📊 対象級:4級 ・ 3級 | 重要度:A(頻出)
場合の数・順列・組合せ ── 数え上げの2法則・nPr・nCr・重複組合せ・二項定理
要点(BLUF)
- 数え上げは2法則に還元される:和の法則(排反なら足す)と積の法則(連続して選ぶなら掛ける)。順列も組合せも、もとはこの積の法則の応用。
- 順列 =順序を区別して並べる/組合せ =順序を区別せず選ぶ。両者の差は「並べ替え 通りを1つに潰すか否か」だけ()。
- 二項定理 の係数 が二項係数。これが Phase 3 の二項分布の確率質量関数の主役になる。場合の数は確率(確率の基本(定義・加法定理・乗法定理))の分母・分子を数える道具。
なぜ4級・3級でいきなり「数え方」を学ぶのか。確率はざっくり「(起こってほしい場合の数)÷(全部の場合の数)」で計算するので、その分母・分子を正しく数えられないと確率が出せないからです。
本文
数え上げの2つの法則
すべての場合の数の計算は、つきつめると次の2法則の組み合わせになる。
| 法則 | いつ使う | 操作 | 例 |
|---|---|---|---|
| 和の法則 | 同時には起こらない(排反な)場合分け「AまたはB」 | 各場合の数を足す | 「赤い玉3個 or 青い玉4個から1個」→ 通り |
| 積の法則 | 連続して選ぶ「AかつB」 | 各段階の数を掛ける | 「上着3着 × ズボン4本」のコーデ→ 通り |
判定基準は単純で、「場合分け(または)なら足す」「段階を踏む(かつ)なら掛ける」。順列・組合せはどちらも「段階を踏んで選ぶ」話なので、本質は積の法則。
階乗
個すべてを1列に並べる場合の数を階乗 と書く。
積の法則そのもの:1番目の枠に 通り、2番目に(1個使ったので) 通り…と掛けていくだけ。約束として (理由は後述)。
順列 (順序を区別して並べる)
個の異なるものから 個取り出して一列に並べる場合の数。
要するに「 から始めて1つずつ減らしながら 個だけ掛ける」。例:5人から3人を選んで1位・2位・3位を決める= 通り。順番(誰が1位か)が違えば別物として数える。
組合せ (順序を区別せず選ぶ)
個の異なるものから 個選ぶだけ(並べない)場合の数。 とも書く。
要するに「順列を で割ったもの」。例:5人から3人の委員を選ぶ(順番は無関係)= 通り。メンバーが同じなら順番が違っても同じとして数える。先ほどの順列 をちょうど で割った値になっている。
順列=組合せ × 並べ替えの関係を図にすると、組合せと順列の橋渡しが見える。
flowchart LR
A["n個から<br/>r個選ぶ"] -->|nCr 通り| B["選んだ r個"]
B -->|並べる r! 通り| C["並べた結果<br/>= nPr 通り"]
B -.順番を無視して<br/>1つに潰す.-> A
つまり 順列=組合せ × 並べ替え 、逆に言えば 組合せ=順列 ÷ 。
日常の例:パスワード(順列)とチーム選び(組合せ)
違いがいちばん腹落ちするのは、順番が意味を持つかどうかで考えること。
- 4桁の数字パスワード(0〜9を重複なしで4つ並べる):1234 と 4321 は別のパスワード。順番が命なので順列 。
- 10人から4人のチームを選ぶ:A・B・C・D を選んでも D・C・B・A を選んでも同じチーム。順番は無関係なので組合せ 。
「並べ替えたら別物になる?」→ なるなら順列、ならないなら組合せ、と覚えると間違えにくい。
円順列・重複順列・重複組合せ
| 名称 | 状況 | 公式 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 円順列 | 個を円形に並べる | 回転して同じになる 通りを1つに潰す | |
| 重複順列 | 種から重複を許して 個取り並べる | 毎回 通りから選べる(減らない) | |
| 重複組合せ | 種から重複を許して 個選ぶ(並べない) | 仕切り棒の論法(後述) |
注意:重複組合せは重複順列ではない。 は「並べる(順序あり)」、 は「選ぶ(順序なし)」。混同が頻出。
二項定理
を展開したときの各項の係数が組合せで書ける。
この を二項係数と呼ぶ。要するに「 を展開すると、 の係数はちょうど になる」。 を代入すると重要な恒等式:
(「 個から選ぶ個数 をすべて足すと、各要素を入れる/入れないの 通りに一致する」=部分集合の総数)。この恒等式はスタージェスの公式の導出(度数分布表とヒストグラム ── 階級・相対度数・累積度数とスタージェスの公式)で実際に使った。
パスカルの三角形
