セグメント別損益と貢献利益:撤退判断の正しい基準
要点(BLUF)
セグメント別損益管理とは、製品・地域・顧客などの単位(セグメント)ごとに損益を把握する管理会計の手法です。撤退判断の基準は「貢献利益がプラスかどうか」であり、営業利益がマイナスでも貢献利益がプラスなら継続すべきです。固定費を直接固定費と共通固定費に分けることが分析の鍵です。
1. なぜセグメント別に損益を見るのか
全社合計の損益だけでは「どの製品・事業が儲かっているか」が見えません。
例:3製品を持つ企業の全社営業利益が1,000万円でも、製品Cが-500万円を出していれば、Cを撤退させれば1,500万円になるかもしれない——というのがセグメント別管理の動機です。
ただし「撤退すれば必ず利益が増えるか」はもっと慎重に判断する必要があります。そこで登場するのが「貢献利益」です。
2. 固定費の2分類:直接固定費と共通固定費
graph TD
FC["固定費"]
FC --> DFC["直接固定費\n(Traceable Fixed Cost)\nそのセグメントがなくなれば\n消える固定費"]
FC --> CFC["共通固定費\n(Common Fixed Cost)\nそのセグメントがなくなっても\n消えない固定費"]
DFC --> D1["例:製品Aの専用機械の減価償却"]
DFC --> D2["例:事業部の専任スタッフ人件費"]
DFC --> D3["例:製品Bの広告宣伝費"]
CFC --> C1["例:本社家賃・経営陣給与"]
CFC --> C2["例:全製品共通の研究開発費"]
CFC --> C3["例:共用システム費"]
style DFC fill:#d4edda
style CFC fill:#f8d7da
重要な区別:
- 直接固定費 = そのセグメントを廃止すれば消滅する固定費
- 共通固定費 = そのセグメントを廃止しても残る固定費
3. セグメント別損益計算書の構造
graph TD
S["売上高\n(各セグメント)"]
S --> VC["変動費\n(変動製造費+変動販管費)"]
VC --> CM["限界利益\n= 売上高-変動費"]
CM --> DFC["直接固定費\n(そのセグメントに帰属)"]
DFC --> SC["セグメント貢献利益\n= 限界利益-直接固定費"]
SC --> CFC["共通固定費\n(全社按分)"]
CFC --> OI["営業利益"]
style CM fill:#d4edda
style SC fill:#fff3cd
style OI fill:#cce5ff
数値例:
| 項目 | 製品A | 製品B | 製品C | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 800 | 600 | 400 | 1,800 |
| 変動費 | 480 | 360 | 280 | 1,120 |
| 限界利益 | 320 | 240 | 120 | 680 |
| 直接固定費 | 100 | 80 | 150 | 330 |
| セグメント貢献利益 | 220 | 160 | ▲30 | 350 |
| 共通固定費 | — | — | — | 200 |
| 営業利益 | — | — | — | 150 |
(単位:万円)
4. 撤退判断の正しい基準
製品Cのセグメント貢献利益が▲30万円の場合:
誤った判断:営業利益ベース
「営業利益から共通固定費を按分した結果、製品Cの営業利益は▲X万円だから撤退すべき」
→ 間違い。共通固定費は製品Cを廃止しても消えません。
正しい判断:貢献利益ベース
graph LR
Q["製品Cを撤退すべきか?"]
Q --> |"セグメント貢献利益 > 0"| STAY["継続\n共通固定費の回収に貢献しているため\n廃止すると全社利益が減る"]
Q --> |"セグメント貢献利益 < 0"| LEAVE["撤退\n廃止すれば全社利益が増える\nただし撤退コストも検討"]
Q --> |"セグメント貢献利益 = 0"| NEITHER["無差別\n撤退コストがなければどちらでも同じ"]
style STAY fill:#d4edda
style LEAVE fill:#f8d7da
style NEITHER fill:#fff3cd
製品Cの例:貢献利益 ▲30万円 → 撤退すると全社利益が150万円 → 180万円に改善
5. 撤退後の損益シミュレーション
製品Cを廃止した場合(上の例の続き):
| 項目 | 廃止前 | 廃止後 |
|---|---|---|
| セグメント貢献利益合計 | 350 | 380(=220+160) |
| 共通固定費 | 200 | 200(変わらない) |
| 営業利益 | 150 | 180 |
貢献利益がマイナス(▲30万円)だった製品Cを廃止したので、その分だけ全社利益が改善しました。
6. 限界利益と貢献利益の使い分け
試験では「限界利益」と「貢献利益」が混在して登場します。
| 用語 | 計算式 | 文脈 |
|---|---|---|
| 限界利益 | 売上高 - 変動費 | CVP分析・全社ベース |
| セグメント貢献利益 | 限界利益 - 直接固定費 | セグメント管理・撤退判断 |
重要:「貢献利益」という言葉が使われているとき、「直接固定費を引いているか否か」を問題文で確認してください。定義が問題によって微妙に異なることがあります。
7. セールスミックス(最適販売組み合わせ)との接続
複数製品を持つ場合、製造能力(ボトルネック)の制約下で利益を最大化するには:
この値が大きい製品を優先して生産・販売する。試験での出題頻度は高い。(詳細はセールスミックス問題として別途確認のこと)
よくある疑問
Q. 「貢献利益がプラスなら継続」は絶対に正しいか? A. 基本的にはそうですが、以下の場合は例外的な検討が必要です。①撤退コスト(退職金・設備除却損等)が大きい場合 ②将来の貢献利益が悪化する見込みがある場合 ③他製品への相乗効果(在庫補完・ブランド効果等)がある場合。試験では特に指示がなければ「貢献利益 > 0 = 継続」で解答してください。
Q. 共通固定費の配分はどうする? A. 診断士試験では売上高比率・従業員数比率・床面積比率などの配分基準が与えられます。ただし「共通固定費の配分結果で撤退判断をしてはいけない」という点が核心です。配分は参考情報に過ぎません。
Q. 限界利益率と貢献利益率はどう違う? A. 限界利益率は「限界利益÷売上高」で変動費のみを引いたベース。貢献利益率は「(限界利益-直接固定費)÷売上高」で直接固定費まで引いたベース。問題文の定義を確認してください。
Q. 損益分岐点(BEP)をセグメント別に計算できる? A. できます。各セグメントの直接固定費を当該セグメントの限界利益率で割ります。ただし共通固定費の扱い方で数値が変わるため、問題文の指示に注意が必要です。
まとめ
- セグメント別損益管理の目的:どの製品・事業が収益に貢献しているかを正確に把握する
- 固定費を「直接固定費」と「共通固定費」に分けることが分析の鍵
- セグメント貢献利益 = 限界利益 - 直接固定費
- 撤退判断の基準:セグメント貢献利益 > 0 なら継続(営業利益がマイナスでも)
- 共通固定費は配分先セグメントを廃止しても消えないため、撤退判断に使わない
関連ノート
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