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この章のねらい

ここまでの章は「正しく識別できれば、こう推定する」を扱ってきた。だが因果推論の仮定――とりわけ交換可能性(未観測交絡がない)――は、本質的にデータから検証できない。第7章はこの弱点に正面から向き合う。

共通する教訓はひとつ:「とにかく全部調整」は誤り。入れてよい変数も、緩めてよい仮定も、相関ではなく DAG と識別の理屈が決める。各トピックで真の効果を仕込んだ擬似データを作り、素朴な分析や過剰な調整が外し、正しい扱いだけが真値を当てることを Python で実証する。

トピック一覧

  1. 未観測交絡への感度分析 観測された関連を未観測交絡だけで説明し去るには、交絡がどれほど強い必要があるか。E値(VanderWeele & Ding)を導出し、真の効果ゼロのデータで見かけのリスク比が出る例から E値を計算して「これだけ強い交絡が要る」と読む。

  2. 衝突点バイアスと選択バイアス 合流点(コライダー)を条件付けると独立な2変数に相関が生じる。選択バイアス=サンプル選抜が実質的な合流点条件付け。独立な X,YX,Y が選抜で負相関になるBerkson のパラドックスを数値と散布図で実証。

  3. 過剰調整とMバイアス 媒介を調整して効果を消す過剰調整と、処置前変数でも合流点なら偏る Mバイアス。「全部調整」が誤りである数理的根拠を、間接効果が消える例と「Mを調整しない方が正しい」例で示す。

  4. 因果推論のチェックリスト 問い → DAG → 識別の仮定の点検 → 調整集合 → 推定法 → 感度分析、という実務手順を意思決定フローに統合。ひとつの擬似例にチェックリストを通し、正しい調整だけが真値を当てることを確認。

「悪い統制」の早見表

変数の役割DAG 上の位置調整すると扱う節
交絡XCYX \leftarrow C \to Yバイアスが減る(入れるバックドア基準と識別
媒介XMYX \to M \to Y因果パスを遮断(過剰調整)過剰調整とMバイアス
合流点XKYX \to K \leftarrow Y見かけの相関を注入衝突点バイアスと選択バイアス
合流点(M字)U1X, U1MU2, U2YU_1 \to X,\ U_1 \to M \leftarrow U_2,\ U_2 \to Y裏口パスを開く(Mバイアス)過剰調整とMバイアス

調整集合はこの区別で決める。相関の強さや「処置前か後か」だけでは決まらない。

前後のつながり