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結論から言うと

配当政策とは「利益をどのように株主へ還元するか」を決める経営判断です。完全市場(MM理論の前提)では配当は企業価値に影響しませんが、現実では配当政策が株主の行動や企業の資金調達コストに影響します。試験では各政策の特徴と計算指標の定義が問われます。


配当とは何か

企業が稼いだ利益の中から、株主へ現金を分配することです。もう一つの還元手段として「自社株買い」があります。

graph TD
    A[純利益] --> B{利益の使い道}
    B --> C[内部留保<br>再投資の原資]
    B --> D[株主還元]
    D --> E[配当]
    D --> F[自社株買い]

配当政策の3つの種類

1. 安定配当政策

利益水準にかかわらず、毎期一定額の配当を払い続ける方針です。

2. 定率配当政策(配当性向一定)

当期純利益の一定比率を常に配当する方針です。

3. 残余配当政策

有利な投資機会に必要な資金を内部留保で賄い、残った余剰分だけを配当する方針です。

graph LR
    A[安定配当<br>一定金額] --> D[株主の安心感↑<br>財務の硬直性↑]
    B[定率配当<br>一定比率] --> E[利益連動<br>配当変動↑]
    C[残余配当<br>余剰分のみ] --> F[投資効率↑<br>配当不安定↑]

MM理論における配当無関係命題

モジリアーニ=ミラーは完全市場の仮定のもとで「配当政策は企業価値に影響しない」と主張しました。

直感的な説明

graph TD
    A[配当100円/株を受取] --> B[株価は100円下落]
    C[配当なし] --> D[株式を100円分売却<br>自家製配当]
    B --> E[最終的な富は同じ]
    D --> E

現実では無関係ではない理由

現実の要因効果
税金(配当課税 vs 値上がり益課税)投資家の選好が変わる
シグナリング効果増配→業績良好のシグナル
エージェンシーコスト経営者の浪費を抑える効果
取引コスト自家製配当に費用がかかる

自社株買いとの比較

自社株買いは、企業が市場から自社の株式を購入することです。配当と似た株主還元手段ですが、性質が異なります。

比較項目配当自社株買い
税務上の扱い配当課税(投資家に課税)キャピタルゲイン課税
経営の柔軟性毎期継続が期待される一時的・機動的
株価への影響権利落ち後に株価低下EPS向上→株価上昇効果
シグナル効果業績への自信株価が割安というシグナル

主要な配当指標の計算式

診断士試験で問われる計算指標です。

1. 配当性向(Payout Ratio)

配当性向=1株当たり配当額1株当たり当期純利益(EPS×100%配当性向 = \frac{1株当たり配当額}{1株当たり当期純利益(EPS)} \times 100\%

「利益のうち何%を配当に回したか」を示します。

2. 配当利回り(Dividend Yield)

配当利回り=1株当たり配当額株価×100%配当利回り = \frac{1株当たり配当額}{株価} \times 100\%

「株価に対して何%の配当を得られるか」を示します。

3. DOE(Dividend on Equity:株主資本配当率)

DOE=1株当たり配当額1株当たり純資産(BPS×100%DOE = \frac{1株当たり配当額}{1株当たり純資産(BPS)} \times 100\%

「株主資本に対して何%の配当を払うか」を示します。配当性向より安定した指標として注目されています。

DOE=配当性向×ROEDOE = 配当性向 \times ROE

この式が試験で問われます。ROEが高い企業ほど、同じDOEでも配当性向が低くて済むことを意味します。


試験での出題パターン

  1. 配当政策の種類の特徴把握:安定・定率・残余の違いを選択肢で問う
  2. MM配当無関係命題の前提条件:「完全市場の仮定」が問われる
  3. 指標の計算:配当性向・配当利回り・DOEの計算
  4. DOE = 配当性向 × ROE の変形:3変数のうち2つから残り1つを求める

よくある疑問

Q. 安定配当と残余配当、どちらが株主に有利か?

単純には決まりません。安定配当は将来収入の予測可能性を重視する株主に有利です。残余配当は投資効率を重視し、理論的には長期的に企業価値を最大化します。株主の属性(機関投資家か個人か)や税務状況によっても選好が変わります。

Q. 増配すると株価が上がる理由は?

完全市場なら影響しないはずですが、現実ではシグナリング効果が働きます。経営者は「将来も増配を維持できる自信がある」ときにしか増配しません。そのため増配は「業績は良好で今後も継続できる」という内部情報のシグナルと市場が解釈するため株価が上がります。

Q. 自社株買いは近年増えているのか?

日本では2010年代以降、コーポレートガバナンス改革の流れで自社株買いが増加しています。ただし具体的な最新動向は要最新確認です。


まとめ

政策特徴現実での採用
安定配当一定金額、株主安心日本企業で多い
定率配当利益連動、公平中程度
残余配当合理的だが不安定少ない

MM理論の「配当無関係命題」は「完全市場という仮定があってこそ成立する」ことを押さえてください。現実の配当政策がなぜ重要かは、完全市場の仮定が崩れるからこそ、という逆算で理解できます。

関連:資本コスト(WACC・CAPM)MM理論・最適資本構成