones(A.shape[0])
for _ in range(1000):
x = A @ x
x = x / np.linalg.norm(x)
print("べき乗法の最大成分ノード:", int(np.argmax(x)))
実行結果:
固有ベクトル中心性 最大: 33 = 0.373
PageRank 最大: 33 = 0.097
PageRank の総和(=1): 1.0
べき乗法の最大成分ノード: 33
固有ベクトル中心性も PageRank も最大はノード33。自前のべき乗法でも主固有ベクトルの最大成分が33になり、networkx の結果と一致しました。PageRank の総和が1(確率分布)であることも確認できます。
数式の直観的意味
は「重要度を隣に配り続けると、向きは変わらず大きさだけ 倍になる安定状態」を表します。べき乗法はその安定状態を、毎ステップ「隣から重要度を集めて正規化」することで探り当てる作業。PageRank の ジャンプは「たまにテレポートする酔歩者」で、これがあるおかげでネットワークのどこにいても抜け出せ、定常分布が一意に定まります。要するに PageRank = ランダムウォーカーが各ノードに滞在する確率です。
⚠️ よくある誤解・落とし穴
- 無向グラフでの固有ベクトル中心性は次数と相関するが別物:正則グラフでは一致するが、一般には「相手の質」を反映してずれます。
- 有向グラフの固有ベクトル中心性は発散・ゼロ化しやすい:行き止まりや非強連結で破綻する。だから PageRank のジャンプ項が必要。
- を1に近づけすぎると収束が遅く不安定:0.85 という値は経験的なバランス点です。
対応シミュレーション
本文のコードがそのまま検証用です。ランダムウォークとの等価性は ランダムウォークと拡散の数理。
関連
- 前提:グラフの表現・次数中心性と次数分布
- ランダムウォーク版:ランダムウォークと拡散の数理
- 固有値の意味(統計へリンク):グラフラプラシアンとスペクトル
- 上位ハブ:ネットワーク指標 目次