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🎓 レベル:標準 | 重要度:A(必須)

📎 前提:リアルオプションの考え方 | 関連:二項モデルによる評価投資・設備判断の意思決定

要点(BLUF)

1. 3つの代表的オプション

リアルオプションは、いつ・どう柔軟性を発揮するかで分類されます。

他にも縮小・延長・切替(生産物の転換)などがありますが、評価の発想は共通——各シナリオで「オプションを行使する/しない」を比較し、有利な方を取る(決定木の決定ノードと同じ)。

2. 撤退・拡大オプションを評価する

ベース投資:コスト100、1年後に好調200(0.5)か不調40(0.5)。まず素のNPV、次に撤退・拡大オプションを足します。

import numpy as np

cost = 100
good, bad, p = 200, 40, 0.5

# ベースNPV(オプションなし、必ず最後まで継続)
npv_base = p*good + (1-p)*bad - cost
print(f"ベースNPV(オプションなし)= {npv_base:.1f}")

# 撤退オプション:不調なら資産を売却価値70で手放す(損失に床)
salvage = 70
npv_abandon = p*good + (1-p)*max(bad, salvage) - cost
print(f"撤退オプションあり = {npv_abandon:.1f}  -> 撤退の価値 = {npv_abandon - npv_base:.1f}")

# 拡大オプション:好調なら追加投資50で価値を2倍に(上方を伸ばす)
expand_cost = 50
npv_expand = p*max(good, 2*good - expand_cost) + (1-p)*bad - cost
print(f"拡大オプションあり = {npv_expand:.1f}  -> 拡大の価値 = {npv_expand - npv_base:.1f}")

出力:

ベースNPV(オプションなし)= 20.0
撤退オプションあり = 35.0  -> 撤退の価値 = 15.0
拡大オプションあり = 95.0  -> 拡大の価値 = 75.0

出力の意味:素のNPVは20。撤退オプションは、不調時に価値40の事業を売却価値70で手放せるので、不調の利得が40→70に底上げされ、価値が15増えます(下方に床を入れた効果)。拡大オプションは、好調時に50追加投資して価値を200→350(2×200502\times200-50)に伸ばせるので、価値が75も増える(上方を伸ばした効果)。同じ事業でも、埋まっているオプションを行使できるかで価値が大きく変わる——撤退は守りの、拡大は攻めの柔軟性です。

3. オプションの価値はどこから来るか

3つのオプションに共通する価値の源泉は、リアルオプションの考え方で見た非対称性です。各オプションがペイオフのどこを変えるかを見ると明確です。

いずれも max(,)\max(\cdot, \cdot) という形で、意思決定者が事後に有利な方を選べることが価値を生みます。max\max は凸関数なので、E[max]max[E]\mathbb{E}[\max] \ge \max[\mathbb{E}] により、ばらつき(不確実性)が大きいほど価値が増える。これが「不確実性が柔軟性の価値を高める」(リアルオプションの考え方)の正体で、撤退・拡大でも同じです。

数式の直観的意味:埋め込まれたオプションは「無料の保険・宝くじ」

撤退オプションは、悪いシナリオでの損失を売却価値で打ち切る——これはプット(損失に保険) です。拡大オプションは、良いシナリオで追加投資して利益を伸ばす——コール(上昇への宝くじ)。投資案件の真の価値は、

真の価値=静的NPV硬直的な土台+k埋め込まれたオプションの価値0\text{真の価値} = \underbrace{\text{静的NPV}}_{\text{硬直的な土台}} + \underbrace{\sum_k \text{埋め込まれたオプションの価値}}_{\ge 0}

と分解できます。オプションの価値は常に非負(行使しない自由があるから損はしない)なので、柔軟性を見落とすと必ず過小評価になります。経営判断では「このプロジェクトに撤退の余地はあるか」「成功したら拡大できる設計か」を問うことが、価値を作り込む作業になります。これらオプションを厳密に価格付けるには無裁定評価(二項モデルによる評価の二項モデルや金融工学のブラック–ショールズ)が要りますが、意思決定としての構造はこの max\max の足し算で尽きています。

⚠️ よくある誤解

対応シミュレーション

本文のコードで、売却価値や拡大の倍率・コストを変えると、各オプションの価値が変わります。不調・好調の差(ボラティリティ)を広げると、撤退・拡大の価値がともに増えることも確認できます。

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