🎓 第6章 ベイズと構造的因果(章ハブ)
第6章 ベイズと構造的因果 目次
第1〜3章で「どんな仮定なら因果と言えるか(識別)」と「どう推定するか」を、潜在結果とバックドア調整で固めました。第6章は因果推論の2つの上部構造を扱います。ひとつはベイズ——効果を点でなく事後分布で受け取り、不確実性ごと意思決定へ流す流儀。もうひとつは Pearl の構造的因果モデル(SCM)——構造方程式・ 演算子・反事実・媒介という、潜在結果と双対をなすもう一つの言語です。どちらも「識別が先、推定は後」という原則は変わりません。事前分布も SCM も、未観測交絡を消してはくれないことを繰り返し確認します。
この章の流れ
- 推定の流儀を広げる → ベイズ因果推論(06-01)。効果を事後分布で得る。OLS点推定との対比。
- 介入を定義する → SCM と 演算子(06-02)。観測 と介入 の違い、do計算でバックドア調整を導く。
- 階梯を登る → 反事実と因果の階梯(06-03)。関連・介入・反事実の3段。個体レベルの反事実を abduction→action→prediction で計算。
- 効果を分解する → 媒介分析(06-04)。総効果=直接効果+間接効果。媒介を調整する過剰調整の罠。
各ノートでは、真の効果(真のATE・直接/間接効果・個体の反事実)を仕込んだ擬似データを作り、素朴な推定が外れ、正しく扱うと真値が戻ることを必ず数値で確認します(コードは PyMC 6.0.1 / ArviZ 1.2.0 で検証)。
トピック一覧
- ベイズ因果推論 — 処置効果を点でなく事後分布で得る。PyMCで真のATEを仕込んだ交絡データにベイズ回帰を当て、事後平均が真値・89%信用区間が真値を覆うことを実証。事前の役割・縮小・不確実性の伝播と、ベイズでも識別の仮定は一切変わらないことを整理。【発展・B】
- 構造的因果モデルとdo演算子 — SCM(構造方程式の集合)と介入 を定義。観測 と介入 の違いを明確化し、do計算の三規則からバックドア調整公式を導出。構造方程式で擬似データを生成し、do介入が真の因果効果を当て素朴な条件付き差はズレることを数値で。【発展・B】
- 反事実とPearlの因果の階梯 — 関連(見る)・介入(する)・反事実(想像する)の3段。反事実は個体レベルで、SCMの abduction→action→prediction で計算。1個体について「観測≠介入≠反事実」を数値で対比し、反事実が最上段である理由を示す。【発展・B】
- 媒介分析 — 総効果=直接効果+間接効果。自然直接効果NDE・自然間接効果NIEを反事実で定義し、線形モデルの係数の積で分解。媒介Mを素朴に調整すると間接効果が消え直接効果しか出ない過剰調整を、真値を仕込んだ擬似データで対比。【発展・B】
前提と次章への接続
- 前提(第1〜3章):潜在結果モデル(反事実の言語)/因果ダイアグラムとd分離(DAGと鎖・分岐・合流点)/バックドア基準と識別・識別の仮定(識別の前提)/回帰による調整とその限界(ベイズ回帰の土台となる g公式)。本章はこれらの上に「事後分布」と「SCM」という上部構造を載せます。
- 次章(第7章)への接続:本章の核心は「事前分布も SCM も識別を救わない」。未観測交絡が疑われるときの正攻法は、事前ではなく未観測交絡への感度分析。媒介で見た過剰調整は過剰調整とMバイアス、合流点を条件づける危険は衝突点バイアスと選択バイアスで一般化します。
- 土台(他サイト):ベイズ回帰と事後分布はベイズ線形回帰・事前・尤度・事後・周辺尤度(ベイズ)、縮小は収縮の数理(ベイズ)、構造方程式とパス解析は構造方程式モデル・パス解析(統計)。