🎓 レベル:標準 | 重要度:B(推奨) 📎 土台:ランダムウォークと単位根(時系列・単位根)・仮説検定の枠組み(帰無仮説・対立仮説・p値・有意水準)(統計・検定)
要点(BLUF)
- ADF(拡張ディッキー–フラー)検定 = 系列が単位根(非定常)を持つかを判定する標準的な検定。見せかけの回帰(単位根と見せかけの回帰)を避けるための前処理です。
- 向きに注意:帰無仮説は「単位根あり(非定常)」、対立仮説が「定常」。だから棄却できて初めて定常といえます。棄却できない=非定常とは限らない(検出力が低い)。
- 実務は、ADF(帰無=単位根)とKPSS(帰無=定常)を併用し、定数・トレンド項の指定を変えて頑健性を見ます。
1. ADF検定の仕組み
ランダムウォーク で なら単位根(非定常)。これを差分形に書き換え、
として (==単位根)を検定します。ラグ項 は誤差の自己相関を吸収するための「拡張(Augmented)」部分。統計量は の値ですが、通常の分布ではなくディッキー–フラー分布(左に偏った臨界値)を使うのがポイントです。
2. 帰無の向きと検出力の罠
flowchart LR
A["ADF検定: 帰無 = 単位根あり(非定常)"] --> B{"棄却できた?"}
B -->|"Yes"| C["定常 I(0) と判断"]
B -->|"No"| D["非定常を否定できないだけ(断定はできない)"]
D --> E["KPSS(帰無=定常)も併用して確認"]
ADFは検出力が低いことで悪名高い検定です。真は定常でもが1に近い(持続的)と、帰無を棄却できず「非定常」と誤りがち。だから「棄却できなかった=単位根がある」と即断してはいけません。帰無を逆にしたKPSS検定(帰無=定常)を併用し、
- ADF棄却 & KPSS非棄却 → 定常で一致(信頼できる)
- ADF非棄却 & KPSS棄却 → 非定常で一致
- 両方曖昧 → 結論保留、差分の階数を慎重に
と読むのが堅実です。
3. 定数項・トレンド項の指定
ADFには3つの型があり、系列の見た目で選びます:(1) ドリフトもトレンドも無い、(2) 定数項あり(平均が非ゼロの定常を許す)、(3) 定数+トレンドあり(確定トレンドのまわりの定常=トレンド定常を許す)。指定を誤ると結論が変わります。経済の水準系列は (3) か (2) を基本に、複数の指定で頑健性を確認します。差分系列(成長率)は通常 (2) で十分定常になります。
⚠️ よくある誤解・落とし穴
- 「ADFで棄却できない=単位根がある」ではない:検出力が低いだけかもしれない。KPSSと併用。
- 「臨界値は通常の表でよい」ではない:ディッキー–フラー分布の専用臨界値を使う。statsmodelsの
adfullerは値を正しく返します。 - トレンド定常と差分定常の混同:確定トレンドのまわりで定常(トレンド定常)なら差分でなくトレンド除去。確率トレンド(単位根)は差分が必要。両者は別物。
- 「単位根検定だけで共和分も分かる」ではない:各系列がと分かっても、長期関係(共和分)の有無は別の検定(共和分とVECM)で確認。
関連ノート
- 単位根と見せかけの回帰(なぜ単位根検定が必要か)
- 共和分とVECM(系列の長期均衡)
- ランダムウォークと単位根(時系列・単位根の基礎)
- 仮説検定の枠組み(帰無仮説・対立仮説・p値・有意水準)(統計・仮説検定の土台)
- 時系列計量 目次
- 計量経済学 全体目次