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📊 対象級:3級 ・ 2級 | 重要度:A(頻出)

条件付き確率・独立性・全確率の定理 ── 標本空間の縮小/独立の同値条件/分割と全確率

要点(BLUF)

本文

条件付き確率の定義

条件付き確率 P(BA)P(B\mid A) とは「事象 AA が起きたとわかっているときに、事象 BB が起きる確率」。定義は

P(BA)=P(AB)P(A)(P(A)>0)\boxed{\,P(B\mid A)=\frac{P(A\cap B)}{P(A)}\qquad(P(A)>0)\,}

要するに「AA が起きた世界に話を限定し、その中で BB(正確には ABA\cap B)が占める割合」。分母が全体 Ω\Omega ではなく AA になっているのがポイント(後述「標本空間の縮小」)。P(A)=0P(A)=0 のときは「起きない事象を条件にする」ことになり定義されない。

記号の向きに注意:P(BA)P(B\mid A) は「AA を条件として BB」。縦棒の右が条件(前提)、左が知りたい事象

乗法定理の再確認と樹形図の連鎖

条件付き確率の定義の両辺に P(A)P(A) を掛けると、前トピック 確率の基本(定義・加法定理・乗法定理)乗法定理が出る:

P(AB)=P(A)P(BA)=P(B)P(AB)P(A\cap B)=P(A)\,P(B\mid A)=P(B)\,P(A\mid B)

これを多段に伸ばすと乗法の連鎖(chain rule):

P(ABC)=P(A)P(BA)P(CAB)P(A\cap B\cap C)=P(A)\,P(B\mid A)\,P(C\mid A\cap B)

要するに「樹形図の枝を根からたどり、各枝の確率を順に掛けていく」。第1段で AA(確率 P(A)P(A))、AA が起きた枝の先で BB(確率 P(BA)P(B\mid A))、さらにその先で CC(確率 P(CAB)P(C\mid A\cap B))。1本の経路の確率=その経路上の枝の確率の積。

独立性

独立とは「一方の事象が起きても、他方の起こりやすさが変わらない」こと。定義式は

A,B が独立    P(AB)=P(A)P(B)\boxed{\,A,B\text{ が独立}\iff P(A\cap B)=P(A)\,P(B)\,}

P(A)>0, P(B)>0P(A)>0,\ P(B)>0 のとき、これは次と同値

P(BA)=P(B)P(AB)=P(A)P(B\mid A)=P(B)\quad\Longleftrightarrow\quad P(A\mid B)=P(A)

要するに「条件を付けても確率が変わらないP(BA)=P(B)P(B\mid A)=P(B))」が独立の意味。乗法定理 P(AB)=P(A)P(BA)P(A\cap B)=P(A)P(B\mid A)P(BA)=P(B)P(B\mid A)=P(B) なら、確かに P(AB)=P(A)P(B)P(A\cap B)=P(A)P(B) に化ける。

独立試行・反復試行(ベルヌーイ試行):各回の結果が互いに独立で、成功確率 pp が毎回一定の試行を nn 回繰り返すのがベルヌーイ試行列。独立だから各回の確率は単純に掛け算でき、「ちょうど kk 回成功」する確率は

P(ちょうど k 回成功)=nCkpk(1p)nk\boxed{\,P(\text{ちょうど }k\text{ 回成功})={}_nC_k\,p^{k}(1-p)^{n-k}\,}

ここで nCk{}_nC_k場合の数・順列・組合せ の二項係数)は「nn 回のうちどの kk 回が成功か」の場所の選び方。pk(1p)nkp^k(1-p)^{n-k} は1つの並び(成功 kk 個・失敗 nkn-k 個)の確率で、独立ゆえどの並びも同じ確率。これが Phase 3 の二項分布 ベルヌーイ分布・二項分布 そのもの。例:打率 0.30.3 の打者が4打席でちょうど2安打する確率は 4C2(0.3)2(0.7)2=60.090.49=0.2646{}_4C_2(0.3)^2(0.7)^2=6\cdot0.09\cdot0.49=0.2646

全確率の定理(法則)

