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📊 対象級:準1級 | 重要度:B(標準)

幾何分布・超幾何分布・負の二項分布

要点(BLUF)

二項分布から派生する3つの離散分布です。問われ方は「定義式を書けるか」「期待値・分散・母関数を導出できるか」「どの分布を使うべきか見分けられるか」の3点。

幾何(試行回数版): P(X=k)=(1p)k1p,k=1,2,負の二項(試行回数版): P(X=k)=(k1r1)pr(1p)kr,k=r,r+1,超幾何: P(X=k)=(Mk)(NMnk)(Nn)\boxed{ \begin{aligned} \text{幾何(試行回数版)}:\ & P(X=k)=(1-p)^{k-1}p,\quad k=1,2,\dots \\ \text{負の二項(試行回数版)}:\ & P(X=k)=\binom{k-1}{r-1}p^{r}(1-p)^{k-r},\quad k=r,r+1,\dots \\ \text{超幾何}:\ & P(X=k)=\frac{\binom{M}{k}\binom{N-M}{n-k}}{\binom{N}{n}} \end{aligned}}

1. 全体像:二項分布からの3つの派生

二項分布 Bin(n,p)\mathrm{Bin}(n,p) は「試行回数 nn を固定して、成功回数を数える」分布でした(ベルヌーイ分布・二項分布)。今回の3分布は、この「何を固定して何を数えるか」を入れ替えたり、独立性の前提を外したりして得られます。

graph TD
    Bern["ベルヌーイ試行(成功確率 p の独立試行)"]
    Binom["二項分布<br/>試行回数を固定し成功回数を数える"]
    Geom["幾何分布<br/>初成功までの試行回数を数える"]
    NB["負の二項分布<br/>r回成功までの試行回数を数える"]
    Hyper["超幾何分布<br/>非復元抽出での成功数"]
    Pois["ポアソン分布<br/>まれな事象の生起数"]

    Bern --> Binom
    Bern --> Geom
    Geom -->|r個の独立和| NB
    Binom -->|復元を非復元に| Hyper
    Binom -->|n大p小 np一定| Pois
    Hyper -->|N大 抽出が母集団に影響しない| Binom

整理すると次の対比になります。

分布固定するもの数えるもの試行の独立性
二項試行回数 nn成功回数独立(復元)
幾何成功回数 =1=1試行回数(待ち時間)独立(復元)
負の二項成功回数 =r=r試行回数(待ち時間)独立(復元)
超幾何抽出数 nn成功回数非独立(非復元)

要するに:幾何・負の二項は「成功回数を固定して試行回数(待ち時間)を確率変数にした」鏡像。超幾何は「二項の独立性を壊して非復元にした」もの。


2. 幾何分布(Geometric distribution)

2.1 定義(2つの流派に注意)

成功確率 pp のベルヌーイ試行を独立に繰り返すとき、初めて成功するまでを考えます。ここで流派が2つあり、混同が最大の落とし穴です。

流派A(試行回数版・support 1,2,1,2,\dots:初成功が出た試行番号 XX を確率変数とする。

P(X=k)=(1p)k1p,k=1,2,3,P(X=k)=(1-p)^{k-1}p,\qquad k=1,2,3,\dots

要するに:「k1k-1 回失敗してから kk 回目に成功」。失敗 k1k-1 回 + 成功1回。

流派B(失敗回数版・support 0,1,2,0,1,2,\dots:初成功までの失敗の回数 Y=X1Y=X-1 を確率変数とする。

P(Y=k)=(1p)kp,k=0,1,2,P(Y=k)=(1-p)^{k}p,\qquad k=0,1,2,\dots

要するに:両者は Y=X1Y=X-1 の関係。だから期待値は 11 だけずれる。問題文が「何回目で成功するか」なら流派A、「失敗は何回か」なら流派B

本ノートは特記なき限り**流派A(試行回数版)**を主に使います。

2.2 PMFが確率分布である確認

k=1(1p)k1p=pj=0(1p)j=p11(1p)=p1p=1\sum_{k=1}^{\infty}(1-p)^{k-1}p = p\sum_{j=0}^{\infty}(1-p)^{j}=p\cdot\frac{1}{1-(1-p)}=p\cdot\frac{1}{p}=1

