🎓 第8章:制約理論とリーン
第8章 制約理論とリーン
第1〜7章で、フロー・在庫・能力・計画・サプライチェーン・品質を数理で設計してきました。本章はそれらを束ねる改善の哲学——制約理論(TOC)とリーン生産を扱います。新しい道具はほとんど登場しません。代わりに、第1章のボトルネック(ボトルネックとキャパシティ)、第4章の待ち行列(待ち行列の基礎とリトルの法則・M/M/1 待ち行列モデル)、第5章のシャドープライス(線形計画による生産計画)、第1章のリトルの法則(プロセス分析とリトルの法則)を総動員して、3つのトピックを一本の論理で貫きます——「ばらつき×稼働率が待ちと在庫を生む。だから制約に集中し、ばらつきを下げる」。
まず 08-01 で制約理論(TOC)。システムの産出は制約(ボトルネック)が律速するので、改善は制約に集中する。物差しはスループット会計(=売上−資材費・=在庫・=業務費用、利益)で、製品ミックスは単位利益でなく「制約1分あたりスループット」で決めます。「単位利益順」に作ると総スループット4800円で純利益−200円の赤字、「制約1分あたりT順」に作ると8100円で黒字3100円になり、後者が scipy.optimize.linprog の LP 最適・シャドープライス2.0円/分(限界製品のT/分)と一致する——TOC の優先順位は 線形計画による生産計画 の制約の限界価値そのものだと示します。集中の5ステップとドラム-バッファ-ロープを、2段ラインの離散事象シミュで裏取り(非制約を強化してもスループットは1.0018→1.0024とほぼ不変・制約強化で1.136へ上昇、制約手前のバッファがスターベーションを防いで産出を72.6%→100%へ回復)。
次に 08-02 でリーン生産・JIT・かんばん。JIT=**プル生産(後工程引き取り)**で、モノは下流へ・かんばん(許可信号)は上流へ戻る。必要かんばん枚数 ・WIP を プロセス分析とリトルの法則 の に接続し、リードタイム短縮でかんばんが29→4枚・WIPが290→40個に減ること、WIP 上限がフロータイム上限になることを示します。プッシュ(計画先行)とプル(CONWIP)を400期シミュし、プッシュは WIP 17.4個に膨れ作りすぎ197個を生むのに、プルは WIP 3.8個で有界・産出が需要に一致・フロータイムが1.59期で頭打ちになることを matplotlib で実証。タクトタイム・平準化・7つのムダも扱います。
最後に 08-03 で、TOC もリーンも効く根本理由をキングマンの式(ファクトリーフィジクスの VUT 分解) で説明します。ばらつき×稼働率×時間の積で、 で M/M/1(M/M/1 待ち行列モデル)に厳密一致。ばらつきは在庫・能力・時間のどれかで必ず払う(バッファリング法則)。ばらつき低減が - 曲線を下へずらし、同じ待ちでより高い稼働率(SCV で0.818→SCV で0.973)を許すことを、ガンマ分布の SCV を指定した G/G/1 Lindley 再帰シミュと matplotlib で裏取りします。リーンの本質はコスト削減でなく の低減だと締めます。
トピック一覧
- 制約理論TOCとスループット — 標準(TOC=制約が律速・スループット会計 〔利益・原価計算の間接費配賦と区別〕・集中の5ステップ〔特定→徹底活用→従属→強化→繰り返す〕・ドラム-バッファ-ロープ/製品ミックスは制約1分あたりT で順位付け=単位利益順4800円〔赤字−200〕vs 制約1分T順8100円〔黒字3100〕で LP最適・シャドープライス2.0と一致〔05-01の双対価格〕・受注可否もシャドープライスがハードルレート/2段ラインDES:非制約強化1.0018→1.0024で不変・制約強化1.0→1.15で1.136・バッファK=0→30でスターベーション解消し産出72.6%→100%・局所効率≠全体スループット)
- リーン生産・JIT・かんばん — 標準(リーン=TPS・JIT=プル〔後工程引き取り・かんばんは上流へ・モノは下流へ〕・かんばん枚数 ・WIP・リトル でWIP上限=フロータイム上限 /リードタイム4→0.5時でかんばん29→4枚・WIP290→40個・タクトタイム・平準化〔heijunka〕・一個流し・7つのムダ〔作りすぎが最悪〕/プッシュ vs プル400期シミュ:プッシュWIP17.4・作りすぎ197個 vs プルWIP3.8・需要一致3773個・フロータイム上限15/9.43=1.59期・JITは低ばらつき前提・かんばん≠在庫ゼロ・タクト≠サイクル)
- ばらつきと改善の数理 — 応用(キングマンの式 =VUT分解〔ばらつき×稼働率×時間〕・SCV ・ で M/M/1に厳密一致〔04-02〕・ポアソン到着でM/G/1も厳密・一般G/G/1は重交通で漸近厳密な近似/バッファリング法則=ばらつきは在庫・能力・時間でしか吸収できない〔03-02の安全在庫はその在庫払い〕/ガンマSCV指定のLindley再帰G/G/1シミュで M/M/1が8.98≈9・(0.5,0.5)4.30/(2,2)18.56と数%一致/ばらつき低減で同じWq=9に許される稼働率がSCV2→0.818・1→0.900・0.25→0.973・高稼働が安全なのは低ばらつき時だけ・リーンの本質はばらつき低減)
関連章
- 第1章 オペレーションズの枠組み(ボトルネックとキャパシティ の制約=最小キャパシティ・ボトルネックは移動する、プロセス分析とリトルの法則 の 。TOC とかんばん WIP 上限の物理的・恒等式的な土台)
- 第4章 待ち行列理論(待ち行列の基礎とリトルの法則・M/M/1 待ち行列モデル の 爆発と 。08-03 のキングマンの式は M/M/1 をばらつき一般へ拡張したもの。本章は「なぜ高稼働×高ばらつきが危険か」の答え)
- 第5章 生産計画とスケジューリング(線形計画による生産計画 のシャドープライス=制約の限界価値。08-01 の「制約1分あたりT」は1制約LPの双対価格そのもの)
- 第3章 在庫管理(安全在庫と発注点 の =ばらつきを在庫で払う形。バッファリング法則の在庫バッファ。DBR のバッファや 安全係数の在庫版)
- 第7章 品質管理(源流で品質を作り込む=検査でなく工程で。1-10-100 の「1」を実装するのがリーンの自働化・ポカヨケ。不良=7つのムダの1つ)
- TOC・JIT・かんばん・5S の運営管理の概論は 中小企業診断士テキスト も参照