標本空間の分割:事象の集まり {A1,A2,,Ak}\{A_1,A_2,\dots,A_k\}Ω\Omega分割であるとは、次の2条件を満たすこと。

ひとことで「漏れなくダブりなく」全体を分けた、ということ。このとき、任意の事象 BB について

P(B)=i=1kP(AiB)=i=1kP(Ai)P(BAi)\boxed{\,P(B)=\sum_{i=1}^{k}P(A_i\cap B)=\sum_{i=1}^{k}P(A_i)\,P(B\mid A_i)\,}

要するに「BB が起こりうる全ての経路(どの AiA_i を通って BB に至るか)の確率を足し合わせる」。樹形図でいえば「BB にたどり着く全ての枝の積を合計する」。直接 P(B)P(B) を求めにくいとき、原因 AiA_i で場合分けして足すのが定石。

樹形図で見ると一目瞭然

袋1(赤7・白3)と袋2(赤2・白8)から等確率で1袋選び、玉を1つ引くとき、P()P(\text{赤}) を求める。「赤が出る経路」は2本ある。

flowchart LR
  S["スタート"]
  S -->|"P=1/2"| F1["袋1<br/>赤7白3"]
  S -->|"P=1/2"| F2["袋2<br/>赤2白8"]
  F1 -->|"P=7/10"| A1["赤<br/>経路1"]
  F2 -->|"P=2/10"| A2["赤<br/>経路2"]
  A1 -->|"掛けて足す"| G["P赤 = 9/20"]
  A2 -->|"掛けて足す"| G

それぞれの経路の確率を掛けて、足す。

P()=12710経路1(袋1経由)+12210経路2(袋2経由)=720+220=920=0.45P(\text{赤})=\underbrace{\frac12\cdot\frac{7}{10}}_{\text{経路1(袋1経由)}}+\underbrace{\frac12\cdot\frac{2}{10}}_{\text{経路2(袋2経由)}}=\frac{7}{20}+\frac{2}{20}=\frac{9}{20}=0.45

枝を掛けて、経路を足す」。これが全確率の定理の正体。そしてこの P()P(\text{赤}) こそが、次トピックのベイズの定理 P(袋1)=P(袋1)P(袋1)P()P(\text{袋1}\mid\text{赤})=\dfrac{P(\text{袋1})P(\text{赤}\mid\text{袋1})}{P(\text{赤})}分母になる(ベイズの定理)。

具体例

モンティ・ホール問題(条件付き確率の名物例)

条件付き確率の威力(と直観の裏切られ方)がよくわかる超有名問題。

3つのドアがあり、1つが当たり(残り2つはハズレ)。あなたが1つ選んだあと、司会者は残り2つのうちハズレのドアを1つ開けて見せる。ここで「選んだドアのままにする? それとも残った1つに変更する?」と聞かれる。

直観だと「残り2枚なんだから、どっちも1/2でしょ?」と思うが、正解は「変更したほうが得(当たり率が2倍)」。3つの場合を全部書き出すとわかる。

最初に選んだドア司会者が開けるドア変更しないと変更すると
当たり(確率1/3)残りハズレのどちらか当たりハズレ
ハズレA(確率1/3)もう片方のハズレBハズレ当たり
ハズレB(確率1/3)もう片方のハズレAハズレ当たり

表を見ると、変更すると3回のうち2回当たり(2/3)、変更しないと3回のうち1回(1/3)。カラクリは「最初に外れを引いていれば(確率2/3)、司会者がもう片方の外れを開けてくれるので、残った1枚は必ず当たり」という点。つまり変更時の当たり率は「最初に外れる確率=2/3」にそのまま一致する。

これは「司会者がハズレを開けた」という情報(条件)が加わったことで、残りのドアの確率が更新された例。きっちりした確率の更新計算は次トピックのベイズの定理で行う。

試験での問われ方

数式の直観的意味

条件付き確率=標本空間の縮小(正規化)

定義 P(BA)=P(AB)P(A)P(B\mid A)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(A)}面積で見る。Ω\Omega を面積1の長方形、AABB をその中の領域とする。