二項係数を三角形に並べると、各数が左上+右上の和になる美しい構造(パスカルの三角形)が現れる。
1 ← (a+b)^0
1 1 ← (a+b)^1 の係数
1 2 1 ← (a+b)^2
1 3 3 1 ← (a+b)^3
1 4 6 4 1 ← (a+b)^4
この「左上+右上の和」を式にしたものがパスカルの公式 (導出は「数式の直観的意味」へ)。
試験での問われ方
- 4級:樹形図・数え上げで具体的な場合の数を求める。和の法則/積の法則の使い分け。「同様に確からしい」確率の分母分子を数える前段階。
- 3級:・ の式(例「」「」)を使って確率を計算。二項分布の係数として が登場。
- 発展(3級+〜):円順列・重複順列・重複組合せ・同じものを含む順列。
数式の直観的意味
なぜ か(積の法則からの導出)
個の「枠」を左から順に埋めると考える。
- 1番目の枠: 個すべてが候補 → 通り
- 2番目の枠:1個使ったので残り 通り
- 3番目の枠: 通り
- …
- 番目の枠:すでに 個使ったので 通り
積の法則でこれらを掛け合わせる:
この積は「 のうち最初の 個だけ残し、残り 個分 を消す」操作なので、
**要するに「全部並べる から、使わない 個の並べ替え を割って消した」**だけ。
なぜ か(並べ替えを潰す)
順列は実は2段階の操作になっている:
同じ 個の組(例:{A,B,C})は、並べ方が 通り(ABC, ACB, BAC, …)あり、順列ではこれらを別々に数えている。組合せでは1つと数えたい。だから順列を で割って「並べ替えの重複」を潰す:
要するに「順列=組合せ × 並べ替え 」だから、組合せ=順列 ÷ 。この「同じものを何通りに数えすぎているかで割る」発想(重複度で割る)は、円順列・重複組合せでも全く同じように効く。
なぜ円順列が か(回転の重複を潰す)
個を一列に並べると 通り。だが円形にすると、ある並び(例:ABCD)を回転させた 通り(ABCD, BCDA, CDAB, DABC)はすべて同じ円になる。「数えすぎ」の重複度が なので で割る:
別の見方:「1人を特等席に固定し、残り 人を並べる」=。固定すれば回転の自由度が消えるので重複が起きない。どちらの見方でも同じ「並べ替え ÷ 重複度」の構図。
なぜ重複組合せ か(仕切り棒の論法)
重複順列 とは別物。「 種類のものから重複を許して 個選ぶ(順序は無関係)」を数える。
発想:選んだ結果を「各種類を何個選んだか」で表す。例として 種類(X, Y, Z)から 個選ぶとき、「Xを2個・Yを0個・Zを3個」という選び方を、
のように、 個の○と、種類を仕切る 本の仕切り棒|の並びで表す。仕切りが種類の境界を作るので、「」という1つの並びが「Xを2・Yを0・Zを3個選ぶ」という1つの選び方と1対1に対応する。
すると問題は「○を 個、|を 本、合計 個を一列に並べる場合の数」に帰着する。これは「 個の位置のうち、どの 箇所を○にするか」を選ぶ組合せ:
要するに「種類ごとの個数」を「○と仕切り棒の一列の並び」に翻訳すると、ただの組合せになる。仕切りは 本(種類を 個の区画に分けるには 本必要)という点が要。
なぜ二項定理の係数が か(展開の組合せ論的意味)
を展開するとき、各括弧から か のどちらか1つを選んで掛け合わせる。 という項ができるのは、 個の括弧のうち 個から を選び、残り 個から を選んだとき。その「 を選ぶ括弧の組み合わせ」が 通りあるから、 の係数は になる:
要するに「展開の各項の係数=その項を作る選び方の数=組合せ」。だから二項係数は組合せそのもの。
パスカルの公式 (最後の1個で場合分け)
パスカルの三角形(各数が左上+右上の和になる三角形)を数式で書いたものがこのパスカルの公式。組合せ論的に証明できる。
個から 個選ぶとき、特定の1個(仮に「最後の1個」と呼ぶ)に注目して、それを選ぶか選ばないかで排反に場合分けする(和の法則):
- その1個を選ぶ場合:残り 個から、あと 個選ぶ → 通り
- その1個を選ばない場合:残り 個から、 個全部選ぶ → 通り
この2つは同時に起きない(排反)ので足し合わせると全体になる:
要するに「ある1個を選ぶ/選ばないの2択で分けると、組合せが1つ小さいnの組合せ2つの和になる」。これがパスカルの三角形の「上2つの和」の正体。この漸化式があれば階乗を計算せずに二項係数を次々生成できる(→シミュレーション②)。
なぜ か(約束する理由)
