🎓 第5章:多変量時系列
第5章 多変量時系列
ここまで(第1〜4章)は基本的に1 本の系列を扱ってきました。本章は複数の系列が互いに影響し合う世界へ進みます。柱は 3 つ。まず VAR(ベクトル自己回帰)——単変量 AR(AR・MAモデル)の多変量版で、各変数を全変数の過去ラグで回帰し、相互作用を係数行列で表します。次に グレンジャー因果——「 の過去が の予測を改善するか」で関係の向きを測りますが、これは予測的因果であって構造的因果ではありません。最後に 共和分と VECM——個々は単位根で非定常(ランダムウォークと単位根)でも、線形結合が定常になる長期均衡関係を扱い、見せかけの回帰との違いと、誤差修正で均衡へ引き戻す仕組みを押さえます。いずれも真の係数行列・一方向の依存・共通の確率トレンドを仕込んだ擬似系列で、復元・検出・予測を数値で確かめます。
トピック一覧
- VAR(ベクトル自己回帰) — 標準
- グレンジャー因果 — 標準
- 共和分と誤差修正モデル(VECM) — 発展
この章の要点
- VAR():。係数は行列で、非対角成分が変数間の波及。安定性はコンパニオン行列の固有値が単位円内。真の (固有値 0.6, 0.3)を
VARが復元(成分 0.494/0.247/0.081/0.451)、AIC が を選択。予測区間つき多変量予測は安定系なら有限へ収束、IRF はショックの波及が 8 期で消えるのを確認。 - グレンジャー因果:制限(自分の過去だけ)vs 非制限(+相手の過去)の予測改善を 検定。一方向 を仕込むと は ・ は と向きを正しく検出。だが共通原因があると直接リンク無しでも の見せかけ因果——予測的因果 ≠ 構造的因果。検定前に定常性が必須。
- 共和分と VECM:共通トレンドを共有する は各々 (ADF p=0.99)でも は定常(p=0.000)。Engle-Granger・Johansen で共和分ランク 1、長期係数 2.003 を復元。VECM = 差分 VAR + 誤差修正項で調整係数 (均衡へ戻す速度)を推定。共和分があるのに差分だけ取ると長期情報を失い、均衡スプレッド予測で VECM が差分 VAR を 18.8% 改善(100 本中 76% 勝ち)。
関連章
- 第2章 ARIMA系モデル — VAR は単変量 AR の多変量版(第2章 ARIMA系モデル 目次、特に AR・MAモデル)/差分・過剰差分(ARMA・ARIMAモデル)
- 第1章 時系列の基礎 — 単位根・見せかけの回帰が共和分の前提(ランダムウォークと単位根)/予測の評価とウォークフォワード(予測の評価指標と時系列CV)
- 第4章 状態空間とカルマン — 多変量の状態空間表現(第4章 状態空間とカルマン 目次、特に 状態空間モデルの枠組み)
統計・因果サイトとの関係
- 多変量定常過程・確率トレンドの土台は統計検定テキスト第8章 確率過程(マルコフ連鎖・ポアソン過程)。
- グレンジャー因果は予測的因果で、介入による構造的因果は因果推論テキストへ——相関と因果の違い 相関と因果の違い、構造的因果モデルと do 演算子 構造的因果モデルとdo演算子、予測と因果の役割分担 因果推論と予測と意思決定。