要するに:等比級数の和 j0qj=11q\sum_{j\ge0}q^j=\frac{1}{1-q}q=1pq=1-p)でちょうど1になる。これが幾何級数(geometric series)=幾何分布の名の由来。

2.3 期待値の導出(省略しない)

q=1pq=1-p とおきます。

E[X]=k=1kqk1p=pk=1kqk1E[X]=\sum_{k=1}^{\infty}k\,q^{k-1}p = p\sum_{k=1}^{\infty}k\,q^{k-1}

ここで核心は級数 k=1kqk1\sum_{k=1}^{\infty}k\,q^{k-1} の評価です。等比級数を qq で項別微分するのが定石です。

k=0qk=11qddqk=0qk=k=1kqk1=ddq11q=1(1q)2\sum_{k=0}^{\infty}q^{k}=\frac{1}{1-q}\quad\Longrightarrow\quad \frac{d}{dq}\sum_{k=0}^{\infty}q^{k}=\sum_{k=1}^{\infty}k\,q^{k-1}=\frac{d}{dq}\frac{1}{1-q}=\frac{1}{(1-q)^2}

要するに:「qk\sum q^kqq で微分すると kqk1\sum k q^{k-1} が出る」。和の公式を1回微分するだけで kk 倍の級数が手に入る。これは離散分布の期待値導出で何度も使う武器。

1q=p1-q=p なので k=1kqk1=1p2\sum_{k=1}^{\infty}k\,q^{k-1}=\frac{1}{p^2}。したがって

E[X]=p1p2=1pE[X]=p\cdot\frac{1}{p^2}=\frac{1}{p}

要するに:成功確率が pp なら平均 1/p1/p 回目で成功する。p=0.2p=0.2 なら平均5回目。直観に一致。

2.4 分散の導出(省略しない)

E[X(X1)]E[X(X-1)] を経由します(E[X2]E[X^2] を直接出すより和が綺麗)。さらに qq で2回微分します。

k=0qk=11qd2dq211q=k=2k(k1)qk2=2(1q)3\sum_{k=0}^{\infty}q^{k}=\frac{1}{1-q}\quad\Longrightarrow\quad \frac{d^2}{dq^2}\frac{1}{1-q}=\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)q^{k-2}=\frac{2}{(1-q)^3}

E[X(X1)]=k=1k(k1)qk1p=pqk=2k(k1)qk2=pq2p3=2qp2E[X(X-1)]=\sum_{k=1}^{\infty}k(k-1)q^{k-1}p = pq\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)q^{k-2}=pq\cdot\frac{2}{p^3}=\frac{2q}{p^2}

要するに:2回微分で k(k1)k(k-1) 倍の級数が出る。階乗モーメント E[X(X1)]E[X(X-1)] を作るとこれと噛み合う。

あとは V[X]=E[X(X1)]+E[X](E[X])2V[X]=E[X(X-1)]+E[X]-(E[X])^2 を使います。

V[X]=2qp2+1p1p2=2q+p1p2=2(1p)+p1p2=1pp2V[X]=\frac{2q}{p^2}+\frac{1}{p}-\frac{1}{p^2}=\frac{2q+p-1}{p^2}=\frac{2(1-p)+p-1}{p^2}=\frac{1-p}{p^2}

要するに:V[X]=1pp2=qp2V[X]=\frac{1-p}{p^2}=\frac{q}{p^2}。流派B(失敗回数版)でも Y=X1Y=X-1 は定数シフトなので分散は同じ 1pp2\frac{1-p}{p^2}。期待値だけ 1pp\frac{1-p}{p} に変わる。

2.5 確率母関数・モーメント母関数

確率母関数 GX(s)=E[sX]G_X(s)=E[s^X]

GX(s)=k=1skqk1p=ps1qs(qs<1)G_X(s)=\sum_{k=1}^{\infty}s^{k}q^{k-1}p=\frac{ps}{1-qs}\quad(|qs|<1)

モーメント母関数は s=ets=e^{t} を代入して

MX(t)=E[etX]=pet1(1p)et(t<ln(1p))M_X(t)=E[e^{tX}]=\frac{pe^{t}}{1-(1-p)e^{t}}\quad\left(t<-\ln(1-p)\right)