定義上 は「0個を並べる場合の数」で直観が効かないが、式の整合性のために と約束する。たとえば は「全部選ぶ=1通り」のはずだから、 でないと辻褄が合わない。同様に (「0個選ぶ=何も選ばない1通り」)も で初めて成立する。 は公式を端( や )でも破綻させないための約束。
⚠️ 引っかけポイント・頻出論点・級ごとの差
- 順列か組合せか=順序を区別するか:「1位2位3位」「並べる」「パスワード」→順序あり=順列。「委員を選ぶ」「グループ」「握手の組」→順序なし=組合せ。判定を逆にするのが最頻出ミス。
- 「重複あり/なし」を読み分ける:「同じ数字を何回使ってもよい」→重複あり。「異なる」→重複なし。重複ありの並べるは 、選ぶは 。重複なしの並べる ・選ぶ 。この2×2の表を頭に入れる。
- 重複組合せ は仕切り棒。(重複順列)と混同しない。○が 個、仕切りが 本(種類数 )。仕切りの本数を や と間違えるのが定番ミス。
- 円順列は :一列の を回転の重複 で割る。「 のまま」「 通り」などの誤答に注意。
- 対称性 :「 個選ぶ」=「選ばない 個を選ぶ」なので等しい。 を計算するとき に直すと楽(計算量削減のため出題で活用)。
- の約束:端の値 を成り立たせるため。 としてしまう誤りに注意。
- 二項係数 ↔ 二項分布:二項定理の は、Phase 3 の二項分布 の係数そのもの(ベルヌーイ分布・二項分布)。(確率の総和が1)も二項定理から出る。
- 級差:4級=樹形図・数え上げ(公式を知らなくても数えられる) → 3級=・ の公式で確率計算。円順列・重複組合せは発展。
- 出題範囲は改訂されうるため受験前に公式最新版で要確認(3級は公式範囲表で「確率:独立な試行・条件付き確率」、4級は「場合の数・樹形図を用いた確率」がキーワード。順列組合せは確率計算の前提として扱われる)。
よくある疑問
Q1. 順列と組合せ、どっちを使うか見分けられません。
A. **「並べ替えたら別物になるか」**を考えてください。なるなら順列(順番が意味を持つ:パスワード・順位・座席)、ならないなら組合せ(順番は無関係:チーム・委員・組合せの当選番号)。問題文の「並べる」「○位」は順列、「選ぶ」「グループ」は組合せのサインです。
Q2. 重複組合せ と重複順列 がごっちゃになります。
A. ここでも**「並べるか/選ぶか」で分けます。重複OKで並べる**(順序あり)なら 、重複OKで選ぶ(順序なし)なら (仕切り棒)です。仕切り棒は○が 個、仕切りが種類数 本( 本)という点だけ押さえれば迷いません。
Q3. のように が大きいと計算が大変です。
A. 対称性 を使いましょう。「 個選ぶ」=「選ばない 個を選ぶ」なので値が等しく、たとえば と小さい方に直すと楽です。試験でも計算量を減らせます。
まとめ
- 数え上げは**和の法則(足す)と積の法則(掛ける)**に還元される。
- 順列 は並べる、組合せ は選ぶ。違いは「並べ替え を別に数えるか潰すか」だけ。
- 二項定理の係数 (二項係数)は、組合せ=展開係数=パスカルの三角形の値であり、このあとの二項分布の確率の主役になる。場合の数は確率計算の土台です。
対応するシミュレーション
simulations/baai_no_kazu_rekkyo.py- 何を示すか:小さい (例 )について、
itertoolsを使わず自前の二重ループで全パターンを実際に列挙してカウントし、・ の公式値と一致することを確認する。順列([A,B] と [B,A] を別々に数える)と組合せ(同じ 個の並べ替えを1つに潰す)の違いを、列挙したリストそのものを見せて示す。 - 結論:公式は「全列挙の個数」を一発で計算する近道だと数値で確認できる。順列が組合せの 倍になっていることも列挙で目視できる(順列 12 ÷ 組合せ 6 = )。
- 何を示すか:小さい (例 )について、
simulations/baai_no_kazu_pascal.py- 何を示すか:パスカルの公式 の漸化式だけ(階乗を使わず)でパスカルの三角形を生成し、(1)階乗公式 の値と一致すること、(2)各行の和が になること、(3)二項定理 の展開係数と一致することを確認する。三角形を棒グラフでも可視化する。
- 結論:パスカルの公式(足し算だけ)と階乗公式(掛け算・割り算)が同じ二項係数を生み、それが二項定理の係数と一致する。「組合せ=二項係数=展開係数」の三位一体を数値で確認できる。二項係数のグラフは中央が最大・両端が小さい左右対称の山型で、これがこのあと学ぶ二項分布(さらには正規分布)の形の出発点になる。

関連ノート
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