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税効果会計とは、会計上の利益と税務上の課税所得のズレを調整し、P/Lに計上する法人税等が当期の利益に合理的に対応するようにする会計処理です。「繰延税金資産」と「繰延税金負債」の2つが産み出されます。

なぜ税効果会計が必要か

会計(企業会計基準)と税務(法人税法)はルールが別々に存在します。両者の収益・費用の認識タイミングが違うため、同じ取引でも「会計上の利益」と「税務上の課税所得」がズレます。

flowchart TD
    A[税引前当期純利益\n会計上の利益] -->|税効果調整なし| B[法人税等 = 課税所得×税率]
    B -->|ズレが大きいと| C[P/L上の利益と\n法人税等が対応しない\n→財務諸表が歪む]
    A -->|税効果会計適用| D[法人税等調整額を計上]
    D --> E[P/L上の利益と\n法人税等が合理的に対応]

例: 会計上の利益1,000、法人税率30%なら法人税は300のはず。しかし税務上の課税所得が1,200(会計より200多い)なら、実際の納税額は360。税効果会計なしだと「利益1,000に対して税金360」という不均衡が生じます。

一時差異と永久差異

差異には2種類あります。

graph TD
    A[会計と税務のズレ] --> B[一時差異\nTemporary Difference]
    A --> C[永久差異\nPermanent Difference]

    B --> B1[将来減算一時差異\n→繰延税金資産]
    B --> B2[将来加算一時差異\n→繰延税金負債]

    C --> C1[将来に解消しない\n→税効果会計の対象外]
    C1 --> C2[例:交際費の損金不算入\n受取配当金の益金不算入]

一時差異(Temporary Difference)

時期のズレ。将来いつかは解消します。

種類内容計上先
将来減算一時差異今期は税務上の所得が会計より多い(多く税金を払った)→将来に戻ってくる繰延税金資産
将来加算一時差異今期は税務上の所得が会計より少ない(税金の繰り延べ)→将来に追加課税繰延税金負債

永久差異(Permanent Difference)

将来にわたって解消しない差異。税効果会計の対象外。

内容
交際費の損金不算入会計上は費用だが、税務上は一部しか損金算入できない(永遠に戻ってこない)
受取配当金の益金不算入税務上は収益に含めないが会計上は収益(永遠に課税されない)
罰金・過料税務上一切損金不算入

引っかけポイント: 「交際費の損金不算入は一時差異か」→ 永久差異。将来解消しないので繰延税金資産は生じない。

繰延税金資産・繰延税金負債の計算

flowchart LR
    A[将来減算一時差異\n×法定実効税率] --> B[繰延税金資産\nB/S 資産の部]
    C[将来加算一時差異\n×法定実効税率] --> D[繰延税金負債\nB/S 負債の部]

    B --> E[将来に差異が解消\n→繰延税金資産の取崩\n→税金の減少]
    D --> F[将来に差異が解消\n→繰延税金負債の取崩\n→税金の増加]

計算例:将来減算一時差異

状況: 引当金繰入100を会計上計上したが、税務上は損金不算入(将来、実際の支出が発生した期に損金算入される)。法定実効税率30%。

将来減算一時差異:100
繰延税金資産:100 × 30% = 30

【仕訳】
(借)繰延税金資産 30  (貸)法人税等調整額 30

→ P/Lに「法人税等調整額 △30」が計上され、法人税等負担が実効ベースに近づく

計算例:将来加算一時差異

状況: 圧縮積立金(固定資産の圧縮記帳)により、税務上は課税が繰り延べられた差異150。法定実効税率30%。

将来加算一時差異:150
繰延税金負債:150 × 30% = 45

【仕訳】
(借)法人税等調整額 45  (貸)繰延税金負債 45

法定実効税率

実際に企業が負担する税率(法人税+地方法人税+住民税+事業税を加味した総合的な税率)。

法定実効税率 ≈ 30〜35%程度(要最新確認)

試験では税率は問題文に与えられます。「法定実効税率を使って繰延税金資産を計算せよ」という形式。

P/Lへの影響:法人税等調整額

税効果会計の計上はP/Lに「法人税等調整額」という科目で反映されます。

当期純利益
= 税引前当期純利益 − 法人税等(当期納税額) ± 法人税等調整額
場面法人税等調整額の符号効果
繰延税金資産の計上(将来減算)マイナス(P/Lを減らす)今期の税金負担を軽減して見せる
繰延税金負債の計上(将来加算)プラス(P/Lを増やす)今期の税金負担を重くして見せる
flowchart TD
    A[税引前当期純利益 1,000] --> B[法人税等\n実際納税額 360]
    B --> C{税効果調整}
    C --> D[法人税等調整額 △60\n=繰延税金資産 60の計上]
    A --> E[当期純利益\n= 1,000 − 360 + 60 = 700]
    note1["税効果なしだと 1,000−360=640\n税効果ありだと 1,000−300=700 に近づく"] --> E

繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は「将来に税金が節約できる」という期待値です。将来に十分な課税所得がなければ実現しないため、回収可能性の評価が必要です。

試験での出題パターン

パターン1:一時差異か永久差異かの判定

交際費・受取配当・引当金・減価償却の超過額などを材料に判定させる問題。

パターン2:繰延税金資産・負債の計算

一時差異の金額と法定実効税率を与え、繰延税金資産または負債の金額を計算させる問題。

パターン3:P/Lへの影響

繰延税金資産の計上が当期純利益にどう影響するかを問う問題。

よくある疑問

Q. 中小企業は税効果会計を適用しなくてよい? A. 上場企業などは強制適用ですが、非公開の中小企業は任意適用です。ただし試験では「税効果会計を適用する場合」という前提で問われます。

Q. 繰延税金資産は本当に「資産」なの? A. 「将来、税金の支払いを減らせる権利」なので資産です。ただし将来の課税所得がないと実現しないため、回収可能性の評価が必要という点で通常の資産とは性格が違います。

Q. 将来減算と将来加算、どっちが繰延税金資産でどっちが負債か混乱する A. 「将来減算」→ 将来、課税所得が減る → 将来の税金が減る → 今もらった恩恵(資産)。「将来加算」→ 将来、課税所得が増える → 将来の税金が増える → 今の先送り(負債)

Q. 一時差異の「解消」とはどういう意味? A. 差異が生じた原因が消えることです。引当金を計上した翌期に実際に支出が発生すると、その時点で「差異が解消」され、繰延税金資産を取り崩します。

まとめ

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