要するに:母関数の形は等比級数そのもの。MX(t)M_X(t) を微分して t=0t=0 を入れれば E[X],E[X2]E[X],E[X^2] が取れる(検算用)。

2.6 無記憶性(幾何分布の特徴的性質)

幾何分布は離散分布で唯一無記憶性(memoryless property)を持ちます(流派B=失敗回数版で綺麗に成立)。

P(Ys+tYs)=P(Yt)P(Y\ge s+t\mid Y\ge s)=P(Y\ge t)

要するに:「すでに ss 回失敗した」という履歴は、その後あと何回失敗するかの分布を変えない。コインは過去を覚えていない。連続版の指数分布に対応する離散版の性質。準1級で問われ得る論点。


3. 負の二項分布(Negative binomial distribution)

3.1 定義(これも流派あり)

成功確率 pp のベルヌーイ試行を独立に繰り返し、rr 回成功するまでを考えます。幾何分布は r=1r=1 の特別な場合です。

流派A(試行回数版・support r,r+1,r,r+1,\dotsrr 回目の成功が出た試行番号 XX

P(X=k)=(k1r1)pr(1p)kr,k=r,r+1,P(X=k)=\binom{k-1}{r-1}p^{r}(1-p)^{k-r},\qquad k=r,r+1,\dots

要するに:最後の kk 回目は必ず成功(だから固定)。残り k1k-1 回のうち r1r-1 回が成功する並び方が (k1r1)\binom{k-1}{r-1} 通り。二項分布の (nk)\binom{n}{k} と違い「最後を成功に固定する」のがポイント。

流派B(失敗回数版・support 0,1,0,1,\dotsrr 回成功するまでの失敗回数 Y=XrY=X-r

P(Y=y)=(r+y1y)pr(1p)y,y=0,1,2,P(Y=y)=\binom{r+y-1}{y}p^{r}(1-p)^{y},\qquad y=0,1,2,\dots

要するに:Y=XrY=X-r(r+y1y)=(r+y1r1)\binom{r+y-1}{y}=\binom{r+y-1}{r-1}。後述の母関数・モーメント導出は流派Bの方が計算が綺麗なので、以下では両方を併記します。

3.2 幾何分布の独立和としての導出(最重要の視点)

rr 回成功するまでの試行回数 XX は、「初成功までの試行回数 X1X_1」+「次の成功までの試行回数 X2X_2」+…+「rr 番目の成功までの試行回数 XrX_r」と分解できます。各 XiX_i は独立に同一の**幾何分布(試行回数版)**に従います。

X=X1+X2++Xr,XiiidGeom(p)X=X_1+X_2+\cdots+X_r,\qquad X_i\stackrel{\text{iid}}{\sim}\mathrm{Geom}(p)

要するに:「成功するたびにカウンタをリセットして、また初成功まで待つ」を rr 回繰り返す。各待ち時間が独立な幾何分布。

この分解だけで期待値・分散が導出ゼロで出ます。

E[X]=i=1rE[Xi]=r1p=rpE[X]=\sum_{i=1}^{r}E[X_i]=r\cdot\frac{1}{p}=\frac{r}{p} V[X]=i=1rV[Xi]=r1pp2=r(1p)p2(独立なので分散も加法的)V[X]=\sum_{i=1}^{r}V[X_i]=r\cdot\frac{1-p}{p^2}=\frac{r(1-p)}{p^2}\quad(\text{独立なので分散も加法的})

要するに:独立な確率変数の和は期待値も分散も足し算でよい(期待値・分散の性質(線形性・和の分散・共分散))。幾何分布の結果を rr 倍するだけ。これが負の二項の最速導出。

流派B(失敗回数版)なら E[Y]=E[X]r=rpr=r(1p)pE[Y]=E[X]-r=\frac{r}{p}-r=\frac{r(1-p)}{p}、分散は同じ r(1p)p2\frac{r(1-p)}{p^2}

3.3 母関数による導出(独立和の別証明)

幾何分布のMGFは MXi(t)=pet1(1p)etM_{X_i}(t)=\frac{pe^t}{1-(1-p)e^t}。独立和のMGFは積になるので、

MX(t)=i=1rMXi(t)=(pet1(1p)et)rM_X(t)=\prod_{i=1}^{r}M_{X_i}(t)=\left(\frac{pe^{t}}{1-(1-p)e^{t}}\right)^{r}

