生産性分析:付加価値と労働生産性
要点(BLUF)
生産性分析は「どれだけ付加価値を生み出せたか」を測ります。付加価値の計算には加算法(日銀方式)と控除法(中小企業庁方式)の2種類があり、試験では控除法が頻出です。労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数で、「1人当たり売上高 × 付加価値率」に分解できます。
1. 付加価値とは何か
「付加価値(Value Added)」とは、企業が外部から仕入れた材料・サービスに新たに加えた価値のことです。
例:半導体製造で言えば、シリコンウェハ(原材料)を買って、プロセス加工・検査・パッケージングを施して製品を売る。その差額分が付加価値です。
2. 付加価値の計算方法
方法①:控除法(中小企業庁方式)—試験で主に使用
外部から購入した価値を売上高から引く方法です。
外部購入費用 = 材料費 + 購入部品費 + 外注費 + 消耗品費
方法②:加算法(日銀方式)—実務でよく使用
付加価値を構成する要素を積み上げる方法です。
注意:2つの方法は同じ数値になりません(定義が微妙に異なるため)。試験問題では必ず「どちらの方法で計算するか」を確認してください。
graph TD
S["売上高"]
S --> CV["控除法\n(中小企業庁方式)\n売上高 - 外部購入費用"]
S --> AV["加算法\n(日銀方式)\n各要素の積み上げ"]
CV --> VA["付加価値"]
AV --> VA
VA --> LP["労働生産性\n付加価値÷従業員数"]
VA --> KP["資本生産性\n付加価値÷有形固定資産"]
VA --> VR["付加価値率\n付加価値÷売上高"]
style VA fill:#fff3cd
style LP fill:#d4edda
style KP fill:#cce5ff
style VR fill:#f8d7da
3. 生産性指標の一覧と計算式
| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| 労働生産性 | 付加価値 ÷ 従業員数 | 1人当たりが生み出す付加価値 |
| 資本生産性 | 付加価値 ÷ 有形固定資産 | 設備1円当たりが生み出す付加価値 |
| 付加価値率 | 付加価値 ÷ 売上高 × 100 | 売上のうち付加価値が占める割合 |
| 1人当たり売上高 | 売上高 ÷ 従業員数 | 1人が担う売上規模 |
4. 労働生産性の分解
労働生産性は以下のように2つの要因に分解できます。
graph LR
LP["労働生産性\n(付加価値/従業員)"] --> S1["1人当たり売上高\n(売上高/従業員数)"]
LP --> S2["付加価値率\n(付加価値/売上高)"]
S1 --> F1["販売力・業務量の指標\n増やすには:販路拡大・業務効率化"]
S2 --> F2["コスト競争力の指標\n増やすには:外注費削減・高付加価値化"]
style LP fill:#fff3cd
style S1 fill:#d4edda
style S2 fill:#cce5ff
解釈のポイント:
- 1人当たり売上高が高くても、付加価値率が低ければ外注頼みで実力が伴わない
- 付加価値率が高いほど、自社内での価値創造力が高い
5. 具体例:数値計算
B社のデータ:
- 売上高:2,400万円
- 外部購入費用(材料費+外注費):1,440万円
- 従業員数:8人
- 有形固定資産:600万円
計算(控除法):
- 付加価値 = 2,400 - 1,440 = 960万円
- 付加価値率 = 960 ÷ 2,400 × 100 = 40%
- 労働生産性 = 960 ÷ 8 = 120万円/人
- 1人当たり売上高 = 2,400 ÷ 8 = 300万円/人
- 検証:300万円 × 40% = 120万円(一致)
- 資本生産性 = 960 ÷ 600 = 1.6回
6. 試験での出題パターン
一次試験(財務・会計)
- 付加価値の計算(加算法・控除法の選択)
- 労働生産性・付加価値率の計算
- 分解式を使った要因分析
二次試験(事例IV)
- 与件文に従業員数が与えられた場合 → 労働生産性で比較
- 競合他社との付加価値率の差を分析し、経営課題を特定
- 「1人当たり売上高は高いが付加価値率が低い = 外注依存度が高い」という読み方
よくある疑問
Q. 加算法と控除法で数値が一致しないのはなぜ? A. 定義する「付加価値の構成要素」が微妙に異なるためです。中小企業庁方式は外部購入費を控除するシンプルな定義、日銀方式はより詳細な要素積み上げ。どちらが「正しい」ではなく、目的に応じて使い分けます。試験では問題文の指示に従ってください。
Q. 「付加価値率が高い = 良い企業」と断言していいか? A. 業種によって基準が違います。製造業で外注が少なければ付加価値率は上がりますが、それが効率的かどうかは別問題。試験では同業種内の比較が前提です。
Q. 減価償却費が加算法に含まれるのはなぜ? A. 減価償却費は外部に支払うお金ではなく、企業が設備投資した価値の「社内消化分」です。企業が自力で生み出した価値(=付加価値)の一部と見なすため、加算法では足し算します。
Q. 診断士試験で「生産性分析」が出るのはどの科目? A. 一次試験の財務・会計(計算問題)と、二次試験の事例IV(経営分析の記述・計算)の両方で出ます。特に事例IVでは従業員数が与えられると労働生産性の計算がほぼ確実に問われます。(要最新確認)
まとめ
- 付加価値 = 売上高 - 外部購入費(控除法。試験はこちらが基本)
- 労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数 = 1人当たり売上高 × 付加価値率
- 分解式で「販売力(1人当たり売上)」と「コスト競争力(付加価値率)」を区別して分析する
- 二次試験では従業員数が与えられたら即座に労働生産性の計算を検討する
関連ノート
- 効率性分析(効率性分析:各種回転率)
- 収益性分析(収益性分析:ROA・ROE)
- CVP分析・損益分岐点(CVP分析:変動費・固定費の分類)
- 直接原価計算と全部原価計算(直接原価計算と全部原価計算)