効率性分析:各種回転率とデュポン分解
要点(BLUF)
効率性分析とは「資産をどれだけ売上に変換できたか」を測る指標群です。総資産回転率・売上債権回転率・棚卸資産回転率・固定資産回転率の4つが試験の核心で、デュポン分解でROAに接続されます。回転率が高い = 資産を効率よく使っていると読みます。
1. 各回転率の定義と計算式
回転率の共通構造は「売上高 ÷ 資産項目」です。分子は常に売上高、分母が何かで「何の効率を測るか」が変わります。
| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| 総資産回転率 | 売上高 ÷ 総資産 | 全資産を1年に何回売上に変換したか |
| 売上債権回転率 | 売上高 ÷ 売上債権 | 売掛金・受取手形をどれだけ早く回収しているか |
| 棚卸資産回転率 | 売上高 ÷ 棚卸資産 | 在庫をどれだけ素早く売り切っているか |
| 固定資産回転率 | 売上高 ÷ 固定資産 | 設備・建物をどれだけ有効に使っているか |
単位(回転数)
- 総資産回転率が 2.0 回 = 1年間に総資産の2倍の売上を生み出した
- 小売業は回転率が高く(5〜10回)、重工業・装置産業は低い(0.5〜1.5回)傾向
2. 回転率 ⇔ 回転期間(日数)の変換
回転率は「年間何回転か」、回転期間は「1回転に何日かかるか」です。
例:売上債権回転率 = 10回 → 回転期間 = 365 ÷ 10 = 36.5日(約37日で代金回収)
試験の引っかけ:回転率が高い=回転期間が短い(良い方向)。逆に「回転期間が長くなった」は悪化のサインです。
3. B/S・P/L と各指標の対応
graph LR
PL["P/L\n売上高(分子)"] --> R1["総資産回転率"]
PL --> R2["売上債権回転率"]
PL --> R3["棚卸資産回転率"]
PL --> R4["固定資産回転率"]
BS_A["B/S(資産側)\n総資産(分母)"] --> R1
BS_B["B/S(流動資産)\n売上債権(分母)"] --> R2
BS_C["B/S(流動資産)\n棚卸資産(分母)"] --> R3
BS_D["B/S(固定資産)\n有形固定資産(分母)"] --> R4
R1 --> DU["デュポン分解\nROA接続"]
R2 --> CC["キャッシュ\nサイクル管理"]
R3 --> CC
R4 --> CA["設備稼働率\n分析"]
style PL fill:#d4edda
style BS_A fill:#cce5ff
style BS_B fill:#cce5ff
style BS_C fill:#cce5ff
style BS_D fill:#cce5ff
4. デュポン分解:ROAへの接続
ROA(総資産利益率)は収益性と効率性の積に分解できます。
graph TD
ROA["ROA\n(総資産利益率)"]
ROA --> P["売上高営業利益率\n(収益性)"]
ROA --> T["総資産回転率\n(効率性)"]
P --> CM["コスト管理\n粗利改善"]
T --> IM["資産管理\n在庫・債権削減"]
style ROA fill:#fff3cd
style P fill:#d4edda
style T fill:#cce5ff
ROAを改善するには「利益率を上げる」か「回転率を上げる」かの2方向があります。この分解は事例IVで頻出です。
さらにROEへの3分解(デュポンシステム):
5. 業種別の回転率の目安
| 業種 | 総資産回転率 | 棚卸資産回転率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 小売業 | 1.5〜2.5回 | 8〜15回 | 在庫回転が命 |
| 製造業 | 0.8〜1.5回 | 4〜8回 | 設備投資大、回転は低め |
| 装置産業(半導体等) | 0.3〜0.8回 | 3〜6回 | 巨大な固定資産で回転率低 |
| サービス業 | 1.0〜2.0回 | N/A(在庫なし) | 棚卸資産ゼロが多い |
試験の注意:業種比較問題では、製造業 < 小売業の順で回転率が高くなることを押さえる。
6. 具体例:数値計算
A社(製造業)の財務データ:
- 売上高:1,200万円
- 総資産:800万円
- 売上債権:120万円
- 棚卸資産:150万円
計算:
- 総資産回転率 = 1,200 ÷ 800 = 1.5回
- 売上債権回転率 = 1,200 ÷ 120 = 10回(回転期間:36.5日)
- 棚卸資産回転率 = 1,200 ÷ 150 = 8回(回転期間:45.6日)
よくある疑問
Q. 回転率が高いと「必ず良い」のか? A. 売上債権回転率が極端に高い場合は、回収が早い代わりに「現金払い強制により顧客を失っている」可能性もあります。コンテキストが重要です。ただし試験では基本的に「高い=良い」として扱います。
Q. 棚卸資産回転率の分母は「棚卸資産」か「売上原価」か? A. 正確な学術定義では「売上原価 ÷ 棚卸資産」ですが、診断士試験では「売上高 ÷ 棚卸資産」で統一されています。問題文の指示に従うことが最優先です。
Q. 固定資産回転率の分母は「固定資産」全体?「有形固定資産」だけ? A. 試験では「有形固定資産回転率」として出題されることが多いです。問題文を必ず確認してください。
Q. デュポン分解はROAとROEのどちらで使う? A. どちらでも使います。一次試験ではROAへの2分解(利益率×回転率)、二次試験事例IVではROEへの3分解(利益率×回転率×レバレッジ)が出題されます。
まとめ
- 効率性分析の核心は「売上高 ÷ 資産項目」という共通構造
- 回転率↑ = 回転期間↓ = 資産を効率よく使っている
- デュポン分解:ROA = 売上高利益率(収益性) × 総資産回転率(効率性)
- 業種によって基準値が大きく異なるため、同業他社比較が基本
関連ノート
- 収益性分析(収益性分析:ROA・ROE・利益率)
- 安全性分析(安全性分析:流動比率・自己資本比率)
- BS・PL構造(B/S・P/Lの構造)
- CVP分析・損益分岐点(CVP分析:損益分岐点)