流派B(失敗回数版)では MY(t)=(p1(1p)et)rM_Y(t)=\left(\frac{p}{1-(1-p)e^t}\right)^r、確率母関数は GY(s)=(p1(1p)s)rG_Y(s)=\left(\frac{p}{1-(1-p)s}\right)^r

要するに:「独立和のMGFは各MGFの積」という性質(確率変数の変換・モーメント母関数・積率)で、幾何分布のMGFを rr 乗するだけ。和の分解と完全に整合する。

直接導出する場合は一般化二項定理(負の二項展開)を使います。流派B の確率母関数で

GY(s)=y=0sy(r+y1y)pr(1p)y=pry=0(r+y1y)((1p)s)y=pr(1(1p)s)rG_Y(s)=\sum_{y=0}^{\infty}s^{y}\binom{r+y-1}{y}p^{r}(1-p)^{y}=p^{r}\sum_{y=0}^{\infty}\binom{r+y-1}{y}\bigl((1-p)s\bigr)^{y}=p^{r}\bigl(1-(1-p)s\bigr)^{-r}

ここで使った恒等式は y=0(r+y1y)xy=(1x)r\sum_{y=0}^{\infty}\binom{r+y-1}{y}x^{y}=(1-x)^{-r}x<1|x|<1)です。

要するに:(r+y1y)\binom{r+y-1}{y} は「負の二項係数」(ry)\binom{-r}{y} に符号を込めたもので、(1x)r(1-x)^{-r} のテイラー展開係数そのもの。この級数和が「分布名に negative が付く」理由。

3.4 二項分布との重要な違い:過分散

V[X]E[X]=r(1p)/p2r/p=1pp=1p1>0(0<p<1で常に正)\frac{V[X]}{E[X]}=\frac{r(1-p)/p^2}{r/p}=\frac{1-p}{p}=\frac{1}{p}-1>0\quad(\text{0<p<1で常に正})

二項分布は VE=1p<1\frac{V}{E}=1-p<1(分散 < 平均)でしたが、負の二項分布は p<12p<\tfrac12分散 > 平均になり得ます。これを**過分散(overdispersion)**と呼びます。

要するに:カウントデータで「分散が平均より大きい」とき、ポアソン回帰では合わず負の二項回帰を使う、という実データでの動機がここにある。準1級・1級で頻出の応用文脈。


4. 超幾何分布(Hypergeometric distribution)

4.1 定義

NN 個のうち成功(当たり)が MM 個ある母集団から、非復元(戻さずに) nn 個を抽出するとき、抽出した中の成功数 XX が従う分布です。

P(X=k)=(Mk)(NMnk)(Nn),max(0,n(NM))kmin(n,M)P(X=k)=\frac{\dbinom{M}{k}\dbinom{N-M}{n-k}}{\dbinom{N}{n}},\qquad \max(0,\,n-(N-M))\le k\le \min(n,M)

要するに:「NN 個から nn 個選ぶ全 (Nn)\binom{N}{n} 通りのうち、成功 MM 個から kk 個・失敗 NMN-M 個から nkn-k 個選ぶ組合せの割合」。組合せの数え上げそのもの。

4.2 二項分布との決定的な違い:非復元

二項分布は復元抽出(毎回母集団が元に戻る=各試行の成功確率が一定で独立)。超幾何分布は非復元抽出(1個取るたびに母集団の構成が変わる=試行が独立でない)。

flowchart TD
    Q["袋から玉を取り出す"] --> R{"取った玉を<br/>戻すか?"}
    R -->|戻す: 復元| Bin["各回の成功確率 p=M/N 一定<br/>独立 → 二項分布 Bin(n, M/N)"]
    R -->|戻さない: 非復元| Hyp["母集団構成が変化<br/>非独立 → 超幾何分布"]

要するに:問題文に「戻さずに」「同時に nn 個取り出す」とあれば超幾何、「毎回戻す」「独立に試行」なら二項。これが使い分けの一発判定。

4.3 期待値の導出(省略しない)

p=M/Np=M/N とおきます。組合せ恒等式 k(Mk)=M(M1k1)k\binom{M}{k}=M\binom{M-1}{k-1} を使うのが鍵です。

E[X]=kk(Mk)(NMnk)(Nn)=1(Nn)kM(M1k1)(NMnk)E[X]=\sum_{k}k\,\frac{\binom{M}{k}\binom{N-M}{n-k}}{\binom{N}{n}} =\frac{1}{\binom{N}{n}}\sum_{k}M\binom{M-1}{k-1}\binom{N-M}{n-k}

