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この章のねらい
ここまでの章は「正しく識別できれば、こう推定する」を扱ってきた。だが因果推論の仮定――とりわけ交換可能性(未観測交絡がない)――は、本質的にデータから検証できない。第7章はこの弱点に正面から向き合う。
- 仮定が崩れたら結論はどれだけ揺らぐかを測る(感度分析)。
- 調整のしかたを誤ると、無いはずのバイアスを作り込む落とし穴(合流点・選択・過剰調整・Mバイアス)を、原理から押さえる。
- すべてを実務のチェックリストに統合する。
共通する教訓はひとつ:「とにかく全部調整」は誤り。入れてよい変数も、緩めてよい仮定も、相関ではなく DAG と識別の理屈が決める。各トピックで真の効果を仕込んだ擬似データを作り、素朴な分析や過剰な調整が外し、正しい扱いだけが真値を当てることを Python で実証する。
トピック一覧
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未観測交絡への感度分析 観測された関連を未観測交絡だけで説明し去るには、交絡がどれほど強い必要があるか。E値(VanderWeele & Ding)を導出し、真の効果ゼロのデータで見かけのリスク比が出る例から E値を計算して「これだけ強い交絡が要る」と読む。
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衝突点バイアスと選択バイアス 合流点(コライダー)を条件付けると独立な2変数に相関が生じる。選択バイアス=サンプル選抜が実質的な合流点条件付け。独立な が選抜で負相関になるBerkson のパラドックスを数値と散布図で実証。
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過剰調整とMバイアス 媒介を調整して効果を消す過剰調整と、処置前変数でも合流点なら偏る Mバイアス。「全部調整」が誤りである数理的根拠を、間接効果が消える例と「Mを調整しない方が正しい」例で示す。
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因果推論のチェックリスト 問い → DAG → 識別の仮定の点検 → 調整集合 → 推定法 → 感度分析、という実務手順を意思決定フローに統合。ひとつの擬似例にチェックリストを通し、正しい調整だけが真値を当てることを確認。
「悪い統制」の早見表
| 変数の役割 | DAG 上の位置 | 調整すると | 扱う節 |
|---|---|---|---|
| 交絡 | バイアスが減る(入れる) | バックドア基準と識別 | |
| 媒介 | 因果パスを遮断(過剰調整) | 過剰調整とMバイアス | |
| 合流点 | 見かけの相関を注入 | 衝突点バイアスと選択バイアス | |
| 合流点(M字) | 裏口パスを開く(Mバイアス) | 過剰調整とMバイアス |
調整集合はこの区別で決める。相関の強さや「処置前か後か」だけでは決まらない。
前後のつながり
- 前提:因果ダイアグラムとd分離・バックドア基準と識別・識別の仮定(識別と調整集合の言葉)、二重頑健推定AIPW(調整法は交換可能性に依存する)、媒介分析(媒介の正しい分解)
- 次章へ:第8章 応用と因果探索(データからの構造発見・推定パイプライン・因果と予測と意思決定)