確かめ算:縮んだ世界での全確率は P(ΩA)=P(AΩ)P(A)=P(A)P(A)=1P(\Omega\mid A)=\dfrac{P(A\cap\Omega)}{P(A)}=\dfrac{P(A)}{P(A)}=1。正規化が効いて合計1になっている。P(A)P(\cdot\mid A) 自体が(縮んだ世界 AA 上の)れっきとした確率で、コルモゴロフの3公理(確率の基本(定義・加法定理・乗法定理))をすべて満たす。

これは クロス集計表・行/列比率・連関 ── 同じ表でも「何で割るか」で結論が変わる行比率と全く同じ操作:クロス集計で「行 ii の中での列 jj の割合」=nijRi=P(ji)=\dfrac{n_{ij}}{R_i}=P(\text{列}j\mid\text{行}i) は、世界を行 ii に縮めて(分母を行和 RiR_i にして)列 jj の割合を測ること。条件付き確率の実データ版が行比率。

独立の同値な特徴づけ(3つの式は相互に導ける)

P(A)>0, P(B)>0P(A)>0,\ P(B)>0 とする。次の3つは同値:

(i) P(AB)=P(A)P(B)(ii) P(BA)=P(B)(iii) P(AB)=P(A)\text{(i)}\ P(A\cap B)=P(A)P(B)\quad\text{(ii)}\ P(B\mid A)=P(B)\quad\text{(iii)}\ P(A\mid B)=P(A)

(i)\Rightarrow(ii):条件付き確率の定義に(i)を代入。

P(BA)=P(AB)P(A)=P(A)P(B)P(A)=P(B).P(B\mid A)=\frac{P(A\cap B)}{P(A)}=\frac{P(A)P(B)}{P(A)}=P(B).

(ii)\Rightarrow(i):乗法定理 P(AB)=P(A)P(BA)P(A\cap B)=P(A)P(B\mid A) に(ii)を代入すれば P(AB)=P(A)P(B)P(A\cap B)=P(A)P(B)

(i)\Leftrightarrow(iii)A,BA,B の役割を入れ替えて同じ議論(P(AB)=P(AB)P(B)=P(A)P(B)P(B)=P(A)P(A\mid B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(B)}=\dfrac{P(A)P(B)}{P(B)}=P(A))。

要するに「AA を条件にしても BB の確率が変わらない((ii))」「BB を条件にしても AA の確率が変わらない((iii))」「同時確率が積に分解する((i))」はすべて同じことの言い換え。独立は対称AABB と独立なら BBAA と独立)。

全確率の定理の導出(分割→排反→公理3)

分割 {A1,,Ak}\{A_1,\dots,A_k\}(排反かつ iAi=Ω\bigcup_i A_i=\Omega)を用意する。事象 BB を、各 AiA_i を通る部分に切り分ける:

B=BΩ=B(iAi)=i(BAi).B=B\cap\Omega=B\cap\Big(\bigcup_i A_i\Big)=\bigcup_i (B\cap A_i).

要するに「BB は『A1A_1 経由の BB』『A2A_2 経由の BB』…の寄せ集め」。ここで {Ai}\{A_i\} が排反なので、{BAi}\{B\cap A_i\} も互いに排反(iji\neq j なら (BAi)(BAj)AiAj=(B\cap A_i)\cap(B\cap A_j)\subseteq A_i\cap A_j=\varnothing)。排反な事象の和の確率は**コルモゴロフの公理3(完全加法性)**で足し算にできる:

P(B)=P(i(BAi))=iP(BAi).P(B)=P\Big(\bigcup_i (B\cap A_i)\Big)=\sum_{i}P(B\cap A_i).

最後に各項に乗法定理 P(BAi)=P(Ai)P(BAi)P(B\cap A_i)=P(A_i)P(B\mid A_i) を使えば、

P(B)=iP(Ai)P(BAi).P(B)=\sum_{i}P(A_i)\,P(B\mid A_i).