ヴァンデルモンドの恒等式 k(M1k1)(NMnk)=(N1n1)\sum_{k}\binom{M-1}{k-1}\binom{N-M}{n-k}=\binom{N-1}{n-1} を適用し、(Nn)=Nn(N1n1)\binom{N}{n}=\frac{N}{n}\binom{N-1}{n-1} を使うと、

E[X]=M(N1n1)(Nn)=M(N1n1)Nn(N1n1)=nMN=npE[X]=\frac{M\binom{N-1}{n-1}}{\binom{N}{n}}=\frac{M\binom{N-1}{n-1}}{\frac{N}{n}\binom{N-1}{n-1}}=n\frac{M}{N}=np

要するに:期待値は二項分布とまったく同じ npnpp=M/Np=M/N)。平均的には復元でも非復元でも当たりの割合は変わらない。差が出るのは分散の方。

4.4 分散の導出(有限母集団修正)

E[X(X1)]E[X(X-1)]k(k1)(Mk)=M(M1)(M2k2)k(k-1)\binom{M}{k}=M(M-1)\binom{M-2}{k-2} とヴァンデルモンドで処理すると、

E[X(X1)]=n(n1)M(M1)N(N1)E[X(X-1)]=\frac{n(n-1)M(M-1)}{N(N-1)}

V[X]=E[X(X1)]+E[X](E[X])2V[X]=E[X(X-1)]+E[X]-(E[X])^2 に代入して整理すると(途中式は煩雑なので結果を示す)、

V[X]=nMNNMNNnN1=np(1p)NnN1V[X]=n\frac{M}{N}\cdot\frac{N-M}{N}\cdot\frac{N-n}{N-1}=np(1-p)\cdot\frac{N-n}{N-1}

要するに:超幾何の分散 = 二項の分散 np(1p)np(1-p) × 有限母集団修正係数 NnN1\frac{N-n}{N-1}。係数は常に 1\le 1 なので、非復元の方が二項より分散が小さい(取れば取るほど不確実性が減る)。

4.5 有限母集団修正係数の意味

NnN1=1n/N11/N\frac{N-n}{N-1}=\frac{1-n/N}{1-1/N}

要するに:母集団が十分大きければ「1個抜いても割合はほぼ不変」なので非復元≒復元になり、超幾何は二項で近似できる。目安は n/N<0.05n/N<0.05 程度なら二項近似してよい。


5. 具体例

例1(幾何):当たる確率 p=1/6p=1/6 のくじを当たるまで引く。平均何回目で当たるか? E[X]=1/p=6E[X]=1/p=6 回目。分散 V[X]=11/6(1/6)2=5/61/36=30V[X]=\frac{1-1/6}{(1/6)^2}=\frac{5/6}{1/36}=30

例2(負の二項・流派A):同じくじを3回当てるまで引く。試行回数の期待値は E[X]=r/p=3×6=18E[X]=r/p=3\times6=18 回。分散 V[X]=r(1p)p2=3×30=90V[X]=\frac{r(1-p)}{p^2}=3\times30=90

例3(超幾何):50枚中当たり10枚のくじから戻さず5枚引く。当たり数の期待値 E[X]=nMN=5×1050=1E[X]=n\frac{M}{N}=5\times\frac{10}{50}=1 枚。分散 V[X]=np(1p)NnN1=50.20.84549=0.8×45490.735V[X]=np(1-p)\frac{N-n}{N-1}=5\cdot0.2\cdot0.8\cdot\frac{45}{49}=0.8\times\frac{45}{49}\approx0.735。同条件の二項なら分散 0.80.8 なので、非復元の方が小さい。


