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🎓 レベル:基礎 | 重要度:A(必須)

📎 前提:合理的意思決定のプロセスベイズ更新と意思決定 | 関連:プロスペクト理論

要点(BLUF)

1. ヒューリスティクスとは

Kahneman & Tversky は、人の判断がヒューリスティクス——複雑な確率・頻度の問いを、簡単な問いに置き換えて答える経験則——に依存することを示しました。これは欠陥ではなく、限定合理性合理的意思決定のプロセス)のもとでの適応です。たいていは速くて十分。ただし置き換えが不適切なとき、系統的なバイアスが生じます。

二重過程理論では、速く直感的なシステム1(ヒューリスティクスの担い手)と、遅く熟慮的なシステム2を分けます。バイアスの多くは、システム1の即答をシステム2が検算せずに通すときに起きます。

2. 代表性ヒューリスティックと基準率の無視

代表性は、「AがカテゴリーBにどれだけ典型的に見えるか」で P(BA)P(B\mid A) を判断する経験則。典型らしさと確率を混同するため、基準率(事前確率)を無視します。医療検査の例で、正しいベイズ計算(ベイズ更新と意思決定)と直感のズレを見ます。

有病率1%の病気。検査の感度99%(病気なら99%陽性)、偽陽性率5%(健康でも5%陽性)。「陽性だった人が本当に病気の確率」は?

import numpy as np

prevalence = 0.01       # 有病率(基準率)
sensitivity = 0.99      # P(陽性|病気)
false_pos = 0.05        # P(陽性|健康)

p_pos = prevalence*sensitivity + (1-prevalence)*false_pos    # 周辺確率
posterior = prevalence*sensitivity / p_pos                   # ベイズ

print(f"P(陽性) = {p_pos:.4f}")
print(f"P(病気|陽性) = {posterior:.4f}  (= {posterior*100:.1f}%)")
print(f"直感的な誤答(感度99%と混同): 約99%")
print(f"正しい答え: 約{posterior*100:.0f}%")

出力:

P(陽性) = 0.0594
P(病気|陽性) = 0.1667  (= 16.7%)
直感的な誤答(感度99%と混同): 約99%
正しい答え: 約17%

出力の意味:多くの人(医師でさえ)は「感度99%だから陽性なら99%病気」と直感しますが、正解は16.7%——大きく外します。理由は基準率の無視。病気はそもそも1%しかいないので、陽性者の多くは「健康なのに偽陽性(95%×5%)」の人。P(陽性病気)=99%P(陽性\mid病気)=99\%P(病気陽性)=17%P(病気\mid陽性)=17\% は別物(ベイズ更新と意思決定の条件付き確率の取り違え)なのに、代表性ヒューリスティックは両者を取り違えさせます。直感と規範の差が80ポイント以上——バイアスが系統的かつ大きいことの典型例です。

3. 利用可能性・係留、そして過信

他の主要なヒューリスティクスも、置き換えの構造は同じです。

これらは独立でなく絡み合います(利用可能な事例が代表性を強める等)。共通するのは、速い判断が、規範的な計算を系統的にショートカットすることです。

数式の直観的意味:バイアスは「規範からの系統的偏差」

バイアスが「ランダムなノイズ」でなく「系統的偏差」であることが、意思決定分析にとって決定的です。ノイズなら平均すれば消えますが、系統的偏差は何度繰り返しても同じ方向に外す。基準率の無視を式で見ると、人は

P^(病気陽性)P(陽性病気)(尤度で代用)\hat P(\text{病気}\mid\text{陽性}) \approx P(\text{陽性}\mid\text{病気}) \quad(\text{尤度で代用})

と、事前確率 P(病気)P(\text{病気}) の項を落としています。ベイズの正しい式 P(病気陽性)P(陽性病気)P(病気)P(病気\mid陽性) \propto P(陽性\mid病気)P(病気) から基準率を欠落させるのが代表性バイアスの正体。だから対策も明確で、「基準率を明示的に思い出させる」「頻度形式(1000人中何人)で提示する」と誤りが減ります。系統性ゆえに予測でき、設計で矯正できる——これが記述的研究をナッジと選択アーキテクチャの実践へ繋ぐ橋です。規範(ベイズ)は、バイアスを測る物差しとしても働きます。

⚠️ よくある誤解

対応シミュレーション

本文のコードで、有病率(基準率)を動かすと P(病気陽性)P(病気\mid陽性) が大きく変わります。基準率が低いほど、直感(感度に引きずられる)と正解の差が開く——基準率の無視がいつ深刻になるかを確認できます。

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