🎓 レベル:標準 | 重要度:A(必須) 📎 土台:重回帰分析(統計)・仮説検定の枠組み(帰無仮説・対立仮説・p値・有意水準)(統計・検定)・パネルデータとは
要点(BLUF)
- 固定効果(FE):個体固有効果 を within変換(個体内の差)で消す。 が と相関していてもOK——内生性に頑健だが、時間不変変数の効果は推定できない。
- 変量効果(RE): を「 と無相関な確率変数」とみなしGLSで推定。仮定が正しければFEより効率的で時間不変変数も推定できるが、相関があれば偏る。
- 選択の基準は**「 は と相関するか」。実証ミクロでは相関を疑うのが普通なのでFEが既定。形式的にはHausman検定**で判定します。
1. 固定効果:相関を許す代わりに情報を捨てる
固定効果は各個体の時間平均との差をとり を消します(パネルデータとは)。利点は** と の相関を一切仮定しないこと——能力が教育選択と相関していても平気。代償は、(1) 時間不変変数(性別・出身地)の効果が推定できない(差で消える)、(2) 個体内の変動だけ使うので情報を捨て**、推定精度が落ちることがあります。
実装は within 変換のほか、個体ダミーを全部入れる LSDV(最小二乗ダミー変数) でも同値。2時点なら一階差分(FD)とも一致します。
2. 変量効果:効率を取りに行く(強い仮定つき)
変量効果は を誤差の一部とみなし、 を仮定してGLSで推定します。仮定が正しければ、個体間・個体内の両変動を使うのでFEより効率的で、時間不変変数の効果も推定できる。問題は、その仮定( が説明変数と無相関)が経済データでは破れやすいこと。破れればRE係数は偏ります。
flowchart TB
Q{"個体固有効果 α_i は x と相関する?"}
Q -->|"相関あり(実証ミクロの常識)"| FE["固定効果: 偏らない・時間不変変数は不可"]
Q -->|"相関なし(強い仮定)"| RE["変量効果: 効率的・時間不変変数もOK"]
FE --> H["Hausman検定で形式的に判定"]
RE --> H
3. Hausman検定:FEとREのどちらか
Hausman検定は「FEとREの係数が体系的に違うか」を見ます。帰無仮説は「 と は無相関(RE仮定が成立)」。
- 棄却(係数が大きく食い違う)→ RE仮定が崩れている → FEを使う。
- 棄却されない → REを使ってよい(効率を取る)。
ただし検定は万能ではなく、検出力やサンプル次第で結論が揺れます。多くの応用研究は「交絡が時間不変なら相関ありが自然」としてFEを既定にし、REは補助的に報告します。近年は相関変量効果(Mundlak)で両者を橋渡しする整理も一般的です。
⚠️ よくある誤解・落とし穴
- 「変量効果の方が高機能だから優先」ではない:効率は高いが相関があれば偏る。経済データは相関を疑うのが安全で、FE既定が普通。
- 「FEは時間不変変数の効果を出せる」ではない:差で消えるので推定不能。性別・人種の効果を見たいならREや別設計が要る。
- 「Hausmanで棄却=REは常にダメ」ではない:小標本では検出力不足で結論が不安定。検定結果だけでなく交絡の性質で判断。
- 標準誤差は個体クラスタ:FE/REとも誤差の個体内相関のためクラスタ頑健標準誤差(不均一分散と頑健標準誤差)を併用。
関連ノート
- パネルデータとは(within変換の基礎)
- 差分の差分(DID)(固定効果の応用=政策評価)
- 動学パネルとGMM(FEが内生になる動学の罠)
- 仮説検定の枠組み(帰無仮説・対立仮説・p値・有意水準)(統計・Hausman検定の土台)
- パネルデータ 目次
- 計量経済学 全体目次