これが樹形図の「枝の確率を掛けて(P(Ai)P(BAi)P(A_i)\cdot P(B\mid A_i))、全経路を足す(i\sum_i」の数式表現。排反性が「足してよい」根拠、網羅性が「経路を取りこぼさない」根拠で、分割の2条件が両方とも本質的に効いている。次トピック ベイズの定理 では、この P(B)P(B) がベイズの定理 P(AiB)=P(Ai)P(BAi)P(B)P(A_i\mid B)=\dfrac{P(A_i)P(B\mid A_i)}{P(B)}分母として再登場する。

ペア独立 ≠ 相互独立(3事象の反例)

相互独立(3事象)とは、2331=42^3-3-1=4 本の条件をすべて満たすこと:

P(AB)=P(A)P(B),P(AC)=P(A)P(C),P(BC)=P(B)P(C),P(A\cap B)=P(A)P(B),\quad P(A\cap C)=P(A)P(C),\quad P(B\cap C)=P(B)P(C), P(ABC)=P(A)P(B)P(C).P(A\cap B\cap C)=P(A)P(B)P(C).

最初の3本(どの2つも独立)がペアごと独立、4本目が3つまとめての独立。ペア独立は相互独立を意味しない

反例(coin2枚):公正なコインを2枚投げる。Ω={表表,表裏,裏表,裏裏}\Omega=\{\text{表表},\text{表裏},\text{裏表},\text{裏裏}\}(各 1/41/4)。

各確率は P(A)=P(B)=P(C)=12P(A)=P(B)=P(C)=\dfrac12。ペアを確認すると:

P(AB)=P({表表})=14=1212=P(A)P(B) P(A\cap B)=P(\{\text{表表}\})=\tfrac14=\tfrac12\cdot\tfrac12=P(A)P(B)\ \checkmark P(AC)=P({表表})=14=P(A)P(C) ,P(BC)=P({表表})=14=P(B)P(C) P(A\cap C)=P(\{\text{表表}\})=\tfrac14=P(A)P(C)\ \checkmark,\quad P(B\cap C)=P(\{\text{表表}\})=\tfrac14=P(B)P(C)\ \checkmark

どの2つも独立。ところが3つまとめると:

P(ABC)=P({表表})=14  121212=18=P(A)P(B)P(C).P(A\cap B\cap C)=P(\{\text{表表}\})=\tfrac14\ \neq\ \tfrac12\cdot\tfrac12\cdot\tfrac12=\tfrac18=P(A)P(B)P(C).

要するに「AABB が両方わかれば CC は完全に決まってしまう(表表なら必ず一致)」ので、A,BA,B を条件にすると CC の確率が 12\frac12 から 11 に変わる=3つまとめると独立でない。「2つずつ独立」を確認しただけで「3つ独立」と結論してはいけない(準1級の注意点)。

⚠️ 引っかけポイント・頻出論点・級ごとの差

よくある疑問

Q1. なぜモンティ・ホールは変更したほうが得なんですか?

カギは「司会者は必ずハズレのドアを開ける(知っていて選んでいる)」点です。あなたが最初に当たりを引く確率は1/3しかありません。逆に外れを引く確率は2/3で、このとき司会者がもう片方の外れを開けてくれるので、残った1枚は必ず当たりになります。つまり「最初に外れていれば、変更で当たる」。だから変更したときの当たり率は、最初に外れる確率2/3にそのまま一致します。「残り2枚だから1/2」と思うのは、司会者が情報を持って動いている点を見落とした誤りです。

Q2. 独立と排反は何が違うんですか?(再掲)

よく混同されます。排反は「同時に起こらない」(P(AB)=0P(A\cap B)=0、事象どうしの関係)。独立は「影響しない」(P(AB)=P(A)P(B)P(A\cap B)=P(A)P(B))。決定的なのは、両方の確率が正なら、排反な2事象は独立になれないこと。排反だと P(AB)=0P(A\cap B)=0 なのに、独立なら P(AB)=P(A)P(B)>0P(A\cap B)=P(A)P(B)>0 で矛盾するからです。「排反だから独立」「独立だから排反」はどちらも誤りです(確率の基本(定義・加法定理・乗法定理))。

Q3. 条件付き確率は、条件を付けると必ず小さくなるんですか?

いいえ。P(BA)P(B\mid A)P(B)P(B) より大きくも小さくも、等しくもなりえます。条件 AABB を起こりやすくすれば大きく、起こりにくくすれば小さく、無関係(独立)なら等しくなります。条件次第で増減どちらもありえます。

まとめ

対応するシミュレーション

モンティ・ホールは変更が得(2/3 vs 1/3)

全確率の定理が実測と一致

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