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🎓 レベル:標準 | 重要度:A(王道の具体例) 📎 前提:状態の分類定常性と独立増分

要点(BLUF)

概念

ランダムウォークは、独立な小さな変位を足し続ける過程です(定常性と独立増分の独立増分の典型)。マルコフ連鎖としては「今の位置だけで次が決まる」連鎖。その最も劇的な性質が、戻ってこられるかどうかが空間の次元で切り替わることです。低次元では動ける方向が限られ必ず原点を踏み直しますが、高次元では広大な空間に拡散して二度と戻らなくなります。

数式による定式化

Zd\mathbb{Z}^d 上の対称単純ランダムウォーク:Xn=k=1nξkX_n = \sum_{k=1}^n \xi_k、各 ξk\xi_k2d2d 個の単位方向ベクトルを等確率 1/(2d)1/(2d) でとる。原点回帰確率 f=P(n1:Xn=0)f=P(\exists n\ge 1: X_n=0) とし、回帰のしやすさは

n=0P(Xn=0){=再帰 (f=1)<過渡 (f<1)\sum_{n=0}^{\infty} P(X_n = 0) \quad \begin{cases} = \infty & \Rightarrow \text{再帰}\ (f=1) \\ < \infty & \Rightarrow \text{過渡}\ (f<1) \end{cases}

で判定します(状態の分類の再帰判定そのもの)。局所中心極限定理より P(X2n=0)Cnd/2P(X_{2n}=0)\sim C\, n^{-d/2} なので、

nnd/2 {発散d2(再帰)収束d3(過渡)\sum_n n^{-d/2}\ \begin{cases} \text{発散} & d\le 2 \quad(\text{再帰}) \\ \text{収束} & d\ge 3 \quad(\text{過渡}) \end{cases}

これがポリアの定理です。d=3d=3 の回帰確率は f0.3405f\approx 0.3405(ポリアの定数)。

直観

要するに「次元が上がると逃げ道が増える」。1次元では左右しかなく、拡散の幅 n\sqrt{n} に対し原点近傍にいる確率が n1/2n^{-1/2} と大きいので、足し合わせると無限回原点を踏みます。3次元では位置が n\sqrt{n} のオーダーで広がる空間(体積 n3/2n^{3/2})に薄く散らばり、原点にいる確率 n3/2n^{-3/2} が速く減るため、総訪問回数が有限で済んでしまう。発散と収束の境目がちょうど d=2d=2 にあります。

具体例

1〜3次元で「ある歩数以内に原点へ回帰した割合」を測り、歩数を倍にしたときの挙動を見ます。再帰(d=1,2d=1,2)は1へ向かって増え続け、過渡(d=3d=3)はポリア定数付近で頭打ちになるはずです。

import numpy as np
def return_frac(d, n_steps, n_walks=40000, seed=9):
    rng = np.random.default_rng(seed)
    pos = np.zeros((n_walks, d), dtype=np.int32)
    returned = np.zeros(n_walks, dtype=bool)
    idx = np.arange(n_walks)
    for _ in range(n_steps):
        ax = rng.integers(0, d, size=n_walks)        # 動かす軸
        sign = rng.integers(0, 2, size=n_walks) * 2 - 1
        pos[idx, ax] += sign
        returned |= ~pos.any(axis=1)                 # 原点に戻ったか
    return returned.mean()
for d in [1, 2, 3]:
    print(f"d={d}: 2000歩={return_frac(d, 2000):.3f}  8000歩={return_frac(d, 8000):.3f}")
# d=1: 2000歩=0.982  8000歩=0.991
# d=2: 2000歩=0.701  8000歩=0.735
# d=3: 2000歩=0.334  8000歩=0.338

d=1d=1 はほぼ1、d=2d=2 は歩数を増やすとさらに1へ近づく(再帰だが対数的に遅い)。d=3d=3 は歩数を4倍にしても 0.334→0.338 とほぼ動かず、ポリア定数 0.34\approx 0.34 で飽和します — これが過渡の証拠です。

他過程との関係

数式の直観的意味

ポリアの定理の本質は「nd/2\sum n^{-d/2} の収束・発散」、つまり拡散の速さ(幅 n\sqrt{n})と空間の広さ(次元 dd)の競争です。2次元は拡散が空間をちょうど埋め尽くす臨界次元で、再帰ではあるが平均回帰時間は無限(零再帰)。だから定常分布と収束の定常分布は存在しません(正再帰ではないため)。

⚠️ よくある誤解

対応シミュレーション

本文コードの n_steps をさらに増やすと、d=2d=2 の回帰割合がゆっくり1へ近づき、d=3d=3 が 0.34 付近で動かない対比が一層はっきりします。stochastic-processes-study/simulations/ に格子ウォークの可視化を置きます。

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