連結財務諸表とは、親会社と子会社をひとつの経済的実体とみなして作成した財務諸表です。企業グループ全体の実態を把握するために必要で、上場企業には作成義務があります。
なぜ連結財務諸表が必要か
単独(個別)財務諸表だけでは企業グループの実態が見えません。例えば不採算事業を子会社に移してしまえば、親会社の個別財務諸表は良く見えても、グループ全体では損失を抱えているかもしれません。
graph TD
A[親会社A\n個別P/L:利益500] --> B[子会社B\n個別P/L:損失300]
A --> C[子会社C\n個別P/L:損失100]
D[連結P/L:利益100\n= 500 - 300 - 100\nグループ実態が反映される]
A -.->|合算・調整| D
B -.->|合算・調整| D
C -.->|合算・調整| D
連結範囲の決定:支配力基準
「どの会社を連結に含めるか」は支配力基準で判断します。
flowchart TD
A[投資先会社] --> B{議決権比率が\n過半数 >50%?}
B -->|Yes| C[子会社\n→連結対象]
B -->|No| D{40〜50%だが\n実質支配?}
D -->|Yes\n役員派遣・資金依存等| C
D -->|No| E{20〜50%の\n影響力?}
E -->|Yes| F[関連会社\n→持分法適用]
E -->|No| G[その他の投資\n→投資有価証券として計上]
| 持株比率の目安 | 区分 | 処理方法 |
|---|---|---|
| 50%超 | 子会社 | 連結(全額取込) |
| 20%以上50%以下 | 関連会社 | 持分法(持分相当額のみ) |
| 20%未満 | 単なる投資 | 投資有価証券 |
注意: 持株比率50%以下でも実質支配(役員の過半数を派遣している等)なら子会社とみなします(支配力基準)。
連結の基本手順
連結財務諸表は「各社の財務諸表を単純合算 → 調整仕訳(連結修正仕訳)を行う」という流れです。
flowchart TD
A[親会社の個別B/S・P/L] --> C[単純合算]
B[子会社の個別B/S・P/L] --> C
C --> D[連結修正仕訳]
D --> D1[資本連結\n親の投資額と子の純資産を相殺]
D --> D2[内部取引消去\nグループ内取引を除去]
D --> D3[未実現利益消去\nグループ内販売の利益を除去]
D1 --> E[連結財務諸表]
D2 --> E
D3 --> E
Step1:資本連結
親会社が子会社に投資した「投資」と、子会社の「純資産(資本)」を相殺消去します。
ケース:親会社が子会社の100%株式を800で取得。取得日の子会社純資産700。
(借)資本金 500 (貸)子会社株式 800
資本剰余金 100
利益剰余金 100
のれん 100
のれん = 取得価額 − 取得した純資産の公正価値 = 800 − 700 = 100
のれんは「超過収益力・ブランド・顧客基盤」などの対価です。
Step2:のれんの処理
| 日本基準 | のれんは20年以内で定額法償却(要最新確認) |
|---|---|
| IFRS | のれんは償却なし。毎期減損テスト |
診断士試験は日本基準で出題されます。のれんの20年以内償却を押さえてください。
(借)のれん償却 ×× (貸)のれん ××
Step3:内部取引・未実現利益の消去
グループ内の取引は「外部に対する取引」ではないため消去します。
flowchart LR
A[親会社] -->|在庫を原価100で製造| B[子会社へ150で販売]
B -->|期末に全量在庫として保有| C[連結B/S]
D[消去前\n売上150・売上原価100が合算] --> E[消去後\n内部売上150を消去\n未実現利益50も消去]
未実現利益の消去仕訳(期末在庫に含まれる場合):
(借)売上原価 50 (貸)棚卸資産 50
グループ外に販売された時点で「実現」し、消去は不要になります。
Step4:非支配株主持分
子会社が100%子会社でない場合(部分所有)、親会社以外の株主(少数株主=非支配株主)の持分を別途表示します。
【例】子会社純資産700、親会社持株80%、非支配株主20%
非支配株主持分 = 700 × 20% = 140
→ B/S純資産の部に「非支配株主持分 140」として表示
持分法との違い
関連会社(持株20〜50%)は持分法で処理します。連結とは異なり、資産・負債を全部取込みません。
graph LR
A[連結] --> A1[子会社の資産・負債・収益・費用を\n全額取込み→内部取引消去]
B[持分法] --> B1[投資額に持分比率×当期純損益を加減するだけ\n→B/Sは投資勘定のみ変動]
持分法の仕訳(関連会社の当期純利益200、持株30%の場合):
(借)関連会社株式 60 (貸)持分法による投資利益 60
| 比較項目 | 連結 | 持分法 |
|---|---|---|
| 対象 | 子会社(50%超) | 関連会社(20〜50%) |
| B/Sへの影響 | 資産・負債全部取込み | 投資勘定のみ変動 |
| P/Lへの影響 | 収益・費用全部取込み | 「持分法による投資損益」1行 |
| のれん | 資産計上・償却 | 投資額に含まれる形で処理 |
試験での出題パターン
パターン1:のれんの計算
取得価額と取得日の子会社純資産(識別可能純資産)から、のれんを計算させる問題。
パターン2:連結範囲の判定
持株比率や実質支配状況から、子会社・関連会社・その他に分類させる問題。
パターン3:未実現利益消去の影響
グループ内取引の未実現利益が連結損益にどう影響するかを問う問題。
パターン4:持分法の仕訳
関連会社の損益を持分法で処理したときの仕訳を問う問題。
よくある疑問
Q. のれんがマイナスになることはあるの? A. あります。「負のれん」といい、買収価額が被取得企業の純資産より低い場合に発生します。日本基準では負のれん発生益として、発生した年度に一括して特別利益に計上します。
Q. 連結と個別、どちらで税金を計算する? A. 税金は個別会社単位で計算します(連結納税制度を採用している場合は例外)。連結財務諸表は開示目的の財務報告です。
Q. 子会社が海外にある場合は? A. 外貨建ての財務諸表を円換算して取込みます(在外子会社の換算)。換算差額は「為替換算調整勘定」として純資産に計上されます。診断士試験では換算の詳細より概念理解が中心です。
Q. 持分法と連結の違いを一言で? A. 連結は「全部取込み」、持分法は「1行取込み」。
まとめ
- 連結財務諸表:企業グループを一つの経済的実体として表示
- 連結範囲:支配力基準(50%超=子会社、20〜50%=持分法適用関連会社)
- 連結手順:合算 → 資本連結 → 内部取引消去 → 未実現利益消去
- のれん=取得額−取得純資産の公正価値。20年以内償却(日本基準)
- 非支配株主持分:子会社を部分所有する場合の少数株主の持分
- 持分法:関連会社への持分相当損益を1行計上する簡便法