🎓 レベル:発展 | 重要度:B(モデルの拡張) 📎 前提:ポアソン過程
要点(BLUF)
- 非斉次ポアソン過程:強度 を時間で変える。区間 の事象数は 。
- 複合ポアソン過程:各到来に独立な「大きさ(マーク)」 を付け、合計 を見る。保険金総額や総取引量のモデル。
- 複合過程の平均と分散は 、(ワルドの等式の帰結)。
概念
現実の到来は一定率でも一律でもありません。昼にアクセスが集中するなら強度は時間で変わる(非斉次)。地震の各回でエネルギーが違うなら各点に大きさが要る(複合)。ポアソン過程の2方向の拡張です。どちらも独立増分は保ったまま、強度か跳び幅を一般化します。
数式による定式化
非斉次:強度関数 、累積強度 に対し
生成は棄却法(thinning):一様な強度 のポアソン点を打ち、各点を確率 で残す。
複合:強度 のポアソン過程 と独立同分布のマーク に対し
直観
- 非斉次:要するに「時計の進み方を場所ごとに変える」。累積強度 で時間を測り直せば、 を新しい時間とする斉次ポアソン過程に戻ります(時間変更)。だから平均は強度の積分そのもの。
- 複合:要するに「回数のランダムさ × 大きさのランダムさ」。分散が (2次モーメント)で決まるのがポイントで、跳び幅のばらつきと平均の二乗の両方が効きます。
具体例
複合ポアソン過程の平均・分散がワルドの公式に一致すること、非斉次過程の平均が強度の積分に一致することを確認します。
import numpy as np
from scipy.integrate import trapezoid
rng = np.random.default_rng(4)
# 複合ポアソン:マーク J ~ Normal(1.5, 0.5)
lam, T, n = 2.0, 10.0, 40000
mu_J, sig_J = 1.5, 0.5
N = rng.poisson(lam*T, size=n)
J = rng.normal(mu_J, sig_J, int(N.sum()))
idx = np.repeat(np.arange(n), N)
Y = np.bincount(idx, weights=J, minlength=n)
print(f"複合 E[Y]={Y.mean():.3f} (理論 lam*T*E[J]={lam*T*mu_J:.3f})")
print(f"複合 Var[Y]={Y.var():.3f} (理論 lam*T*E[J^2]={lam*T*(sig_J**2+mu_J**2):.3f})")
# 非斉次:強度 lam(t)=2+1.5 sin(t) を棄却法で生成
lam_t = lambda t: 2.0 + 1.5*np.sin(t)
T2, lam_max = 10.0, 3.5
def nh_count():
m = rng.poisson(lam_max*T2)
ts = rng.uniform(0, T2, m)
return (rng.random(m) < lam_t(ts)/lam_max).sum()
cnts = np.array([nh_count() for _ in range(20000)])
grid = np.linspace(0, T2, 2001)
print(f"非斉次 E[N(T)]={cnts.mean():.3f} (理論 ∫lam dt={trapezoid(lam_t(grid), grid):.3f})")
# 複合 E[Y]=29.988 (理論 lam*T*E[J]=30.000)
# 複合 Var[Y]=50.277 (理論 lam*T*E[J^2]=50.000)
# 非斉次 E[N(T)]=22.744 (理論 ∫lam dt=22.759)
複合過程の分散 50 は に一致(平均30だけでは決まらない点に注意)。非斉次過程の平均は強度の積分に一致します。
他過程との関係
- 複合ポアソン過程は独立増分を持つジャンプ過程で、ブラウン運動の定義と性質(連続な増分)と並ぶレヴィ過程の代表。連続成分とジャンプ成分を合わせると一般のレヴィ過程になります。
- 金融の保険数理・損失モデルは複合ポアソンの応用(→金融工学へ wikilink)。ここでは過程の構造(ワルドの等式)に集中します。
数式の直観的意味
は、全分散の法則を分解すると「回数の変動による分散 」と「跳び幅の変動による分散 」の和になり、合わせて となる、という構造を表します。回数と大きさ、2つのランダム源が独立に分散へ寄与するのです。
⚠️ よくある誤解
- 非斉次でも独立増分は保たれる。変わるのは「定常増分」だけ(区間の位置で分布が変わる)。だから時間変更で斉次に戻せます。
- 複合の分散は ではなく で決まる。マークの平均がゼロでも分散は正()です。
- 棄却法の は の上界。下回ると点を取りこぼします。
対応シミュレーション
棄却法(thinning)による非斉次ポアソンのパス生成はシミュレーション分野の定番です。stochastic-processes-study/simulations/ に強度関数を差し替え可能な生成器を置きます。
関連
- 前提:ポアソン過程
- 次に読む:点過程入門
- 発展:ブラウン運動の定義と性質(レヴィ過程の連続成分)、保険・損失モデル(→金融工学)