純資産とは「資産から負債を引いた残り」で、株主が出資したお金と、会社が稼いで蓄積した利益の合計です。株主資本等変動計算書は、その純資産が1年間でどう動いたかを科目別に示す財務諸表です。
純資産の部とは何か
B/Sの右側(貸方)は負債と純資産に分かれます。純資産は「株主から預かったお金+これまでの利益の蓄積」であり、返済義務のない資金です。
純資産の構造
graph TD
A[純資産の部] --> B[株主資本]
A --> C[評価・換算差額等]
A --> D[新株予約権]
A --> E[非支配株主持分]
B --> B1[資本金]
B --> B2[資本剰余金]
B --> B3[利益剰余金]
B --> B4[自己株式 △マイナス]
B2 --> B21[資本準備金]
B2 --> B22[その他資本剰余金]
B3 --> B31[利益準備金]
B3 --> B32[その他利益剰余金]
B32 --> B321[別途積立金]
B32 --> B322[繰越利益剰余金]
C --> C1[その他有価証券評価差額金]
C --> C2[繰延ヘッジ損益]
各科目の定義
| 科目 | 定義 | 増減のタイミング |
|---|---|---|
| 資本金 | 株主が払い込んだ出資のうち、登記された金額 | 増資・減資時 |
| 資本準備金 | 株式発行価額のうち資本金に組み入れなかった部分(払込剰余金) | 増資時 |
| その他資本剰余金 | 自己株式処分差益など | 自己株式の売却時 |
| 利益準備金 | 会社法による積立義務(配当の1/10を資本準備金と合わせて資本金の1/4まで) | 配当時(強制) |
| 別途積立金 | 任意で積み立てた利益の留保 | 株主総会決議 |
| 繰越利益剰余金 | 毎期の純利益の累積(配当・積立後の残り) | 毎期 |
| 自己株式 | 会社が買い戻した自社株。純資産のマイナス項目 | 自己株買取・消却時 |
重要: 自己株式は資産ではなく純資産のマイナスとして計上します。試験でよく問われる引っかけです。
評価・換算差額等
その他有価証券(売買目的でも満期保有目的でもない有価証券)を時価評価したときの差額を、損益ではなく純資産に直接計上するもの。損益計算書を経由しない点がポイントです。
株主資本等変動計算書とは
B/SのスナップショットとP/Lのフローを「つなぐ橋」の役割を持つ財務諸表です。純資産の各項目が期首から期末にかけてどう変動したかを、変動理由ごとに列挙します。
flowchart LR
subgraph 期首B/S
A1[純資産合計\n期首残高]
end
subgraph 株主資本等変動計算書
B1[当期純利益\n→繰越利益剰余金増]
B2[配当\n→繰越利益剰余金減]
B3[増資\n→資本金・資本剰余金増]
B4[自己株式取得\n→自己株式増(マイナス)]
B5[その他有価証券評価差額金変動]
end
subgraph 期末B/S
C1[純資産合計\n期末残高]
end
A1 --> B1
A1 --> B2
A1 --> B3
A1 --> B4
A1 --> B5
B1 --> C1
B2 --> C1
B3 --> C1
B4 --> C1
B5 --> C1
変動計算書の読み方(縦×横の表形式)
変動計算書は横軸に科目(資本金・資本準備金・繰越利益剰余金…)、縦軸に変動事由(配当・当期純利益・増資…)を並べた行列形式で記載されます。
資本金 資本準備金 繰越利益剰余金 自己株式 純資産合計
当期首残高 1,000 500 200 △50 1,650
当期純利益 100 100
配当 △50 △50
自己株式取得 △100 △100
当期末残高 1,000 500 250 △150 1,600
試験での出題パターン
頻出論点1:自己株式の扱い
- 自己株式を取得すると純資産が減る(△計上)
- 自己株式を消却すると自己株式(マイナス)と資本金等を相殺→純資産の内訳が変わるが合計は変わらない
- 自己株式を売却したとき、売却価額と取得原価の差額は「その他資本剰余金」に計上(損益計算書には計上しない)
頻出論点2:配当の会計処理
配当時は繰越利益剰余金が減り、かつ利益準備金の積立が強制されます。
(借)繰越利益剰余金 110 (貸)未払配当金 100
利益準備金 10
積立額:配当額の1/10(資本準備金と資本金の合算が資本金の1/4に達するまで)
頻出論点3:その他有価証券評価差額金
評価益が出た場合でも損益計算書に計上せず、税効果を控除した純額で純資産に直接計上します。
よくある疑問
Q. 資本準備金と利益準備金の違いは? A. 出どころが違います。資本準備金は「出資」から来る(株主がお金を入れた時)、利益準備金は「利益」から来る(儲けた時)。名前が似ていますが別物です。
Q. 株主資本等変動計算書は毎年作らないといけないの? A. 会社法により、すべての会社に作成義務があります。個人事業主は不要。
Q. のれんは純資産に影響する? A. 間接的に影響します。連結会計でのれんが発生するとB/S資産が増えますが、純資産の部の科目は変わりません(連結B/Sは資産側で調整)。
Q. 繰越利益剰余金がマイナスになったら? A. 累積赤字(繰越欠損金)の状態。純資産合計がマイナスになると「債務超過」です。
まとめ
- 純資産=株主資本+評価換算差額等(±)+新株予約権+非支配株主持分
- 株主資本の中心は「資本金・資本剰余金(出資由来)」と「利益剰余金(利益由来)」
- 自己株式は純資産のマイナスとして表示(資産ではない)
- 株主資本等変動計算書は純資産の変動を1期間で科目別×事由別に示す
- 試験では自己株式の処理・配当時の利益準備金積立・評価差額金の扱いが頻出