6. 準1級での問われ方

要最新確認:出題範囲表は改訂され得るため、最新の公式範囲表で確認してください。

準1級では概ね次のレベルが問われます(過去の傾向ベース)。

分布PMFE[X]E[X]V[X]V[X]MGF
幾何(試行回数版)(1p)k1p(1-p)^{k-1}p1p\dfrac{1}{p}1pp2\dfrac{1-p}{p^2}pet1(1p)et\dfrac{pe^t}{1-(1-p)e^t}
負の二項(試行回数版)(k1r1)pr(1p)kr\binom{k-1}{r-1}p^r(1-p)^{k-r}rp\dfrac{r}{p}r(1p)p2\dfrac{r(1-p)}{p^2}(pet1(1p)et)r\left(\dfrac{pe^t}{1-(1-p)e^t}\right)^r
超幾何(Mk)(NMnk)(Nn)\dfrac{\binom{M}{k}\binom{N-M}{n-k}}{\binom{N}{n}}nMNn\dfrac{M}{N}np(1p)NnN1np(1-p)\dfrac{N-n}{N-1}(超幾何関数で複雑・問われにくい)

⚠️ 引っかけポイント・頻出論点


よくある疑問

Q1. 幾何分布の期待値は 1p\frac1p ですか 1pp\frac{1-p}{p} ですか? A. どちらも正解で、定義の流派が違うだけです。「初成功までの試行回数」を数える流派Aなら E[X]=1pE[X]=\frac1p。「初成功までの失敗回数」を数える流派Bなら E[Y]=1ppE[Y]=\frac{1-p}{p}。両者は Y=X1Y=X-1 の関係なので期待値が1ずれます。試験では問題文が「何回目で成功したか」を聞いていれば 1p\frac1p、「何回失敗したか」なら 1pp\frac{1-p}{p}。分散はどちらも 1pp2\frac{1-p}{p^2} で同一です(定数だけずらしても分散は不変)。

Q2. 負の二項分布の二項係数はなぜ (k1r1)\binom{k-1}{r-1} なのですか?(kr)\binom{k}{r} ではダメ? A. ダメです。rr 回目の成功が kk 回目の試行で起きるには、kk 回目は必ず成功でなければなりません(最後の成功で打ち切るから)。だから kk 回目は固定され、自由に並べられるのは残り k1k-1 回の中の r1r-1 個の成功です。これが (k1r1)\binom{k-1}{r-1}(kr)\binom{k}{r} にすると「最後が失敗で終わる並び」まで数えてしまい、定義に合いません。

Q3. 超幾何分布と二項分布、どちらを使うか迷います。見分け方は? A. 抽出を戻すかどうかの一点です。戻す(復元抽出)なら毎回の成功確率が p=M/Np=M/N で一定・独立なので二項分布。戻さない(非復元抽出)なら1個取るたびに母集団が変わり試行が独立でないので超幾何分布。「同時に nn 個取り出す」も非復元なので超幾何です。なお母集団 NN が抽出数 nn に比べて巨大(目安 n/N<0.05n/N<0.05)なら、戻さなくても割合がほぼ不変なので二項で近似してかまいません。

Q4. 超幾何分布の期待値が二項と同じ npnp なのに、分散だけ違うのはなぜ? A. 「平均的に取れる当たりの割合」は復元でも非復元でも変わらないからです(各位置が当たりである周辺確率はどちらも M/NM/N)。一方で非復元だと「1個取るごとに残りの不確実性が減る」ため、結果のばらつきが抑えられます。これが有限母集団修正 NnN11\frac{N-n}{N-1}\le1 として効き、超幾何の分散を二項より小さくします。極端な例として n=Nn=N(全部取る)なら当たり数は必ず MM で確定し、分散はゼロ(係数も NNN1=0\frac{N-N}{N-1}=0)になります。

Q5. 「過分散」とは何ですか?なぜ負の二項分布が出てくるのですか? A. カウントデータで分散が平均より大きい状態を過分散といいます。ポアソン分布は E=V=λE=V=\lambda(平均=分散)を仮定しますが(ポアソン分布)、実データはしばしばこの仮定を破り分散が平均を上回ります。負の二項分布は V[X]=r(1p)p2V[X]=\frac{r(1-p)}{p^2}VE=1p>1\frac{V}{E}=\frac1p>1p<1p<1)となり過分散を表現できます。実際、負の二項分布は「平均がガンマ分布に従って揺らぐポアソン分布(ポアソン・ガンマ混合)」とも導けるため、過分散のカウントデータのモデル(負の二項回帰)として準1級・1級の応用文脈でよく登場します。


まとめ


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