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🎓 レベル:発展 | 重要度:B(理論の土台) 📎 前提:確率過程とは | 数理:同時分布・周辺分布(統計)

要点(BLUF)

概念

無限に続く過程 {Xt}tT\{X_t\}_{t\in T} の「確率法則」を直接書くのは難しそうに見えます。標本路の空間は無限次元だからです。しかし救いがあります。私たちが実際に問う確率はすべて、有限個の時点に関するものです。「Xt1a1X_{t_1}\le a_1 かつ \dots かつ XtnanX_{t_n}\le a_n となる確率は?」。つまり有限次元分布さえ分かれば、知りたいことはすべて計算できます。

数式による定式化

時点の有限列 t1<t2<<tnt_1 < t_2 < \dots < t_n ごとに、(Xt1,,Xtn)(X_{t_1},\dots,X_{t_n}) の同時分布関数

Ft1,,tn(x1,,xn)=P(Xt1x1, , Xtnxn)F_{t_1,\dots,t_n}(x_1,\dots,x_n) = P(X_{t_1}\le x_1,\ \dots,\ X_{t_n}\le x_n)

有限次元分布と呼びます。この族 {Ft1,,tn}\{F_{t_1,\dots,t_n}\} が過程の正体です。族が満たすべき整合性条件は2つ。

(対称性)Ftπ(1),,tπ(n)(xπ(1),,xπ(n))=Ft1,,tn(x1,,xn)\text{(対称性)}\quad F_{t_{\pi(1)},\dots,t_{\pi(n)}}(x_{\pi(1)},\dots,x_{\pi(n)}) = F_{t_1,\dots,t_n}(x_1,\dots,x_n) (周辺化)limxnFt1,,tn(x1,,xn)=Ft1,,tn1(x1,,xn1)\text{(周辺化)}\quad \lim_{x_n\to\infty} F_{t_1,\dots,t_n}(x_1,\dots,x_n) = F_{t_1,\dots,t_{n-1}}(x_1,\dots,x_{n-1})

対称性は「時点の並べ替えに依らない」、周辺化は「1つの時点を ++\infty に飛ばす(=忘れる)と1つ低い次元の分布に一致する」という条件です。

直観

要するに「ジグソーパズルのピースが噛み合っていれば、全体の絵が必ず1枚存在する」という定理です。有限次元分布は過程をところどころ覗き見たスナップショット。スナップショット同士が(重なる部分で)矛盾しなければ、それらすべてを同時に実現する1つの過程(=無限次元の確率測度)を組み立てられる、とコルモゴロフは保証しました。存在を一から構成する手間を省いてくれる「過程の存在定理」です。

具体例

ブラウン運動の共分散 K(s,t)=min(s,t)K(s,t)=\min(s,t) を持つガウス過程を考えます。時点 (1,2,3)(1,2,3) での3次元正規分布から標本を作り、先頭2成分だけを残す(=3つ目を周辺化する)と、その共分散は (1,2)(1,2) の2次元分布の共分散ブロックに一致するはずです。整合性条件(周辺化)を数値で確認します。

import numpy as np
rng = np.random.default_rng(0)
ts = np.array([1.0, 2.0, 3.0])
K = np.minimum.outer(ts, ts)          # K(s,t)=min(s,t)
L = np.linalg.cholesky(K)
X = rng.standard_normal((400000, 3)) @ L.T
emp2 = np.cov(X[:, :2].T)             # 3次元標本→先頭2成分へ周辺化
print("理論 2x2 共分散(左上ブロック):\n", K[:2, :2])
print("周辺化した 2x2 共分散:\n", np.round(emp2, 3))
# 理論 2x2 共分散(左上ブロック):
#  [[1. 1.]
#  [1. 2.]]
# 周辺化した 2x2 共分散:
#  [[1.002 1.002]
#  [1.002 1.999]]

3つ目の時点を捨てて得た2次元分布が、最初から2時点で作る分布と一致しています。整合性条件が現実に成り立っていることの確認です。

他過程との関係

数式の直観的意味

整合性条件は「部分どうしの無矛盾」を要求するだけで、過程の存在という「全体」を引き出します。これは確率論における局所から大域への橋渡しで、後の定常性と独立増分(有限次元分布が時間シフトで不変)や定常過程の定義も、すべて有限次元分布の言葉で書かれます。

⚠️ よくある誤解

対応シミュレーション

本文のコードがそのまま整合性の数値確認になっています(時点数や共分散を変えても周辺化の一致が保たれます)。

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