国際マクロ経済(為替レート・マンデルフレミングモデル)
要点(BLUF)
- マンデルフレミングモデル:変動相場制では金融政策有効・財政政策無効。固定相場制では逆
- 円高は短期的に輸出を減らすが、Jカーブ効果で一時的に貿易収支が悪化してから改善
- 購買力平価説:長期的には為替レートが物価差を反映するように調整される
1. 為替レートの決定理論
購買力平価説(PPP:Purchasing Power Parity)
絶対的PPP: 同一財は世界中どこでも同じ価格(一物一価の法則)。
相対的PPP(試験頻出): 為替レートの変化率は両国のインフレ率の差に等しい。
例: 日本のインフレ率2%、アメリカ3%なら、円の価値は相対的に高まり円高方向に1%調整。
PPPは長期的には成立しやすいが、短期では様々な要因で乖離する(ビッグマック指数はPPPの代表例)。
金利平価説(Interest Rate Parity)
国際資本移動が自由な場合、各国の投資収益率(名目金利 + 為替変化率)は均等化する。
解釈: 国内金利が高いと円高になる(外国からの資本流入で円買い圧力)。
2. 経常収支と資本収支
国際収支の構造
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経常収支 | 貿易収支(財)+ サービス収支 + 第一次所得収支(投資収益)+ 第二次所得収支 |
| 資本・金融収支 | 直接投資・証券投資・その他投資 |
恒等式:
- 経常収支の黒字 ↔ 資本・金融収支の赤字(対外投資が増加)
- 日本の経常収支黒字 → 海外に資産(ドル)が積み上がる → 円売り圧力 → 円安要因
3. 円高・円安と経常収支への影響
円高の影響
| 項目 | 影響 |
|---|---|
| 輸出 | 円高で輸出品が外国から見て高くなる → 輸出量が減少 |
| 輸入 | 円高で輸入品が国内で安くなる → 輸入量が増加 |
| 経常収支 | 輸出減 + 輸入増 → 経常収支悪化 |
Jカーブ効果
円高後、短期では貿易収支がむしろ悪化し、時間が経ってから改善する現象。
flowchart TD
A["円高発生"] --> B["短期(数カ月)"]
A --> C["中長期(6カ月〜)"]
B --> B1["数量変化が遅れる\n(契約済み取引が続く)"]
B1 --> B2["輸出金額は減少\n輸入金額はすぐ減少しない"]
B2 --> B3["貿易収支が一時悪化"]
C --> C1["輸出量・輸入量が変化"]
C1 --> C2["輸出減・輸入増の数量効果"]
C2 --> C3["貿易収支が改善に転じる"]
Jカーブの軌跡: 円高直後は輸入の円建て価格が下がって輸入金額が減り、輸出の外貨建て価格が上がって輸出量が減るが、円建て金額は変わりにくい。しばらくすると数量調整が進み、輸出量が本格的に減少し貿易収支が改善する。
4. マンデルフレミングモデル
モデルの前提
- 小国開放経済(世界金利r*を所与)
- 完全資本移動(BP曲線は水平)
- IS-LM-BP分析に為替レートを加えた拡張モデル
BP曲線(国際収支均衡線): 完全資本移動のもとでは、国内金利が世界金利を少しでも上回ると無限の資本流入 → BP曲線は世界金利r*の水準で水平になる。
flowchart LR
A["政策効果の比較"] --> B["変動相場制"]
A --> C["固定相場制"]
B --> B1["財政政策: 無効"]
B --> B2["金融政策: 有効"]
C --> C1["財政政策: 有効"]
C --> C2["金融政策: 無効"]
変動相場制での財政政策(無効)
flowchart TD
A["G↑(財政拡張)"] --> B["IS曲線が右シフト"]
B --> C["国内金利r > r*"]
C --> D["海外から資本流入(円買い)"]
D --> E["円高"]
E --> F["輸出減・輸入増(純輸出減少)"]
F --> G["IS曲線が左シフト(元に戻る)"]
G --> H["結果: Y変化なし(クラウディングアウト)"]
変動相場制での金融政策(有効)
flowchart TD
A["M↑(金融緩和)"] --> B["LM曲線が右シフト"]
B --> C["国内金利r < r*"]
C --> D["海外へ資本流出(円売り)"]
D --> E["円安"]
E --> F["輸出増・輸入減(純輸出増加)"]
F --> G["IS曲線が右シフト"]
G --> H["結果: Y増加(金融政策有効)"]
固定相場制での政策効果(逆転)
| 政策 | メカニズム | 有効性 |
|---|---|---|
| 財政政策(G↑) | IS右シフト → 金利上昇 → 資本流入 → 介入(外貨売り円買い)でMが増加 → LM右シフト | 有効 |
| 金融政策(M↑) | LM右シフト → 金利低下 → 資本流出 → 介入(円売り外貨買い)でMが元に戻る | 無効 |
5. 為替相場制度の比較
| 特徴 | 固定相場制 | 変動相場制 |
|---|---|---|
| 為替レート | 一定(中央銀行が介入) | 市場で決定 |
| 財政政策 | 有効 | 無効(クラウディングアウト) |
| 金融政策 | 無効 | 有効 |
| 外部ショックへの調整 | 介入が必要 | 為替変動で自動調整 |
よくある疑問
Q: なぜ変動相場制では財政政策が無効なのか?
A: クラウディングアウトが為替チャンネルで起きるからです。政府支出を増やすと景気拡大 → 金利上昇 → 海外から資本流入 → 円高 → 輸出減。財政出動で生まれた需要が、輸出減少によって相殺されます。閉鎖経済でのクラウディングアウト(金利上昇で民間投資が減る)よりも完全な形で財政政策が無効化されます。
Q: 固定相場制でなぜ金融政策が無効なのか?
A: 固定相場の維持に金融政策が完全に縛られるからです。金利を下げると資本流出(円売り)が起き、固定相場を維持するために中央銀行が外貨売り・円買いの介入をします。この介入でマネーサプライが縮小(元に戻る)するため、金融緩和の効果が消えてしまいます。
Q: Jカーブ効果はなぜ「J」字形なのか?
A: 円高直後は取引が続行中(既存の輸出入契約)のため、数量は変わらず価格(円換算)のみ変化します。この「間」に貿易収支が一時悪化(下がる)。その後、数量調整が進んで輸出減・輸入増の本来の影響が出てきて貿易収支が改善(上がる)。この動きが時系列でJの字形を描くため「Jカーブ」と呼ばれます。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 購買力平価説 | 長期の為替レートは物価差を反映 |
| マンデルフレミング | 変動相場: 金融有効・財政無効 / 固定相場: 財政有効・金融無効 |
| Jカーブ効果 | 円高後、短期は貿易収支悪化 → 中長期で改善 |
| 経常収支と資本収支 | 経常収支黒字 ↔ 資本収支赤字(対外投資)でバランス |
試験では「マンデルフレミングの政策有効性の表(4象限)」「Jカーブ効果の説明」「PPPの式」が頻出。
関連ノート
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