🎓 レベル:基礎 | 重要度:A(必須) 📎 土台:重回帰分析(統計・回帰)・内生性とは(バイアスの源の地図)
要点(BLUF)
- パネルデータ = 同じ個体 を複数時点 で観測したデータ(個体×時間)。クロスセクション(横断)と時系列(縦断)を合わせた構造。
- 最大の強みは、観測できない個体固有の交絡 (能力・経営文化・地理)を、個体内の差で消せること。クロスセクションでは不可能な内生性対策ができます。
- 基本の3モデル:交絡を無視するプールOLS、 を差で消す固定効果、 を確率変数とみなす変量効果(固定効果と変量効果)。
1. パネルの構造と種類
データは ( 個体、 時点)。
- バランスド/アンバランスド:全個体が全時点で観測されるか(欠測の有無)。
- ロング( 大)/ショート( 大・ 小):マクロのパネル(国×年)はロング寄り、ミクロ(家計×数年)はショート寄り。実証ミクロは 大・ 小が典型で、推定の性質もそれに依存します。
2. なぜパネルは内生性に強いか
モデルを と書きます。 は時間で変わらない個体固有効果(観測できない能力など)。クロスセクション(1時点)では が誤差に紛れ、 と相関すれば欠落変数バイアス(内生性とは(バイアスの源の地図))。
パネルなら、各個体の時間平均との差をとる(within変換)と が消えます:
が左右から消えるので、 がどれだけ と相関していてもバイアスが生じません。「個体を自分自身と比べる」ことで交絡を封じる——これがパネルの核心です。
flowchart LR
A["クロスセクション(1時点)"] --> B["個体固有効果 α_i が誤差に紛れる → 偏る"]
C["パネル(個体×時間)"] --> D["within変換で α_i を消す → 時間不変の交絡に頑健"]
3. 限界:消せるのは「時間不変」だけ
固定効果が消せるのは時間で変わらない交絡だけです。時間とともに変わる交絡(景気で能力評価が変わる等)や、 と の同時点での相関は残ります。また within 変換は時間内で変動しない変数(性別・出身地)の効果を推定できません(差をとると消えるため)。これらは操作変数(第3章)や動学パネル(動学パネルとGMM)で補います。
⚠️ よくある誤解・落とし穴
- 「パネルなら因果が出る」ではない:消せるのは時間不変の交絡だけ。時変交絡・逆因果は残ります。
- 「プールOLSで十分」ではない: を無視すると、個体間の差を交絡ごと係数に混ぜてしまう。固定効果か変量効果を検討(固定効果と変量効果)。
- 「 が短いと使えない」ではない: 大・ 小(2時点でも)でも固定効果は機能します。むしろミクロ実証の主戦場。
- 標準誤差は個体クラスタが標準:同一個体内で誤差が相関するため、クラスタ頑健標準誤差(不均一分散と頑健標準誤差)を使う。
関連ノート
- 固定効果と変量効果(within変換とHausman検定)
- 差分の差分(DID)(パネルでの政策効果)
- 動学パネルとGMM(ラグ従属変数の罠)
- 内生性とは(バイアスの源の地図)(欠落変数バイアス)
- パネルデータ 目次
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